ヌーソの皿の上

福祉とpc関係の記事です

福祉施設における人事考課の実態

福祉施設の人事考課って考えたことがあるでしょうか?
ひと昔前、社会福祉法人には第三者評価を入れるように、行政が力を入れたことがあります。
この第三者評価をする組織は行政の指針に沿って評価するので、いわば行政の委託事業みたいなものの印象を受けています(独自評価をしているところもあると思います)。そして、その評価内容をみてみると、一にも二にも人事考課を入れるようにと促す内容でした。当時の私には、行政の意向にそった人事考課の導入をするように促されたものとしての印象を受けました。

 

人事考課は大義名分

 

この記事を書くにあたり、ネットにある社会福祉法人の人事考課規程、もしくは要綱を数か所読みました。
仕組みはどこも似たり寄ったりで、恐らくは賞与(勤勉手当と間違えてないか気になりましたが)への、支給額を何パーセント減額するかという減点法を用いている印象です。
加算法と違い、ほぼ100パーセントは出せないような仕組みになっている印象です。
名目は、職員のモチベーションや育成を謳いながらも、基準値を設け、その基準に達しているかどうかにより、大体60%~90%台の支給をしているのでしょう。
その考課測定方法はその法人、事業所によるでしょうが、1次考課、2次考課に分け牽制を取れるようにしているようです。1次考課する人は直属の上司、2次考課するのは部署の部長クラスの管理職にしているから、評価内容は公平性を保てていると言いたいんでしょうね。

ではなぜ、60~90%の支給率にしているかと言えば、それはあくまでその職種の全国平均年収に合わせ、グループ内の人件費を全国からみても平均に保ちたいからです。
もし上司が「本当は100%みんなに出したい」なんて言っていたらそれは大嘘なんですよ。経営側は経営側で、その経営手腕を推し量られているので、人件費率80%を超えるような人件費支出にはしたくない。でも収入は施設という箱ものである以上、めい一杯汲んでも限界点はある。となれば人件費支出を人事考課というなの大義名分を得て減らしたいのが現状であります。

なのにこの人事考課を苦しめているものがあります。それは福祉事業所なら大体支給されている処遇改善加算です。


処遇改善加算は、経営側からすれば皮肉なもので、前年度の支給額に上乗せした形で支給するようになっています。特に2024年現在、経済は上向きの動きをしているといわれ、かつ物価は高騰している以上、国家公務員は人事院勧告により給与が上昇します。それなのに、処遇改善加算が減額になるということはあり得ないわけです。さらにベースアップ加算という介護職員の月給を増やすための加算もあるわけですから、経営側は下げても下げても、年々職員の給与は上がってしまうような状況なんでしょうね。それなのに人事考課を導入しながら「うちの事業所に人が集まらない」なんて口にしている偉い方を見ると、矛盾しているなと感じてしまいます。

 

 

人事考課の良い点とは?


まず第一に言いたいのは、考課基準が減点法でモチベーションがあがるでしょうか?人事考課の触れ込みは、「職員のモチベーション」を上げるものとして導入を勧められたというのに、実情は人件費を抑える効果にしか利用されていないと思います。私の言っていることが嘘だと思うなら、社会福祉法人職員で、賞与支給額200%支給だったというような人を探してみてください。普通の賞与上率3.5あたりの2倍を支給された人はほぼいないはずですよ?
また、何をもって人事考課としているかです。本来人事考課というのは、目標とした到達点に対してのモニタリング結果であるべきです。ではその到達点とは、社会福祉事業職員にとって何を指すのかです。
もっと具体的に言えば、何をもってキャリアアップなのかではないでしょうか?保育園のキャリアアップ研修など見ていると、中堅層以上の保育士が受ける研修は、職員のマネジメントに関する研修を受けています。障がい者分野でいえば、社会福祉士を取って、次は精神保健福祉士をとろうなんて触れ込みを見てきました。
職員のマネジメントというのは、リーダー研修の延長線上に思えるかもしれませんが、そもそも経営者側が一番こだわる部分で、逆に職員には口出しをされたくない中身です。その研修を受けた保育士は、中堅層以上のキャリアアップ研修を受けたからといって、転職に役立つでしょうか?ましてや保育士以外の職種につけるというんですか?
そういう意味では、障がい者分野は資格取得を強く謳っていますから、転職には役立つでしょう。でもそれ以上に求められるのは研修を受ける制限のある、サービス管理責任者研修ではないでしょうか?ずいぶん緩和されたときいていても、実際の実務につく職員でなければなりませんから、国家資格よりもこの研修のほうが実質上位資格と言えるでしょう。では国家資格はなんなんですか?サービス管理責任者になるための過程だと?いやいや、国家資格なのにですよ?なにをもって国家資格なんですか?

 



もっと本当の意味での人事考課を


福祉施設にとって真の人事考課を進めるためには、福祉職の資質問題ばかりに着目した研修や、経営側に煙たがられるキャリアアップでは意味がないと思うんです。一人ひとりがそのキャリアアップを経て得られる評価がないと、本来の意味での人事考課にはなりません。例えるなら、人事考課・キャリアアップがその人の担保になるような仕組みが必要だと思います。

こんな記事も書いているので、併せて読んでいただければと。

nu-so.hatenablog.com