「さあ、はりえさん。今日は社会福祉法人の同族経営についてですよ!」
「・・・」
「あれ?もしもし~?今日もやる気しないですか?」
「ん。そんなのわかんない話だよ。勝手にやってればいいだろうさ。」
「そんな、それを言ったら元も子もないですよ~(涙)」
「だいたい、うちの店だって下の娘に継がそうと思っていたことあるんだよ。もし継いでたらうちだって同族経営だったんだろ?」
「小さな会社だったら当たり前のことだろうさ。」
「そうはいっても、社会福祉法人ですよ?一応、準公共的なものであり公益的な組織でもいいんですか?」
「それと比べるなら、政治家も世襲制ってやつなんだろ?みんなそうじゃないか。」
「じゃあ、はりえさんから見て、同族経営ってどんなイメージですか?」
「身内だから楽だろうなーと思うよ。気を使わないでいいというか。」
「同族経営はみんなが言うから悪いことなんだろうね?家族で言い合える分、決まり事(ルール)などはなし崩しになり、なあなあに緩くなるんじゃないの?それでグダグダになるんだろうさ。福祉なんてお堅い仕事ならそういわれてしかたがないんじゃないのかい?」
「なあなあで、グダグダなんですか?(笑)」
「いいこと、わるいこと(注:メリット・デメリットと言いたいようです)もピンとこないんだよね。はっきりしないというかさ。」
「端的に言えば、同族経営って経営者側の意思決定が伝わりやすいとネットを調べると出てきますよ。」
「逆にそういうもんなのかい。最初(注:創業という意味のようです)とかはやりやすいんだろうなとは思ったんだけど。」
「では、ネットにある同族経営のメリット・デメリットを整理してみますか。」
同族経営のメリット
・経営者・創業者・オーナー側の意向が強く意識するため意思決定が伝わりやすい
・長期計画が立てやすく、その継続性も高い
・後継者選びが楽で、経営権の伝承がしやすい
・経営難の時に立ち向かいやすいため、経営が長続きしやすい。
・特に日本特有の考え方であり、日本人には悪いイメージは低い
同族経営のデメリット
・経営そのもののチェックが甘く、牽制(けんせい)が取りにくい 法令遵守が甘くなる
・能力より私情で役職が決められやすい
・働いている者の頼りになる相談先がない
・以上から同族以外のやる気・モチベーションが低下しやすい
・世界的に見ると悪いイメージが強いため、外国人労働者には良いイメージが付きにくい
「日本人特有の考え方なのかい。そんな風には思ったことなかったね。」
「できるだけ均等になるようにメリット・デメリットを出してみました。でも今回取り扱うのは社会福祉法人でして、社会福祉法人を管轄しているのは厚生労働省なんです。その厚生労働省も同族経営に対しては反対意見なんですよ。」
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/09/dl/s0920-9f02.pdf
従来型の社会福祉法人経営
同族的経営 社会福祉法人には、土地や建物の一部を寄付で賄ったこと等から同族経営が多い。職員の将来への展望が拓けず、有能な人材の確保・育成に支障を来すというマイナス面も否定できない。
「ふーん。そんなに同族経営のほうが多いのかい。」
「2010年代の社会福祉法人に多かったのは、一法人一施設だったんです。
お父さんが理事長兼園長先生、お母さんが副園長兼事務長先生、娘が主任保育士か調理主任なんて法人が多かったんです。それが、この厚生労働省の見解から1法人2施設くらいになったのが2020年代ですね。」
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「家族総動員でやってやれないこともないんだね。」
「そうなんです、それが一番の問題です。介護保険の様に法改正が頻繁に行われたり、保育園でいえば公定価格が下がったとしても、同族経営のほうが乗り切りやすいんですよ。これが一般的な経営だと、人件費を減らすために就業規則、給与規則を変えるという大掛かりな作業を要するんです。それが家族だと、家族での収入を減らす作業で済むわけです。お父さんとお母さんは〇十万円減らすけど、子育て中の娘は下げない。などエッジのきいた経営ができるわけです。」
「なんだい、エッジって?」
「うーん、船だと操舵で面舵一杯、車だと急ハンドルをきるといえばいいんでしょうか?」
「ああ、緊急の対応ができるのね。まあ、家族の結束は揺るがないのね」
「その結束のおかげで、いろいろ問題が起きているんですよ。」
「また福祉の仕事って、ブラックボックスなんてありませんから、仕事はイミテイティブ(模倣的)で、経営も金太郎あめでいいんですよ。すると特別有能でなくてもいい仕事だから、余計に根が深いんです。」
https://nu-so.hatenablog.com/entry/2023/03/19/160000
「悪い人は悪いんだろうけど、それをどうにかするって難しいね。ちゃんとみんなやればいいんだよ。」
「おらたちのような下々にはわからない苦労はあるんだろうけどね。そういう人たちがうらやましいと思う気持ちもあるよ。小さなところ(注:法人のことだと思います)は目立たないようにちまっとやっていればいいのさ。」
「おら、必死にしゃべったけど、なんでこんな話おらにするの?」
「そういわず付き合ってくださいよー(涙)」