「年末が近づいてきましたね。」
「なんだかコロナにも慣れてきた一年だったね。」
「にしても、今日も行事の話かい?去年もこの時期行事の話したろうさ。」
「い、いや、あの、ネタ切れではありませんよ。年末だからこそ話したい内容があったからです。」
「はりえさんは、年間の行事で楽しい行事といえばなんですか?」
「そりゃ、この時期だもの正月だろうね。あとバレンタインか?」
「あ、クリスマスじゃないんですか?」
「おらの小さい頃は、クリスマスにプレゼントをもらう風習なんてなかったよ。」
「クリスマスに教会へ行ったらお菓子をもらえると聞いて、小さい頃姉と行ったことはあったけどね。」
「それより正月さ。珍しいものは出てくるし、親せきやら知らない人も来てにぎやかだったんだよ。」
「クリスマスはいい行事ですよね。自分の親以外の大人が、小さな自分のことを見ていてくれるなんて。本当、素敵な行事です。正月は昔とは様変わりしてきたってことなんでしょうね。お年玉くらいしか楽しみがなかったです。」
「では楽しくない行事といえばなんでしょうか?」
「・・・。」
「?はりえさん」
「豆まきだね・・・。」
「そうですよ、豆まきだと思いますよね。」
「おら、鬼が怖かったの覚えてるよ。保育園に鬼が来て追いまわされたよ。(プルプル)」
「(笑)私の幼稚園ではなかったんですよ。仏教の幼稚園だったからなのか、鬼は建物の中にはいませんでしたね。サンタさんは来ましたが。」
「では、クリスマスは園児が喜ぶから良しとして、なぜ豆まきってやるんでしょうね?」
「んー、なんでだろうね?教育の一環かい?」
「教育?では、何を教えてるんですか?」
「え?大人のいうことをきけーじゃないの?それは秋田のなまはげか?」
「ちょっと豆まきの起源に係る雑学の話でもしましょうか?」
「まず、節分って年4回あるのは学校で習ったと思いますが、覚えていますか?」
「いんや、まったく」
「節分(せつぶん、せちぶん)は、各季節の始まりの日(立春・立夏・立秋・立冬)の前日のこと。節分とは「季節を分ける」ことも意味しているそうですよ。」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AF%80%E5%88%86
「では、なぜ2月の節分だけ豆まきをするようになったかはご存じですか?」
「全然わからない」
「少しくらい考えてくださいよ。」
「2月3日は旧暦で言う大晦日なんですよ。新年の邪気払いのために行ったのが豆まきなんです。」
元は、中国由来の追儺(ついな)と呼ばれる行事がもとで、日本の文献では『続日本紀』「天下諸国疫疾、百姓多死、始作二土牛一大儺」(慶雲3年(706年)十二月晦日の紀事)にでてきた、歴史ある行事なんです。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%BF%BD%E5%84%BA
中国では疫鬼(えきき)とよばれるものを追い払う行事だそうです。疫鬼とは、鬼神あるいは妖怪、 疫病を引き起こすなどして、人間を苦しめる行疫神(ぎょうえきしん)とされているものもあるそうです。
「ふーん、コロナみたいなもんなんだね」
「確かに(笑)」
ちょっと脱線しますが、追儺に出てくる疫鬼と日本の「鬼」はちょっと違うんですよ。
鬼の由来は、おぬ(隠)が転じたもので、元来は姿の見えないもの、この世ならざるものであることを意味する、との説が古くからあるそうです。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AC%BC
この世ならざるものが出る時間、草木も眠る丑三時なんて言いますよね。
方位学で言う丑の方角、干支の丑・寅の時間(深夜の2時から2時半)のことなんです。
目に見えぬものを、無理やり描いたのが、牛のような角、虎のような牙と虎の皮の褌(ふんどし)や腰布をつけた「鬼」というわけなんです。(諸説あります)
「穀物には生命力と魔除けの呪力が備わっている」という信仰、または語呂合わせで「魔目(豆・まめ)」を鬼の目に投げつけて鬼を滅する「魔滅」に通じ、鬼に豆をぶつけることにより、邪気を追い払い、一年の無病息災を願うという意味合いがあるそうですよ。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AF%80%E5%88%86
「ふーんそうなんだね。よくわかったよ。今日はこれで終わりかい?」
「いえいえ、まだ本題にたどり着いてませんよ。追儺に話を戻しますね。」
この追儺、方相氏と呼ばれる悪鬼を追い払う役、つまり現代で言う豆をまく人がいたんですが、目に見える鬼として追われるようなかたちに儀式が変わりました。
方相氏には従事する侲子(しんし)という黒い衣服をまとった童子がおり、昔から子どもがその役をやったそうですよ。侲子には「いい子」という意味もあるそうです。
http://www.heianjingu.or.jp/shrine/schedule.html
「ふーん。それで何が言いたいんだい?」
「つまり、子どもを脅かすような行事ではないんですよ。」
「それはそうかもしれないけど、この追儺が豆まきに変わってきたように、行事っていうのは様変わりするものなんじゃないのかい?」
「クリスマス、ハロウィンもそうですけど、日本人は楽しいから等の理由だけで、行事を取り入れたり、その行事を様変わりさせますよね。文化の理解をしようとするなら、イスラム教のメッカ(お祈り)やラマダン(断食)などを取り入れてもいいはずですよ?」
「それはメジャーじゃないからね。それに楽しそうじゃないからかね?」
「クリスマスもそうですが、夢を持たせるなら無理やり保育園や幼稚園にサンタが現れるというのも、私には理解ができないんです。子どもたちは園長先生や職員が扮(ふん)していることを一瞬で見破るんですから。」
「なら、誰のための行事なのか?と問いたいんです」
「クリスマスはそうかもしれないけど、豆まきは伝統行事だからね」
「いえいえ、その伝統をさかのぼっても、子どもを脅かす意味合いは出てきませんでしたよ」
「楽しんでいるのは保育園や幼稚園側の先生だけじゃないのかと思うんです。はりえさんのおっしゃる通り、伝統なら伝統どおりやればいいはずです。」
「10月にニュースとしても取り扱いましたが、アメリカの託児所で、ハロウィンマスクをした保育士が子どもを脅す動画が拡散したため、4人解雇されたそうです。」
https://nu-so.hatenablog.com/entry/2022/10/15/233000
https://news.yahoo.co.jp/articles/688ec9d431601b5be866fc3cd3692eb8c7061337
「日本でも子どもの権利意識が高い親は多くなってきました。意味合いもなくただ脅かしたり、行事を催す側のエゴだけで行うような行事などは、考え直すべきだと思います。」