2月決算が近づいたため、1月はいろいろな業種でも倒産情報が報道されましたね。
「物価高」倒産 1月は前年同月の6倍の42件 東京商工リサーチ
https://www.tsr-net.co.jp/term/index.html
リーマン後で最長更新、2000年以降では4番目の長さに ― 2023年1月の倒産、9カ月連続増加
https://news.yahoo.co.jp/articles/5141b6830f9d0a6be050539701f7922d3db984b7
この物価・燃料費高騰、人材不足にコロナの影響もまだ見え隠れしている景気は、介護業界にも累を及ぼしています。
介護事業所の倒産、2022年は過去最多に
引用元:日経メディカル
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/202301/578162.html
上記記事を引用させていただくと
“介護報酬のマイナス改定や人手不足、大手事業者等との競争激化などで2016年は100件を上回り、以降も高水準で推移していた。COVID-19拡大により利用控えが広がった2020年には過去最多を更新したが、2021年はCOVID-19関連の資金支援策もあり、大幅な減少に転じた。だが2022年は倒産件数が再び増加し、光熱費等のコスト上昇、支援策の縮小、人手不足などが追い打ちをかける形となった”
リーマンショックの時には、福祉事業は不況に強いなどと言われていましたよね。事業収入には補助金や公的な委託費が含まれている業界なのに、なぜ今回は立ち行かなかったのでしょう?
人件費が安くて人材難で、人件費コストがかかっている?
昨今では一にも二にも、人件費の問題が取り上げられるようになりましたよね。
超氷河期世代のように、そもそも職そのものがなかった時代とは違い、今は有効求人倍率が上がり続けています。以前から人材確保に苦しんできていた介護業界にとっては、他の業種よりもこの問題が経営悪化に直結しています。
でも上記引用記事にもあるように、介護報酬のマイナス改定が続いていたころならわかりますが、この近年では介護職員には処遇改善加算が支給されているはずなのにそれでも、
介護事業所の利益率3.0%、前年度比0.9ポイント減 人件費影響 yahooニュースより
https://news.yahoo.co.jp/articles/ab36710f6196e3807f4631791ff1eb31583ecb96
“厚生労働省が(2月)1日公表した「介護事業経営概況調査」で明らかになった。コロナ禍の利用控えや人件費の伸びなどが影響したという。”
というニュースと
介護職員の3%賃上げ、4分の1が制度活用せず…厚労省は手続き簡素化で利用促進へ 読売
https://www.yomiuri.co.jp/national/20230117-OYT1T50082/
というニュースが並びましたよね。
補助金を使って、人件費は伸びているけどその一方でその補助金は利用していない事業所もある。なかなか釈然としない内容ですよね。
混乱させる原因は、先ほど挙げた処遇改善加算によるものなんです。
まず、この加算はほぼ補助金と同義ですから、極端な例を出すと9,000円の賃上げをするために、補助金として8,999円までは補助金として出しますよ。でも残り1円、1円だけでも事業所が出資しなさいよ、というのが補助金のおおよその流れなんです。1円が出せない事業所は8,999円の補助金はもらえない、つまり賃上げができないわけです。
これは極端な例ですよ?そもそも1円単位まで補助金は請求できるものではないですが、一人たとえ1円だとしても、全介護職員に毎月支払わなければならないとすれば、その額は大きくなる、よって補助金を使っても、事業所からの出資がある以上、おのずと利益率は下がってしまうというわけです。
そうなることを見越し、支給できない(あえてしない)事業所はこの補助金を使わないため、4分の1もの事業所が活用していないというわけです。
倒産の理由は人件費だけではない
このようなニュースもありましたよね
「保険あってサービスなし」が現実に!? 介護資源の危機的状況をどうするか
https://i.care-mane.com/news/entry/tanaka20230202
地方の特養は介護職員不足により、ベッド数がフル稼働できない問題が起こり、訪問介護事業では介護職員の高齢化が進み(※)、処遇改善加算のない居宅介護支援事業所ではケアマネのなり手不足が続いています。
※こちらも一緒にご覧ください
このように、人材問題は事業所があってもサービスの利用ができない、という問題はありますが、今回の倒産の注目点は、通所・短期入所介護事業と有料老人ホームの倒産が目立っていることです。
通所介護事業では、フランチャイズ契約(グループの商標の使用権や商品、サービスの利用権を得られる契約)をした事業所の倒産、有料老人ホームの倒産理由としては大型の設備投資が原因だとまとめられています。
これは、人材難の問題ではなく、一般企業のような事業投資による倒産が目立つということです。債務を弁済できるだけのキャッシュがない黒字倒産だったかもしれないのです。
では、通所介助事業や有料老人ホームはどうしていけばいいのか?
私は、約2年前にこのような記事を書きました
この記事の最後には、
「デイサービスでスーパーなどの移動販売車を呼ぶだけでなく、スーパーと共同で事業を行うような異業種での共存が必要なのだ」
と書いています。
私は今も、通所事業や有料老人ホームは、フォーマル(公的という意味)な設備投資ばかりではなく、もっと高齢者に寄り添ったサービスの開発をしていくべきだと思っています。燃料費が高止まりしているということは、移動販売業者の価格はもっと高騰しているのですから、さらに買い物難民は増加する恐れがあるはずです。介護保険サービスの利用者であればなおさらだと思うんです。
物流業界の2024年問題が差し迫る中で、福祉業界としてこれ以上買い物難民者を増やさないためにも、一般企業に近い事業投資ができるような余剰があるのは、通所事業や有料老人ホームなんだと思います。
それらの事業所に隣接する場所で、文房具・本・CDショップなど、街からは姿を消し始めたお店を併設してはどうでしょうか。売り場面積は大きくなくていいんです。介護保険サービスの利用者には大きな売り場面積はかえって負担になってしまうんですから。
それよりもウィンドウショッピングや買い物という娯楽ができるお店を併設するということは、近隣地域のコミュニティ、基幹づくりにつながるのではないかと私は思います。
強い相乗効果ができるものと思っています。
未来の社会づくりのためにも福祉サービスの展開が重要な役割を担うものと思っています。