社会福祉法人から資金30億円流出、広島県の監査は「不適切」…会計士の同行なく問題追及できず 4/4
https://www.yomiuri.co.jp/national/20230403-OYT1T50214/
“サンフェニックスは経営破綻する約1年半前の20年3月末時点で約64億円の負債があり、設置対象の法人になっていたが、県の担当者は気づかなかった。
同省は、担当課長が法人の届け出た書類の確認を担当者任せにするなど県の組織体制にも課題があったとした上で、「(書類の)形式的な確認にとどまり、財務状況などを把握できていなかった」と指摘。「大幅な金額変動に着目するなど、内容に踏み込んだ確認」をするよう求めた。“
このニュースを解説するにあたり、私の2021年10月に書いた記事を元に説明していきます。
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監査で公認会計士でなければ、気づけないような内容なのか?
“20年3月末時点で約64億円の負債があり、設置対象の法人になっていたが、県の担当者は気づかなかった。”
とありますが、県の担当者は60億円のお金が動いても気づけないのかという点をどう思うでしょうか?
まず負債の動きを見てみましょう
固定負債 借入金
借入金 前年度比
2016 276,669,176円
2017 1,846,678,267円 +1,570,009,091円(赤字額が増えているので+表記になります)
2018 2,051,187,142円 +201,508,875円
2019 5,061,589,902円 +3,010,402,760円
2020 6,483,132,979円 +1,421,543,077円
となっています。
2016年時点では、3億円程度の借り入れだった(これは建物の修繕などすれば普通に発生する借金)のが、2021年1月に資金ショートしたと言われていますから、その時点で60億円ほどの借り入れ(借金)をしていたことになります。
この表現、わかりにくかったでしょうか?
2020年時点で64憶円の借金があることになっていますが、文中にある2021年1月とは2020年度ですからね?
ですから今回のニュースでいっている2020年の3月とは、2019年度の3月ということです。決算書を読む限りは、2019年の借金は50億円までとなっていますが、実際はさらに14億円の借金を隠していたことになるわけです。
言い方を変えると、2019年単年度だけで30億円の借金ではなく、44億円もの借金の借り入れていたということになります。
35億円の建物を建てるのに、44億円も借金をするでは信憑性が低いですよね?「なぜ44億円もかかるの?」のとどんな監査の人でも思うわけです。それが30億円と記載されていたから、監査はスルーしたのだろうと思われます。
となればこのカモフラージュされた14億円ものお金は、どこのお金でしょうか?
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隠れていた14億円はどこのお金?
ヒントは長期運営資金借入金です。
固定負債 借入金 のうち 長期運営資金借入金
借入額 前年度比
2017 1,600,000,000円
2018 1,259,440,000円 -340,560,000円
2019 161,080,000円 -1,098,360,000円
2020 1,660,100,000円 +1,499,020,000円
ここで、2019年度を見てください。10億9千万円の借金を返していることがわかりますよね?
これは
「長期的に見れば、借入金のうち特に運用資金の借り入れは減らしました、なので運営は安定しています。」
と言っているようなものなんです。
よって、
「建物を建てるのに30億円の借金をしました」
と言うようにみえないでしょうか?
10億9千万円返しているように見えますが、本当はお金をどこかからか借りて、返しているわけです。しかも短期の借用なのでしょうね。
続けて、2018年の借入金を見てください。3億4千万円の借り入れをしていますよね?
これは想定ですが、この法人はこの時点で毎年3億4千万円の借金をしないと運営できない状態なのではないでしょうか?
だとすると、2019年度の3億4千万円の借金プラス、返したはず(実際は返していない)の10億9千万円を足すと、14億円が見えてきますよね?
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どうして14億円を見えないようにしたか
この法人が建物を建てたことは間違えのないことです、
固定資産 基本財産
2020 土地 604,124,813円
建物 6,325,627,602円 +3,557,015,409円
35億円の建物ですね。
では隠すのは14憶ではなく、5億円差し引いて9億円でもよかったですよね?
その理由は2つあり、一つは前述したとおり、運営が安定しているように見せたい、です。そしてもう一つの答えは、積立金です。
2019年度の積立金を見てください。
修繕積立資産 900,000,000
備品等購入積立資産 300,000,000
事業運営積立資産 900,000,000
経営改善等積立資産 500,000,000
借金に、修繕費積立資金と備品等購入積立金は当てられないにしろ、事業運営積立資産は9億円、経営改善等積立資産5億円は借金に充当できると思いませんか?この二つの積立を合わせれば14億円になるわけです。
このお金を借金に充当を考えていたから、隠ぺいし会計監査を搔(か)い潜(くぐ)ったと思われます。
これはあくまでも私の推測であり、正しい記述をされた会計帳簿を見ない限りには、本当のことは見えてこないですが・・・。
あわせて、こちらの記事も読んでいただいたければと思います。