ヌーソの皿の上

福祉とpc関係の記事です

福祉業界は専門家だらけ

 

1.専門家だらけ

福祉業界、特に介護業界って、右を見ても左を見ても専門家だらけだとは思わないでしょうか?

私は毎週、介護関係のニュースは目を通すようにしています。その一部をこのブログでまとめていますが、それらの記事を読むと、だいたい偉い学者さんをはじめ、社会福祉士精神保健福祉士などの資格を多く持ち合わせた人、介護業界に長く務めた人、はたまた親の介護に長年携わったタレントさんの果てまで、介護の詳しい人として紹介をされています。

となれば、私のように福祉業界をたらい回しにされ、ホームポジションがブレブレのアウトローなものは、介護を語れるのでしょうか?私まで専門家を名乗ればもっとめちゃくちゃになりそうですが・・・。

 

2.リスペクト

 私が介護現場にいたのは10年にも満たない期間で、そのほかはバックヤード的な仕事ばかりをしてきた人間です。ですが私は介護現場で「地獄」を見てきた人間です。私の現場時代ははっきり言って地獄でした。介護保険導入前から勤め、介護保険導入後3年目には施設収入が減ったため、人手不足の中でリストラにあった同僚すらいました。そのほかの同僚は、今なら不適切といえるような利用者処遇をし、会議となれば自分語りに忙しく、いつも夜勤明けで出席(下っ端ですから)している私などお構いなしに、日をまたぐまで会議は続きました。

 衛生的な手袋や、清拭用のタオル(ただの布の切れ端でした)も渡されず、リハビリも現場に見に来ない監督の看護師抜きで組み立ててきました。学校で習った知識でも全然足りない現場で、いくら勉強をしても時間が足りず、健康診断では血尿で検査にいつも引っかかっていました。その中、幾人もの利用者の暴言・暴力に耐え、記録を作るのにサービス残業は当たり前でした。でも孫の様にかわいがってくれる利用者や仲良くやれた同僚との時間は、今もかけがえのないものだと思っています。

 だから、聞きたいんです。専門家さんと名乗る人たちの中で、介護現場で「地獄」を見たことがある人はどれくらいいるんでしょうか?いくら制度やソーシャルワークに詳しい方々が介護の専門家だと言おうとも、今の介護現場で「地獄」をみている介護職員のことを、本当におわかりになっているのでしょうか?詳細な精査・リサーチに基づいたただの研究家ではないでしょうか?

 SNSで同じ介護業界の人たちが喧嘩をしているのを、目にすることがしばしばありますが、はっきり言って両者を愛おしくすら思えます。真剣に介護のことを考え、向き合った結果、微妙な匙加減が起きているだけだと思っています。いま現場に出ていない私などが語る資格がないと引け目にすら感じる、そんな必死な姿を、現代の専門家さんたちはどう感じてくれていますか?

 

 福祉の問題を「賃金」で終始していないでしょうか?

 

 

3.賃金問題の次に進むべき

有名紙の社説などを含め、福祉現場で起きている問題のそのほとんどは「賃金」問題であり、福祉問題の核心を語ったかのような記事で、賃金にふれないで終わるようなものは見たことがありません。

 そしてその次に出てくる問題は「質」の問題です。福祉職に就く者の、不適切な介護・保育が現場では跋扈(ばっこ)しているかのように書かれています。

 これには逆に質問したいくらいです、日本の産業別でみたときに医療・福祉に関わる人口はどれくらいかと。従業員数別でいえば卸売業・小売業・情報通信業に次ぐ第3位に位置し、その人口は80万人を超す規模の産業になりました(2016年時)

https://resas.go.jp/industry-all/#/map/13/13101/2016/1/7/1/-/1/1/1/-/-/2012/2016

 

そもそも犯罪は、人口比で考えるべきではないでしょうか?悪い行いをする者も確かにいるでしょうが、福祉の現場職員数十万人がみんな不適切なことをしているなどありえないじゃないですか?それほど堕落した産業だと吊るし上げたいのでしょうか?

ニュースを見ていると、福祉関係の犯罪者は1年経っても、その裁判の動向までこと細かくニュースになります。ですが、報道関係者の犯罪に関しては事件が発生した時以外に目にすることもなく、ましてやその裁判結果まで報道されたところを今まで見たことはありません。

 

 福祉従事者の質に関していえば、報道による誘導的なスケープゴート(意味:集団内の不平や憎悪を他にそらすため、罪や責任をかぶせられ迫害される人)、シャーデンフロイデ(意味:(独: Schadenfreude)とは、自分が手を下すことなく他者が不幸、悲しみ、苦しみ、失敗に見舞われたと見聞きした時に生じる、喜び、嬉しさといった快い感情)に近い問題だと感じています。だから、賃金を上げれば質が上がるかのようにまとめられることに大変憤りを感じるのです。今頑張っていることに目もくれず、質の悪い者が集まってるとでも言いたいのかと。

 

 だから、我々福祉従事者はもっと胸を張ったほうがいいと思うんです。人を助け、支援する職であることに。そのことを志した自分に。そこまで社会から迫害を受ける覚えはないんです。報道されている福祉従事者の質の問題は、ただの都合のいい研究結果です。その研究者たちが口をそろえている「賃金問題」はその人たちに任せ、これからさらに質を向上させるのは、現場職員であることを自負していいと思います。

 

 では、質の向上に一番大切なことはどんなことだと思いますか?

 

それは我々が職を続けていくことです。



 

4.長期勤続と作業の細分化

古い情報しか見当たりませんでしたが、平成16年度 事業所における介護労働実態調査結果(http://www.kaigo-center.or.jp/report/h16_chousa_02_25.html)によれば、全体の平均勤続年数は3.4年とありました。これは処遇改善加算が出される前ですので、あまり参考にならない情報ですが、一つの目安になると思います。

 

福祉従事者の職業というのは、どこまでいっても感情労働に終始します。

 

こちらの記事もご覧ください

nu-so.hatenablog.com

 

感情労働である以上、疲弊を伴い自分をすり減らす仕事ですよね。自分が潰れずに、その職をどうやったら続けられるようになるかと考えることが、質の向上につながるものと私は思います。

 

そのいい例が「週休3日」など職場から離れる時間を増やすことだと思います。休暇が取れるだけでなく、時給換算すれば働く時間が減ることにより、逆に賃金が上がる計算にもなります。

これが、賃金にこだわらないでほしい理由の一つでもあります。総体の賃金はこれ以上上げなくても、長く仕事を続けられる仕組みを考えるべきではないでしょうか?

 

福祉従事者の慰安的取り組みや、病休休暇への他の産業より手厚い福利厚生、そして仕事の細分化の促進をするべきだと私は思います。