ヌーソの皿の上

福祉とpc関係の記事です

ロストケアを観てきました

これは福祉職としてみなければならないと思い、お休みの日はほぼ外に出ない私も映画館に足を運びました。

lost-care.com

 

https://lost-care.com/assets/img/top/main_sp.jpg

 

 

  1. 一般的な感想

映画館館内に入り席を見てみると、今日は研修だったろうかと疑うくらいに、自分と同じ雰囲気をした人の集まりでした(笑) 観覧する方々はこれから始まる映画の上映にわくわくしている様子よりも、にじみ出ている勤勉さが館内を覆っていることが、研修会場のように感じさせたのだと思います。

 

私も映画館に来ること自体、もう何年ぶりか覚えていないくらいですが、この映画だけは観ておかなくてはと感じさせる内容ですよね。

 

映画そのもののストーリーなどはHPやSNSのほうでご確認いただければと思います。

その上で、この元介護職員が気になった点は、要介護状態の高齢者を演じた俳優さんたちにでした。有名な俳優さんたちばかりが出演されており、映画の中に一気に引きこまれましたが、如何せん要介護状態の方の動き一つ一つが気になりました。

 

・大腿部骨折で車いす生活をしている人はそうやって足は動かない

・その状態なら尿漏れはしない、そもそも一気にそんなに出ない

・興奮して脱糞してもすぐ脱糞だとわかるような出かたはしない

認知症状が中度以上の人の首はそんなに頻繁には動かない、表情にも特徴がある

・在宅なのにケアマネがちょっとも介入してこない

 

などは、同業者の方ならみなさんお気づきの内容なのだろうという感想をもちました。

 

それを踏まえた上で、柄本明さんが演じる高齢者はけた違いの演技でした。ほぼ本物の病状なのではないかと感じさせる演技に脱帽ものです。

ものすごい人の観察力がある方じゃないと、あそこまで細かい動きはできないだろうなと感じるほどでした。

 

また、先日母を亡くしたばかりの私は、残る親は父だけということもあり、殺人犯役の主人公には感情移入しすぎて大号泣でした。館内に響くほど鼻水をすすってしまいました(笑)

 

  1. 一歩踏み込んでの感想

介護殺人という問題が抱える、出口が見えない、答えがないことに疑問符を投げかけられ、何度も頭を抱えたくなる内容でした。

 

そしてその問題は、観る側個人の「死生観」にすら揺さぶりをかけてきます。

映画中には、暴力、介護者の無視などのネグレクト、介護する側の生活困窮が映りだされています。人が追い詰められた先で、さらに自分の死生観を問われたとしたら、介護殺人自体の問題点、着眼点にずれが生じます。長澤まさみさんが演じる検事役もその葛藤を抱えながら、事件と向き合います。

 

そのシチュエーションに私が思い出したのは、中学生のころ図書館で読んだブラックジャック(漫画)のドクターキリコでした。

 

ブラック・ジャック

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%83%E3%82%AF

手塚治虫による日本の漫画作品。『週刊少年チャンピオン』(秋田書店)にて1973年11月19日号から1978年9月18日号にかけて連載したのち、1979年1月15日号から1983年10月14日号にかけて不定期連載された。全242話。略称は『B・J』”

 

ドクターキリコは

「戦場で手足をもがれ胸や腹をつぶされてそれでもまだ死ねないでいる悲惨なけが人をゴマンと見たんだ」と語り、薬物など使い安楽死を遂行する医師です。

 

そして彼と、この映画とをリンクする言葉があります

「(ブラックジャックに対して)おまえは金しだいでいのちを助ける

 おれは金しだいで安楽死をとげさせてやる・・・ 似たようなもんさ」

 

という言葉があるんです。それは、介護とは?ケアとは?安楽死とは?そして殺人とは?もしかしたら同じ穴のムジナなのでしょうか?

 

そういえば、この殺人犯の介護士松山ケンイチさん役は白い服装が多く、対して人道を問う長澤まさみさん役も黒い服装をしています。

 

漫画ブラックジャックも、ドクターキリコは「白い死神」という異名があり、主人公のブラックジャックは黒い衣装をしているんですよ。

 

この50年前に描かれた漫画と、その当時から一向に話が前進しない「安楽死」問題に疑問符を投げかけているのだと映画から感じました。

 

  1. 最後に

福祉という職種を大きく分ければ、保育・障がい・高齢の三つに分けられます。(生活保護は別として)その中でも、高齢福祉が一番過酷な仕事だと私は思っています。

 

丁度先日、こんな記事も書きました

nu-so.hatenablog.com

 

  保育はこどもが大きく成るというゴール地点があり、障がい福祉は障がい者の人生全体を支援する福祉、それに比べ高齢福祉は人の人生という終着点での支援が仕事です。

行きつく先・ゴールは「死」というべきかもしれません。

 

ですが、ロスト(失う)するケアをしているつもりはないと、胸を張れる仕事がしたいと思いました。