ヌーソの皿の上

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若竹保育園 事務員2000万円不正引き出しについて

 

 

ニュースの概要

 

保育園職員(46)が2000万円を不正引き出し~私的流用を認める 福岡・春日市 

https://rkb.jp/news-rkb/202207042233/

”県によりますと、今年5月に内部監査で「決算処理に疑義がある」との指摘があり、園が調査した結果、少なくとも2000万円が園の運営口座から不正に引き出されていたことが分かりました。

 

口座を管理していた46歳の女性事務職員に聞き取りをしたところ「投資やギャンブルに使った」と私的流用を認めたということです。

 

女性は園を運営する社会福祉法人「共栄福祉会」の理事長の娘で、今回の件を受けて先月7日に懲戒解雇されています。”

 

 

というニュースがあり、所管庁である福岡県は

 

私立認可保育所「若竹保育園」における不適正支出について 福岡県 7/4

https://www.pref.fukuoka.lg.jp/press-release/wakaatakehoikuen.html

 

詳細

https://www.pref.fukuoka.lg.jp/uploaded/attachment/168596.pdf

"法人の内部監査で「令和3年度決算処理に疑義がある」"

 

と、ホームページ上で公表をしています。

 

 

まず始めにこの法人の状況を調べます。

 

 

法人の特徴

 

・昭和521114日に法人登記時から典型的な同族経営をしており、今回の事件の犯人も、保育園の事務職員(理事長の娘)とされています。

 

・障害児入所施設を経営基盤としています。

 

2016年には当時の園長が瑞宝双光章を受賞しています。

 

・また、この法人は20223月に行われた日本アカデミー賞で、「すばらしき世界(西川美和監督)」が 7部門で優秀賞を受賞し話題になった法人で、若久緑園もその舞台の一つとなっています。

 

などなど地元に密着した法人経営をしていたようです。

 

 

2020年度までの会計の動き

 

続いて、2020(令和2)年度の貸借対照表の繰越活動増減差額を見ていきます。

 

521,756,41

 

と、前年度(2019年)から-62,172,333円も残高を減らしています。

 

大きなお金が動いていますね。

では法人はどのような活動をしていたのでしょうか?

 

理事会の動き

20182019年 新板屋学園建設用地購入

2020年 新板屋学園建設

2021年 役員入れ替え・規程改正など

 

https://itayagakuen.com/facility-introduction/

 

となっています。

20182020年まで障がい者施設(60床)移転改築に動き、2021年中ごろから運営が始まっています。

2019年に2億円ほどの借金をして、合わせて6億円建物仮勘定に積み立てています。2021年には土地建物合わせ6000万強のお金が動いていたのが、残高を減らしていた理由のようです。

 

 

ここまでわかったのは、20192021年までの間は移転改築に伴い、会計上も活発に動いており、ぱっと見では不正会計が起きているかどうかは読み取れない状況だったと言えます。

 

 

問題の若竹保育園について

 

問題になっている若竹保育園

https://wakatakehoikuen.jimdo.com/

 

定員190名と保育園としては大きな保育園です。

経常収入も2億~22千万円に上りますが、さすがに2000万円の動きは誰でもわかると思うんです。

それでどころか、月次をみていれば2000万円一括で動けば問題になるはずです。つまり、単年度で2000万円ほどのお金は動かせないと考えます。

それに例えば単年度で2000万円のお金を引き出したとしても、すぐ戻せば同族経営の法人ですから訓戒程度の処分で終わるはずじゃなかったでしょうか?それが懲戒処分までしなければならない理由、つまり複数年度でお金を下ろしたのではないかと。複数年度となれば、決算は理事会を通した後だったとしたらと考えて、財務諸表を読みます。

 

まず一番着目しなければならないのは、外部への資金流出の科目

 

拠点区分間繰入金支出

 

を見てみます。

2019年 3,000,000

2020年 2,500,000

2021年 1,600,000

 

本部へ繰入相当額分しか計上されていません。法人としては建物を建てるなどの動きがありましたが、それに合わせて支出したということはなさそうです。

 

 

ではどの科目か?

 

実のところ、財務諸表上は大きく怪しい部分はありません。

ただ強いて言えば、科目で大きな動きがあったのは、

 

事務費支出

2019年 予算500,000 決算421,567

2020年 予算479,000 決算479,680

2021年 予算100,000 決算797,696

 

 

と、30万~60万近くの予定外の動きがあったことです。

 



ということは?

 

例え簡単だといわれる保育園会計といえども、科目は50種類に上ります。

各科目に数万円ずつ使途不明金を混ぜたり、園長と結託し決算書を改ざんすれば複数年度の会計を誤魔化すことも可能な事実はあります。

 

ごくごく当たり前のことですが、事務担当者と会計責任者は牽制が取れる関係であるべきだと思います。

それが理事長の娘となれば牽制は取りやすいと考えるでしょうか?