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社福サンフェニックスの資金ショートについて

今年(2021年)105日(火)のニュースに、社会福祉法人サンフェニックスが民事再生法の申請をし、民事再生開始決定を受けたそうです。

 

 

"高齢者施設を運営する社会福祉法人のサンフェニックス(広島県福山市)が928日、東京地裁民事再生法の適用を申請し、同日、再生手続きの開始決定を受けていたことが分かった。管財人の弁護士によると、申し立て時点での負債額は約60億円。同社は1994年設立で、広島県岡山県を中心に老人ホームなどを手掛けていた~”

 

2021.10.1-10.7 福祉系ニュース Welfare news - ヌーソの皿の上

 

 

これほど大きな社会福祉法人が、資金ショートで民事再生法を適用されるのは、珍しいことだと思います。

 

このブログでは、サンフェニックスが情報開示している2017年からの決算情報を元に、資金ショートの原因、不透明な経営とされている理由を探ってみようと思います。

ですが著者自身としては、同じ社会福祉という業界で働いている身として、サンフェニックスを利用している利用者さんをはじめ、働いている職員並びに役員の方々が今、沈痛な思い・不安を抱えている中ですので、できるだけの配慮の上で、記述したいと思います。一日でも早く再生への道が開き、安心できる生活に戻れますようお祈りします。

 

 

 

 

サンフェニックスの沿革

 

ニュースによると、サンフェニックスの設立は1994年(平成6)年12月、20164月に現理事長が就任したこととなっています。

 

ですが調べる限り、母体になっているのは広島県の特養サンフェニックスではなく、岡山県の三愛園のようであり、姉妹法人である医療法人紅十字会(現:健応会)があったようです。

そのあと、現理事長が買収(M&A?)した経緯があるようです。

社会福祉法人 サンフェニックス|沿革

 

 

サンフェニックスの財務状況

 

 

2017年からの経営状況

ここからはWAMに情報公開されている決算情報を元に説明していきます。

引用元:https://www.wam.go.jp/wamnet/zaihyoukaiji/pub/PUB0201000E00.do?_FORMID=PUB0219000&vo_headVO_corporationId=1634118455

 

 

当ブログは財務諸表がわからない福祉従事者でもわかるような説明をしております。

 

 

当期末残高(貸借)

 

まず貸借対照表の当期末残高から見ていきます。

 

当期末残高         前年度比

2016 6,703,424,629

 

2017 4,534,237,080円   -269,187,550

 

2018 3,679,306,017円   -154,931,062

 

2019 3,577,436,919円   -105,259,038

 

2020 3,697,956,436円  +120,519,517

 

となっています。

負債総額50億円と言われているのに、残高としては、36億円あるということになりますね。

 

 

 

借入金

 

ではどれくらい借金があったか見てみましょう。

 

固定負債 借入金

 

   借入金       前年度比

2016  276,669,176

 

2017 1,846,678,267円  +1,570,009,091円(赤字額が増えているので+表記になります)

 

2018    2,051,187,142円        +201,508,875

 

2019    5,061,589,902円   +3,010,402,760

 

2020    6,483,132,979円     +1,421,543,077

 

となっています。

2016年時点では、3億円程度の借り入れだった(これは建物の修繕などすれば普通に発生する借金)のが、20211月に資金ショートしたと言われていますから、その時点で60億円ほどの借り入れ(借金)をしていたことになります。

 

 

お金を借りるには名目がありますよね。土地を買った、建物を建てた、車を買ったなど。では、どのような名目でお金を借りていたかを調べてみます。

 

 

固定負債 借入金 のうち 長期運営資金借入金

 

    借入額      前年度比

2017 1,600,000,000円  

 

2018 1,259,440,000円   -340,560,000

 

2019  161,080,000円     -1,098,360,000

 

2020 1,660,100,000円 +1,499,020,000

 

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合計 3,547,124,000

 

運営資金とは、家庭で言えば毎日生活するお金のことを指します。例えば1,000円では人ひとり、ひと月は暮らせませんよね?足りなければ借りるしかない、「生活費を借りた」と思ってください。

その生活費をどれくらい借りたかというと35億円借りたことになります。

 

そんなになぜ借金をしたのでしょうか?

次は基本財産がどのように増えたか見てみます。

 

 

固定資産 基本財産

 

 

基本財産とは、土地や建物をいいます。総称として固定資産といいます。

 

   土地建物          前年度比

 

2016 土地  735,351,268

   建物 3,770,698,581

 

2017 土地  604,124,813円   -131,226,455

   建物 3,024,233,307円   -746,465,274

 

 

2018 土地  604,124,813

   建物 2,895,977,216円   -128,256,091

 

2019 土地  604,124,813

   建物 2,768,612,193円   -127,365,023

 

2020 土地  604,124,813円 

   建物 6,325,627,602円  +3,557,015,409円 

 

土地は買っていないですが、2020年度で35億の建物を建てていますね。

つまり、元々建てようとしていた建物のため、お金を集めていたようです。

2017年の8億円土地建物の売却を平成281215日の理事会で決裁をとっていますが、売却利益は出ていません)

 

サンフェニックスの事業収入が2020年度で21億円あります。

額を小さくして説明すれば、210万円の年収のある人が、生活費で350万円借金があるのに、350万円の車を買ったということです。

 

借りた以上は、利息も払わなければなりません。

ここは、このブログをお読みいただいている方であればわかると思いますが、利息を調べるのは事業でしたか?資金でしたでしょうか?

 

正解はこちらをご覧ください。

 

nu-so.hatenablog.com

 

 

利息

 

2020年度の利息は

 

42,897,429

 

おかしいですよね?額が少なすぎます。

家庭で言う30年ローンなどで比べれば、35億の借金であれば毎年1億円ずつ返さなければならないはずなのに、毎年払う額の半分も支払われいないのです。

 

どういうことかを調べる必要があります。

 

次は、貸借ではなく資金収支計算書の当期末残高を調べます。

 

 

資金収支計算書 当期末残高

 

 

この部分は、来年詳しく説明する予定ですが、簡単に言えばキャッシュフローになります。

貸借対照表と事業活動計算書の当期末残高と違うのは、実際のお金の残高だということです。

 

当期末支払資金残高

 

2016 +2,135,986,337

 

2017 +2,162,504,444円 (社会福祉事業+2,115百万円 公益事業+47百万円)

 

2018  +710,690,345円 (社会福祉事業+488百万円  公益事業+222百万円)

 

2019 -2,450,462,976円 (社会福祉事業-2,523百万円 公益事業+72百万円)

 

2020 -1,206,849,849円 (社会福祉事業-1,284百万円 公益事業+78百万円)

 

2016年時点では+21億円あった残高(貯金だと思ってください)が、2020年には-12億円まで上っていますね。つまり33億円現金を使ったことになります。

この規模の社福であれば、資金の前期末残高は、最低でも6,000万~1億円ないと資金ショートしますので、2019年時点で資金ショートに近い状態に陥っていたということになります。

 

 

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総括

 

ここまでの話をまとめると、

 

サンフェニックスは、20億円の貯金と毎年20億円収入がある法人でしたが、神奈川県横須賀市に病院を建設するために、35億円の借金をしました。そのため、50億円の負債となり資金ショートしました。

 

となります。

そして一番の問題が残っています。それは積立金です。

 

積立金

 

2017

事業運営積立資産  700,000,000

経営改善等積立資産 300,000,000

 

2020

事業運営積立資産  900,000,000

経営改善等積立資産 500,000,000

 

2020年時点で14億円もの積立金があるんです。しかも、2017年よりも積立額は増額されています。

 

なぜこのようにしたか?それは貸借対照表のためです。

貸借対照表上は、2020年度末時点でも残高が36億円あり、10億円以上の積立があると表記するためです。

なぜそのように表記をしたか?お金を銀行から借りるためです。財産はあっても現金はないので、お金を借りるため、銀行の信用を買うもしくは銀行の指示により、2018年に積立金を増やしているんです。

 

さらに疑問が出てきますよね?このお金を使えばいいのでは?と

 

ここが社会福祉法人会計の特徴なんです。

サンフェニックスには監事を含めると3人の公認会計士がいたようです。

公認会計士が計算するんですから、この法人が35億円の借金をするのは問題なかったのでしょう。

でも、どうしてこのようになったかは、この積立金なんです。

積立金は取り崩すには、理事会の決議と所轄官庁(今回は東京都でしょうか?)との協議が必要になるんです。所轄官庁がまさか首を縦に振らないとは、公認会計士でも想定しなかった。というところが、今回の民事再生にまで陥った要因であったと思います。