”全国老人福祉施設協議会は、~中略~ 社会福祉法人に関する指摘に対し、「前提とする事実の認定を誤り合理的な推論とは言えない。国民に誤解を与えるもので遺憾と言わざると得ない」とし、エビデンスをもとに反論した。”
全国老人福祉施設協議会が財政審建議などに反論 「事実誤認の推論で遺憾」 - 福祉新聞Web
この答弁の資料となるものはこちら
財政制度等審議会 財政制度等分科会(答申・報告書等)
歴史的転機における財政
記事の内容を整理すると
財務省側の指摘内容は
・主に介護事業を運営する社会福祉法人は平均して費用の6カ月分前後の現預金、積立金などを保有し、その額も増加している
・現預金、積立金などが積み上がっているにもかかわらず、職員の給与に還元されていない可能性がある
とあったのに対し、全国老人福祉施設協議会側は
・事業継続に必要な財産として年間支出の3カ月分、将来の運転資金、事業用不動産の保有が認められているため、6カ月分前後は決して高い水準ではない
・現預金、積立金などの定義には「負債が考慮されていない」
・現預金、積立金が増加したのは、コロナで福祉医療機構(WAM)などから受けた融資をコロナの完全収束まで手元に置いているため
・建築費などに充てるもので、増額したこと
と反論したそうです。
簡単に解説すると、
・コロナによる借入金融資が手元にある
・建築コスト高騰による加味
この2点は分かりやすいと思います。
問題は上記で別添した、1法人当たりの現預金・積立金等の推移についてですよね?
これが「6カ月分前後の現預金、積立金などを保有」しているとはどういうことなんでしょう?
この資料は、保育事業などを除外した、介護保険事業を行っている社会福祉法人を指しています。
介護保険事業は、2ケ月遅れで介護報酬を国保連から受け取る仕組みになっています。
(利用者負担分の徴収は翌月に行っているので、丸々2ケ月分ではありません)
具体的な数字で説明すれば、年収3億円規模の特養でいえば、5千万円相当の収入は2ケ月後にならないと受け取れないということです。
それが「6カ月分前後の現預金、積立金などを保有」しているとなれば、1億5千万円ほど積み立てており、職員に還元されていないと指摘しているのが、今回の答弁の骨子というわけです。
単純に1億5千万円とだけ見れば、巨額に聞こえるかもしれません。
ですが今回たとえで出した、年収3億円規模の特養の施設維持管理費ってどれくらいになるか想像つくでしょうか?
今年は特に酷暑だから、新たにクーラーを新設した施設もあるでしょう。クーラーの設置だけで数千万円にも上るんです。
屋上防水だって、10年に一度憶に近いお金が、塗装費として必要になります。
大型の修繕でこれだけかかるのに、1億円規模の保有が巨額といえるでしょうか?
年収400万円の人が200万円の貯蓄を持つようなレベルなんです。
はっきり言って、すぐ飛んでいく程度の資金だと考えていただきたいです。
まして来年度、介護保険報酬改正が迫っている中で、もし報酬単価が下げられた場合、どこから修繕費を捻出すればいいというのでしょうか?
財務省は報酬改正前夜に、施設の財務状況を見て、なんとか下げられそうな要因探しをしているだけに見えます。本来なら資料内にもあるように、社福より営利法人のほうが収支差率が良好と出てるんですから、まず営利法人の職員給与改善を促すべきだと思うのですが?