ヌーソの皿の上

福祉とpc関係の記事です

居酒屋けんざん(24) 老後・老人ホームのイメージの話

「~~もうおらは老後だからねー。この店けんざんも、収支はちょんちょんだから店を大きくするとかも考えていないよ。やれるまでやってつぶすしかないのかもしれないねー。」

 

「娘さんたちはやっぱり後は継がないですね?」

 

「うーん、継いでほしい気持ちがないでもないよ。ただ、うちなんかは常連さんでもっている店だけど、常連さんたちもだんだん高齢な人が増えてきたからね。次の世代が続けるには厳しいんだよ。」

 

「老後って、やらなきゃならないこといっぱいですよね、経済的な面って、稼ぐ以上は自分の健康も維持しなきゃならないですしね。」

 

「この歳になると、大して食べたいものもなくなってきたんだよね。だから食費にお金をかけるのもなんだか面倒になってきて、しょっぱいぬかニシンさえあれば十分なんだけどね。」

 

「血圧が上がるのでだめですよ。」

「前、うちのブログで、「年金は繰り上げるべきか、繰り下げるべきか」という記事を書いたんです。でも、その年金に関わる本やyoutubeなどを見ていると、みんなこぞって年金は繰り下げるべきだといっているんですよ。」

nu-so.hatenablog.com

「でもね、80歳を超えて若い頃のように食べ飲みができ、旅行ができるかといえば、全員が全員そうはならないんですよ。ということは、80歳以上の経済活動ってそれほど多くなくって、85歳以上長生きした時に儲けるために年金を繰り下げるというのは私的には反対なんですよね。」

 

「そうはいっても、歳をとって、健康が維持できなくなる以上は、施設に入ったりしなきゃならなくなるだろ?その時の問題もあるだろうさ。」

 

「施設に入るために、年金額を増やしたいということですか?そのために、高齢になってもカップラーメンを食べ、お風呂に入るのを減らしたりしてまで、年金を受け取る期間をあと伸ばしにしたいということになりかねませんよね?それって、結局本末転倒なんですよ。高齢になっても体を蝕(むしば)むことをしてまで年金額を増やすということは、経済のために健康を切り売りしているようなものです。」

 

「それもあるよ、でも歳を取ると子どもたちに負担をかけたくないからねー。そういうのもあるんじゃないの?」

 

「20年前までは、長男の嫁が長男の両親の介護をするなんて言われてきましたよね。だから、長男の婚姻率が低く、次男三男のほうが結婚市場は需要があるなんて言われてましたよね。」

「それが、子どもたちの生活が成り立っているなら邪魔したくないから一緒に暮らしたくない、でも子が苦境なら手を差し伸べなくてはならない。それでいて自分たちの生活が立ち行かなくなったら施設に入るとなれば、子どもとの関係って何なんでしょうね?こういうところだけ、欧米・欧州の個人主義の考え方が根付いていますよね。」

 

「おらにはそういう話はよくわからんけど、おらはいつか施設には入らなきゃと思っているんだよ。」

「なんだかさ、寮や刑務所のようなイメージなんだよ。」

 

「(笑)刑務所ですか?」

 

「だいたい、施設に入ったら勝手に外に出ていいのかい?」

 

「(笑)どうぞどうぞ、いくらでも好きなだけ、外出してください。施設でごはんも出してくれますが、外食をしたっていいですし、お風呂も自由ですよ。ただ金銭面の余裕があればの話ですがね。」

 

「うーん、じゃあなんでみんな入りたいって言わないんだろうね?おらの周りの人も、しかたがないから入る場所が老人施設だと思っているよ。」

 

「以前、ラグジュアリーの時の話で、億万長者が入るような施設があると話しましたよね?でも言い換えるなら億万長者ですら、施設に入るんですよ?」

nu-so.hatenablog.com

 

「そりゃ、施設とはいっても、とてもいいところに入るんだろうさ。ホテルのようなきれいなところに。」

 

「きれいで、高級でしょうね。それでいてサービスも充実しているのかもしれませんね。でも言い換えればそれくらいですよ?なのに施設に入るんですよ。」

 

「おらたちのような者が入る施設は、集団生活をするめんどくささがあるとかじゃないの?」

 

「(笑)それは誤解ですよ。大なり小なり集団生活のめんどくささはあるでしょうが、軍隊に入るわけじゃないですよ」

「その答えの一つは、この居酒屋けんざんと同じようなものです。同じ生活レベルで、同じ年齢層の人がいるから、利用者さん同士で自分の話を聞いてもらえ、共感もしてもらえるんですよ。それに相手の話も聞きやすいでしょ?」

「高級施設に入る人はそれがわかっているから、あえて高級施設に入るといえるんじゃないですかね?」

 

「おら、女だから、どんなところにいっても、その環境に慣れるように努力すると思うんだ。自分の世界に入り込むかもしれないけど、その環境で楽しみを見つけて生きていけるんじゃないかと思っているんだ。きっとパーソナルエリアっていうやつも関係しているんじゃないかね?」

 

「施設のイメージって、いくら個室化が進んでも、どのような施設を選んでも、自分らしく暮らせるかどうかであって、エゴを押し通せるか通せないかも関わってくるのかもしれませんよね。」

 

「ヌーソさんこそ、将来は老人ホームに入るのかい?」

 

「私ですか?私はお金に折り合いがつけば、すぐにでも入ろうと思っていますよ。」

「70歳になったら入ろうとかじゃ、生活パターンが出来上がっちゃうので、60代からでも入れるなら入っておくべきじゃないかと思っているんです。」

 

「そんなに施設に入りたいのかい?」

 

「私は元介護職員です。これからの人生で介護職員に戻る時もくるかもしれませんしね。だから老人ホームに悪いイメージはありませんよ。それより、私の場合は罪滅ぼしという意味もあるのかも。新人時代の駆け出しのころ、利用者さんにはご迷惑ばかりをおかけしました。だから、私がどんな新人さんに介護を受け、たとえぞんざいに扱われるようなことがあっても、それを私は受けなければならないと思うんです。それが、私なりの罪滅ぼしなんです。」