ヌーソの皿の上

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社会福祉法人における理事・評議員・監事の問題と改革の必要性

みなさんは、社会福祉法人の、理事、評議員、監事についてどのような印象をお持ちでしょうか?

あまり、表舞台には出てこない印象のこの重役たちについて、説明と解説をしたいと思います。

 

 

1.社会福祉法人の理事・評議員・監事とは

 

①まずその役割について簡単に説明すると

 

評議会・・・法人運営に関わる審議し議決する機関

理事会・・・業務執行の決定など、法人の執行機関

監事・・・・業務執行状況と計算書類などによる財産の状況を監査

 

となっています。

参照元厚労省 社会福祉法人の経営組織

https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/shakai-fukushi-houjin-seido/02.html

 

 

②主な法律的根拠と資格要件

社会福祉法上を抜粋すると

 

第三十六条 社会福祉法人は、評議員評議員会、理事、理事会及び監事を置かなければならない。

2 社会福祉法人は、定款の定めによつて、会計監査人を置くことができる。

 

~中略~

 

評議員

(役員の資格等)

第四十四条 第四十条第一項の規定は、役員について準用する。

2 監事は、理事又は当該社会福祉法人の職員を兼ねることができない。

3 理事は六人以上、監事は二人以上でなければならない。

4 理事のうちには、次に掲げる者が含まれなければならない。

一 社会福祉事業の経営に関する識見を有する者

二 当該社会福祉法人が行う事業の区域における福祉に関する実情に通じている者

三 当該社会福祉法人が施設を設置している場合にあつては、当該施設の管理者

5 監事のうちには、次に掲げる者が含まれなければならない。

一 社会福祉事業について識見を有する者

二 財務管理について識見を有する者

6 理事のうちには、各理事について、その配偶者若しくは三親等以内の親族その他各理事と厚生労働省令で定める特殊の関係がある者が三人を超えて含まれ、又は当該理事並びにその配偶者及び三親等以内の親族その他各理事と厚生労働省令で定める特殊の関係がある者が理事の総数の三分の一を超えて含まれることになつてはならない。

7 監事のうちには、各役員について、その配偶者又は三親等以内の親族その他各役員と厚生労働省令で定める特殊の関係がある者が含まれることになつてはならない。

 

 

引用元:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=326AC0000000045

 

 

と定められた、社会福祉の重要な役職だといえます。

尚、理事の資格要件も評議員と同等と考えられているため割愛します。

 

ちょっとだけ違うのは、評議員と理事の兼務は禁止されていますし、評議員はその法人と雇用関係のある者は任命できません。ただ理事はその法人職員がなることもできます。

 

 

2.「識見を有する者」とはどういうことなの?

 重要な部分なので、資格要件にある「識見を有する者」とは何を指すのか詳しく説明します。

 

平成12年社会福祉法改正時に

“理事の選任・・・社会福祉事業についての学識経験者及び又は地域の福祉関係者の人数は1名以上でよいこととした。”

とあります。

引用元:厚労省

https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12201000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu-Kikakuka/0000030246.pdf

 

では、その学識経験者や地域の福祉関係者とはどういう人を指すのでしょうか?

これも同じく厚労省にあるものを引用すると

 

(1)         次のような者は、「社会福祉事業について学識経験を有する者」であること。

ア           社会福祉に関する教育を行う者

イ           社会福祉に関する研究を行う者

ウ           社会福祉事業又は社会福祉関係の行政に従事した経験を有する者

エ           公認会計士、税理士、弁護士等、社会福祉事業の経営を行う上で必要かつ有益な専門知識を有する者

 (2)     次のような者は、「地域の福祉関係者」であること。

ア           社会福祉協議会社会福祉事業を行う団体の役職員

イ           民生委員・児童委員

ウ           社会福祉に関するボランティア団体、親の会等の民間社会福祉団体の代表者等

エ           医師、保健婦、看護婦等保健医療関係者

オ           自治会、町内会、婦人会及び商店会等の役員その他その者の参画により施設運営や在宅福祉事業の円滑な遂行が期待できる者

 

 

引用元:厚労省 社会福祉法人審査基準

https://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/02/s0217-7d.html

 

とあります。

簡単に言いますと、

・地方議員

社会福祉関連の先生・講師

・行政の天下り(福祉関連業務に従事していなくても、元行政職員なら可)

自治会・町内会長 etc

※監事は、税理士・会計士らがなっていることが多いです

 

の人たちが、社会福祉法人の重役になっていると、行政側からは大変心象のよい、優秀な法人体制であると言えるわけです。

 

 

3.では実態は?

 昨今、ニュースや報道では、介護士・保育士・障がい者支援者といった福祉従事者の、暴行・暴言・不適切な行動が連日のように取り沙汰されています。

 

同じように社会福祉法人の理事長らが率先した不正行為をしている場合も、報道はされています。

 

でもここで大きく違うのは、最前線で働く現場職員は問題が起きれば、「自己都合による退職」という名の罷免を受けたり、問題が大きければ、警察沙汰、裁判沙汰の案件であふれかえっているわけです。

一方、この重役らはよほどでない限り罷免もなければ、報道にも名前が挙がってこないわけです。

事件の内容次第では同族経営からの温情で、あえて懲戒処分を行わない社会福祉法人もありました。

https://nu-so.hatenablog.com/entry/2022/10/07/120000

また、会計上の不正行為があったのに、評議員や監事らが牽制の取れなかったことに責任を持ち、役職を降りたなどの話は、社会福祉法人の事業報告などにも上がってこないわけです。

 

生計まさに生業として働いている現場職員は、刑法との隣り合わせで働いているのに、評議会・理事会の徴収に皆勤で出席するだけで報酬が受けられる重役たち。法律上では「経営責任を負えるような体制の確立」とあるのに毎回毎回牽制のきかない法人ばかりに倦厭(けんえん)してきます。

 

それもそのはずで、資格要件にもあるように評議員や理事は、そのほとんどが副業であり、この役職そのものが名誉職であるだけで、刑法とは無縁の命がけの仕事とは程遠い職なわけです。

では、現場上がりの施設長などを増やすとなれば、今度は所管庁側の監査である行政側がいい顔をしないという問題も含められているわけです。

 

同じ福祉業と言いながらも、なんら責任がない、牽制もとらないで執行する勝ち抜けの上級国民というべきなのが、現状の評議員・理事なのです。



 

4.より厳しい監視を

だいたい報道をされるほどの問題を起こした社会福祉法人評議員や理事たちが、理事長以外で名が挙がっている者を見たことがあるでしょうか?

大きく問題に関与していても、理事長でない限りはその経営責任を取っている証拠もないということなんです。問題後も、しらんぷりで理事を続けている評議員・理事・監事たちが役職に残り続けているから、再犯防止に向けた取り組みなどもせず、すべてなかったことにしているのだと思えるのです。もっとその取り組みは発表して然るべきです。

 

https://nu-so.hatenablog.com/entry/2023/09/10/160000

 

社会福祉法人に対して、知見もなければ不勉強であるにもかかわらず、法人役員は零細企業の取締役と同等程度の認識なのに、私の指摘に対し「余計なお世話だ」とコメントする方もいます。

大変浅慮なことであり、社会福祉法人を腐敗させる考え方の病因だと思っています。

 

そのためにも、社会福祉法人にはもっと厳しい監視が必要だと思っています。

・問題があった評議員・理事・監事も現場職員と同様、報道でも大きく取り上げる →責任の認識を高める

・理事、評議員の「のべ」数はもっと少なくする →名誉職にしない

同族経営者の問題行為の場合、その同族者も退場する →同族同士の温情への牽制

 

といった、忖度のない行動と構造改革を願います。