ヌーソの皿の上

福祉とpc関係の記事です

居酒屋けんざん(27) 絶望死

「今日は絶望死の話をしたいんです」

 

「あれ?介護予防じゃなかったのかい?」

 

「あ、それもうちょっと後に回します。ちょっと方向性まちというか」

 

「で、『死』?なに『死』だって?」

 

「絶望死です」

 

「なんだか知らないけど、嫌だねー、テーマが重いんだって。まだ夏だっていうのに」

 

「お盆は過ぎましたけど、夏はあんまり関係ないのでは・・・。」

 

「死ってね、統計上でいうと、病死及び自然死、不慮の外因死の2種類しかないんですよ。」

参照元

https://www.e-stat.go.jp/surveyitems/items/012010033#:~:text=%E6%AD%BB%E5%9B%A0%E3%81%AE%E7%A8%AE%E9%A1%9E%E3%80%81%E7%97%85%E6%AD%BB%E5%8F%8A%E3%81%B3,%E5%A4%96%E5%9B%A0%EF%BC%89%E3%80%81%E4%B8%8D%E8%A9%B3%E3%81%AE%E5%88%A5%E3%80%82

 

「ふーん、宗教っぽい話だね。」

 

「いや、宗教の話ではなくて、統計の話ですって(汗)」

 

「(だめだ、全然興味を示してくれない)」

 

「じゃあ、痛い死に方の話をします?」

参照元:医者が明かす「痛い死に方ランキング」ワースト50

https://gendai.media/articles/-/50215?page=3

 

「痛いのは嫌だよ。」

 

「痛い死に方の上位はやっぱりガンだそうです。ガンは強い痛みを伴うようですよ。」

 

「うわーやだねー。」

 

「えー、それだけですか?」

 

「そんなこと言ったって、うちの父ちゃんの死因はガンじゃなかったし、おらの姉妹にもガンの人はいないんだよ。」

 

「では・・。高齢者になると死因第1位だったこともある(※)肺炎も痛い死に方上位に入っているんですよ?」

参照元:高齢者の死亡原因

https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/tyojyu-shakai/shiin.html

 

 

※現在は一位ではないようです。

参照元厚生労働省

死因順位別にみた年齢階級・性別死亡数・死亡率(人口10万対)・構成割合

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/suii09/deth8.html

 

「肺炎って痛いのかい?」

 

「痛いというより、水中で溺れ続けているような息苦しさだそうです。」

 

「うわー、やだよー。おら、映画のタイタニックが大好きで、ビデオまで買ってみたからわかるんだよ、最期溺れる人はみんな苦しそうだ~。」

 

タイタニックは随分溺死するシーンがあったそうですね。」

 

「うんうん、ヌーソさんもあの映画観たのかい?」

 

「いえ、私はあの映画途中で寝てしまって全部観ていません・・・。」

 

「もったいない、おらのビデオ貸してやろうか?」

 

「いや、そもそもビデオデッキがありませんよ(困惑)」

 

「溺死が出てきましたが、『死』って言葉、他にもたくさんあるんですよ。」

 

転落死(てんらくし)

墜死(ついし)

浸死(しんし)

震死(しんし)

轢死(れきし)

煙死(えんし)

横死(おうし)

圧死(あっし)

情死

餓死

衰弱死

突然死

老死(ろうし) etc.

 

「どれがいいですか?」

 

「どれも嫌だよ、『自然死』にしてくれ、とにかく痛い苦しいは選びたくないよ。」

 

「(笑)ごもっともですね。」

 

「ここでやっと本題なんですが、アメリカでは『絶望死』という死因が問題になっているそうですよ。」

 

アメリカの平均寿命が低下し始めた大きな理由は、25歳から64歳の中年の死亡率が上昇しているからだ。ドラッグのオーバードーズ(過剰摂取)やアルコール性の肝臓疾患による死亡、そして自殺が増えている。これらの3タイプの絶望死のなかでオーバードーズがもっとも多く、2017年に7万人が犠牲になり、2000年以降の累計では犠牲者数は70万を超えている。”

引用元:

https://www.foreignaffairsj.co.jp/articles/202003_case/

 

アメリカの絶望死を取り扱う著書はたくさんあるんですが、簡単に言うと

①ドラッグ

②アルコール依存による肝疾患

③自殺

この3種で死んだものを『絶望死』と呼んでいるそうです。」

 

「どれも生きることの辛さから逃げだすために頼ったのが、ドラッグやアルコールであって、その逃げ道も一時のものだということなんでしょうね。」

 

「飲み屋でアルコール依存の話されてもね・・・。」

 

「あ、すみません・・・。」

 

「ギャンブルもそうなんだけど、薬物だろうがアルコールだろうが、それで人生の帳尻は合わないんだよ。」

 

「かといって、自殺は仕方がないとも思えないんだよね。その立場になったわけじゃないからなんともいえないけどさ。」

 

「みんな生きてて辛いから、安楽死を認めてもらいたいんだろうね。」

 

「私は安楽死反対派なんです。まず尊厳死のための安楽死を認めることは譲歩しても、ただ生きるのが辛いからで、安楽死は認めるべきではないと思っています。生きている意味は自分では決められないんですよ。だから死ぬことがゴールなのではないと思っています。」

 

「?それでは、絶望死は減らないよ?」

 

「(久しぶりに的を得たことを・・・)」

 

「私は福祉従事者で、人を救うのが福祉だと思っています。もし安楽死を認めないために、絶望死が増え続けたのなら、福祉の至らなさによるものだと、私は自戒するでしょうね。」

 

「この絶望死をはりえさんと話すと決めたときから、考えていたことがあるんです。」

 

「死を喜怒哀楽で例えると

怒り・・・憤死

哀・・・絶望死

楽・・・安楽死

とあるんですが、『喜び』だけがないなと。」

 

「だけど、人生からの解放により喜んで死ぬことが『自殺』であってはならない、と強く私は思うんですよ。」

 

「もし、喜びの死があるとすれば、絶望死の反対の『満足死』だろうと思うんですよね。」

 

「なにをいいこと言った風なことを・・・。」

 

「おら、100歳まで生きて死んだとしても満足はしないよ。」

 

「介護を受ける身になって、娘あたりに『早く死んでくれ~』と思われて、おらが死んだら家族に『やっと死んだ』と思われる、それこそ家族が”満足死”だろうさ。」

 

「え~~(涙)」