ヌーソの皿の上

福祉とpc関係の記事です

社会福祉法人の成り立ち、責務、そしてこれから

 

社会福祉法人の成り立ち

 

社会福祉法人というのは、第二次世界大戦終戦後にできたものなんです。

戦後というのは、海外からの引揚者や戦争による身体障害者戦災孤児、失業者などの

生活困難者の急増した時期でした。

本来、このような人々の救済をするべき社会福祉事業の経営・責任は、国や地方公共団が担うべきものですが、対応はまさに急務であったことと、荒廃した日本の行政の資源は不十分であったため、政府は民間資源の活用が求めらました。

 

そのため、事業の実施自体は民間が担い、事業の公益性を担保する方策として、行政機関(所轄庁等)がサービスの対象者と内容を決定するという形で実施することとなりました。

この仕組みこそが、措置制度 の始まりなわけです。

 

この措置を受託する法人に行政からの特別な規制と助成を可能とするため、特別な法人格が用意されました。

昭和26年に制定された社会福祉事業法(平成12年、社会福祉法に全面改正)により

創設された社会福祉事業を行うことを目的として、社会福祉法の定めるところにより

設立された法人」これを「社会福祉法人」といいます(法第22条)

 

参照元厚生労働省 社会福祉法人制度の在り方について

https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-12004000-Shakaiengokyoku-Shakai-Fukushikibanka/0000050269.pdf

 

教科書のままの話です・・・(汗)

もうちょっとお付き合いください。

 

 

福祉8法と社会保障費 そして今

 

ここからは福祉従事者の方ならご存じの通り、昭和20年代に福祉3法(生活保護法・児童福祉法身体障害者福祉法が制定され昭和30年代にもう3法(知的障害者福祉法・老人福祉法・母子及び父子並びに寡婦福祉法)が追加され、福祉6とよばれます。

 

そこから、生活保護法が除かれ老人保健法・社会福祉法・社会福祉医療事業団法が追加され今の福祉8法と整備されていきます。

 

これと同時期に社会保障費の増加が懸念され始めました。

1990年代(平成以降)には高齢化率が先進国を上回るようになります。また、1990年といえば、前年(1989(平成元)年)の合計特殊出生率1.57と、特殊要因な事情のあった過去最低の1966(昭和41)年の合計特殊出生率1.58を下回ったことが判明した1.57ショックというのもありましたね。

 

ここからは、2000年に介護保険などの導入があり、「措置制度」から利用者本人との「契約制度」に移り変わります

そして、2010年代には社会福祉法人改革が始まるわけです。

 

社会福祉法人改革については、先日上げましたこちらの記事をご参照いただければと、

 

nu-so.hatenablog.com

 

法整備と共に社会保障の再構築があったのは、社会福祉事業そのものが時代によって

ニーズが異なるためであり、その時代その時代で社会福祉が変化してきたと言えます。

その変化と、法的根拠に裏付けされた福祉の根幹には社会福祉法人の役割が強かったものと思います。

 

では今の社会福祉法人はなにを求められるの?

 

このように社会福祉法人は、公の公益性を担保するため、機関の補助・補完・代替として、さらには地域福祉の受け皿であり、福祉増進を図ってきたまさに福祉の重要な機関だといえるでしょう。

 

でも今の社会福祉法人は、果たして世間・世論にそれほど好意的な注目を浴びているといえるでしょうか?

社会福祉法人だから、安心安全」「社会福祉法人なら弱者救済のための行動をしている」などの印象がありますか?

 

なぜ、安心安全と感じないのでしょうか?

なぜ福祉ニーズに対して柔軟に対応してくれると感じないのでしょう?

  

その答えの一つには、これまでに様々な社会福祉法人が、幾度も繰り返してきた補助金をめぐる不正受給の事件があるとは思わないでしょうか?

関係者としては、単純なミスのものから、過失とは呼べないほどの悪質な流用も少数あったのかもしれませんが、世間に大きく不信感を与えることになった一つといえると思います。

 

もう一つの福祉ニーズへの応答についての答えです。

まず、社会福祉法人が目的とする事業を説明すると、「規制と助成を通じて公明かつ適正な実施の確保が図られなければならないもの」を社会福祉事業といい、その中でも一種二種が存在します。

 

 

社会福祉事業図

f:id:nu-so:20210829092939p:plain

 

 一種二種の差には、経営主体という違いもありますね。

事業を一部抜粋すると

 

第一種社会福祉事業リスト

 

児童福祉法

児童養護施設

乳児院

・母子生活支援施設

・障害児入所施設

・情緒障害児短期治療施設

児童自立支援施設

 

老人福祉法

養護老人ホーム

特別養護老人ホーム

軽費老人ホーム

 

障害者総合支援法

・障害者支援施設

 

 

第二種社会福祉事業リスト

 

児童福祉法

助産施設

保育所

 

就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律(認定こども園法)

・幼保連携型認定こども園

 

老人福祉法

・老人居宅介護等事業

・老人デイサービス事業

・老人短期入所事業

・小規模多機能型居宅介護事業

・複合型サービス福祉事業

老人デイサービスセンター

老人短期入所施設

 

障害者総合支援法

障害福祉サービス事業

・一般相談支援事業

・特定相談支援事業

・移動支援事業

 

身体障害者福祉法

身体障害者生活訓練等事業

 

とあります。

 

 

では、ここで質問ですが、この10年間建設ラッシュが続いた有料老人ホームは

どこにあるでしょうか?

 

建設ラッシュが続いたという事は、それだけ社会的ニーズがあったはずなのに、このリストにはないですよね?

 

その答えはこの図にあります。

 

 

f:id:nu-so:20210829092655p:plain

引用元:https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/shakai-fukushi-houjin-seido/01.html

 

 

社会福祉法人社会福祉事業以外にも行える事業があります。その中の公益事業に有料老人ホームが位置付けられていますよね。

 

特別養護老人ホームのように要介護者を24時間預かることもあるのに、社会福祉事業ではないのです。

 

有料老人ホームの建設ラッシュと同時期に特別養護老人ホームの需要も高かったんですが、多くの社会福祉法人特別養護老人ホームの建設には踏み込めず、かつ社会福祉法人で積極的に有料老人ホームを建設できたのは、一部の大手社会福祉法人だけでしたよね?

 

このような状態を福祉ニーズに応答しているといえるでしょうか?

 

f:id:nu-so:20210902193314j:plain



運営と経営の違いとは

 

社会福祉法人運営と経営の違いはなんでしょうか?

厚労省の資料には「運営の透明性」などという言葉がありますが、社会福祉法人は経営をしていないのでしょうか?

 

この二つの言葉の違いを大雑把に言えば、「目標」にあると思います。

「経営目標」といえば、目標数値や指標を基に行動に移しますが、

「運営目標」となれば、「問題を起こさない」、「コンプライアンスを守る」、「安全に」になると思わないでしょうか?

 

これまでの社会福祉法人は経営をしてきたのでしょうか?運営止まりだったのではないでしょうか?

 

そして、利益を追求できない社会福祉法人において、大きな目標とは何でしょうか?

社会福祉法人を取り巻く問題としては、資金・人材面で大きく問題を抱えています。

ですが、第二種社会福祉事業を行っている社会福祉法人は、少なくとも運営が難しいとされる第一種社会福祉事業を、積極的に参入・参画することが、社会福祉法人の目標であり、担うべき責務とは言えないでしょうか?

 

これは保育園のみ運営しているのに、いきなり特養をはじめろと言っていることになります。

同じ福祉業界でも、全くの異業種への参入をしろといっているようなものなんです。

ですが、このままではいかに歴史があり、日本の社会福祉のキーパーソンを自負しようと、看板の「社会福祉」自体の名折れになるのではないかと私は危惧しています。