ヌーソの皿の上

福祉とpc関係の記事です

居酒屋けんざん(28)ハンチバックを読んでみて

ハンチバック (文春e-book)

「今回は趣向を変えて、2023年芥川賞の「ハンチバック」(市川沙央さん著)について、はりえさんと感想を話してみたいと思います」。

 

「・・・」

 

「いやー、受賞時のニュースでの言葉が忘れられません。」

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「重度障害者の受賞者も作品もあまりなかった。今回、初だと書かれるんでしょうが、どうしてそれが2023年にもなって初めてなのか、みんなに考えてもらいたい」

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芥川賞に市川沙央さん「ハンチバック」 記者会見で「どうして2023年にもなって初めてなのか」 直木賞は2作品:東京新聞 TOKYO Web

 

「この言葉は身につまされる思いがしました。障がいの有無という問題が、2023年の現在までなんらかの影響があったのではないかと感じさせますよね~」

 

「・・・」

 

「実際に購入して読んでみましたが、その語彙力もさることながら、その表現方法も豊富で~~」

 

「おーい」

 

「?、はーい」

 

「おらを置いてきぼりだよ?」

 

「?、あ、失礼しました。紹介します。居酒屋けんざん女将のはりえさんでーす(じゃっじゃじゃーん)」

 

「紹介はいらんよ」

 

「・・・では、なにが気を悪くさせています?(汗)」

 

「おら本なんて読まないのに、ヌーソさん無理やりこの本を持ってきて、『すぐ読め』って。それで読んだと伝えたら、すぐこれ(収録)だろ?」

 

「いや、感想を話し合うから、私も読んで時間を置きたくなくて、それで早く読んでほしいと伝えただけじゃないですか~」

 

「だいたい、こんなえらい方(芥川賞のことかと)の本に感想をつけるだなんて、学のないおらには荷が重すぎるよ(涙)」

 

「そんな、内容に触れるわけじゃないですし、我々が話し、私のブログに載せる以上は福祉関係者の視線としてですね~」

 

芥川賞の文章と比較したら、うすっぺらい発言だね。」

 

「ぐうの音も出ない・・。」

 

「素人なのに文面を比較されるんだから、やめたほうがいいって。子どもの感想文じゃないんだから。」

 

「いえ、ネタ不足の私のブログには必要なことなんです。」

 

「だいたい、おらがうまく感想なんて言えると思ってるのかい?」

 

「なら試しに、はりえさんの感想から聞かせてくださいよ。」

 

「えー、(メモを取り出して)おらには題材が難し過ぎる。」

 

「・・・へ?それだけですか?」

 

「・・・障害を持っているってストレスなんだなと。」

 

「ふむふむ、それで?」

 

「健常者に知ってもらいたいんだな~と思った。以上です。」

 

「終わりですかー(涙)」

 

「おらがんばった。もう今日は終わり(笑)」

 

「終わらないでー。」

 

「じゃあ、今度は私の番です」

 

「私の場合、職歴や現場経験による体験がフィルターになってしまいます。

 

そのフィルターを通して見えたことは、副線というか同時並行した話に『お金』があるように思うんです。

序盤でも、ブラックカードの件(くだり)があったりしましたよね。

 

それを読んで、私は昔、知的障がい者が殺人事件を起こした事件の犯人の話を思い出すんですよ。

その犯人は、同じ同級生に好きな人がいたそうなんです。でも自分に自信のない犯人がどうやって、その相手に言い寄ったかというと、『宝くじが当たり、今後の生活は困らない』的な話をして口説いていたそうです。

 

また、私の数少ない知的障がい者現場経験の中で、利用者がこれに似たことを言ってる場に、居合わせたことがあります。その利用者は『宝くじが当たったから施設を出る』と支援員に話すわけです。

そんな事実はないのにです。

 

私は、障がい者といえど、うーん、それより障がい者だからこそと言った方がいいのかな、お金へのこだわりが強く、せめてお金くらいあればという願望が強い人もいると感じています。この本の主人公は、お金がないのではなく、逆に大金持ちのようですが。

 

主人公は巨額のお金を元に、男性支援員との関係を求めるわけですが、その時に掲示された金額がべらぼうなわけです。主人公としての表現としては、それくらいの価値のあることだと言い表したかったのかもしれません。

 

この男性支援者はお金に折り合いをつけたかのように承諾するわけですが、私にはこの男性支援者が、主人公に好意を持っていると感じていました。直接的な行動や言葉はないですが、仕事以外にも彼女らしきSNSアカウントを探したり、あえてそのシチュエーションにも赴いているんです。

 

そんな健常者の極々一般的(あえての表現です)心理描写を、主人公は感じ取れないわけです。感じ取れなくさせているのは、そのお金というフィルターのせいなんでしょうね。

 

最後には、その内容を薄めるような展開というか、意外な結果が書かれています。

 

でも、著者は主人公の幼さや、障がい者の憂いを描いていると感じました。」

 

「なんだい、そのわかったような言い方は」

 

「ええー」

 

「この本から感じることは、奥行きを感じさせない、感想をださせないようにしているように思えないかい?」

 

「え?」

 

「この本の主題は『ハンチバック』だろ?つまり『せむし』だろ?せむしなら有名な話があるじゃないか。」

 

「せむしが出てくる話と言えば、ノートルダムの鐘ですか?」

 

「おらたちの世代は、ノートルダムのせむし男で覚えているもんだよ。」

 

「せむし男は、ヒロインに水を飲ませてもらうことで、人間らしさを感じ取るシーンがあるんだけど、その内容への返し(オマージュのことかと)なんだろうさ。だからなぜそういう描写があるかなどが書かれていないんだろ?これは返しだからなんだよ。」

「だから、あの結末は・・・・」

 

「・・・、思ったよりちゃんと感想もってたんですね。」

 

「もう、おらと読書感想はやめてください。」