ヌーソの皿の上

福祉とpc関係の記事です

小規模保育所と保育園の事業展開について

3~5歳児対象の「小規模認可保育所」、政府が設置検討…多様なニーズに対応 7/31

読売新聞

“政府は、原則0~2歳児を対象としている「小規模認可保育所」について、3~5歳児を対象とする施設の設置を認める方向で検討に入った。保護者の多様な保育ニーズに応えつつ、待機児童の解消を図る狙いがある。”

3~5歳児対象の「小規模認可保育所」、政府が設置検討…多様なニーズに対応 : 読売新聞

と、政府は小規模認可保育所規制緩和を行っていくようです。

 

 

 

1.ひと昔前、小規模保育所の運営シミュレーションをした結果

 

この小規模認可保育所は、社会福祉法人が運営しているところが多くないはずなんです。

具体的な数字を出してみようと思ったんですが、ネットを調べてもすぐには出てきませんでした。

 

そのため、ちょっと経験則による話になってしまいます。すみません。

かれこれ15年前、ベテラン保育士が多くなってきて、それに見合う役職が準備できない問題が、私の勤める法人で問題になりました。その打開策として「小規模保育所」の運営シミュレーションの試算を上司に命ぜられました。

 

保育園って、今なら職務分野別リーダーなどが処遇改善費で賄われるようになりましたが、その昔は、園長以下、事務や調理を除けば「主任保育士」しかありませんでした。

もちろん、園によっては副主任という役職を作ったり、乳児リーダー、幼児リーダーなどの役職を作っている保育園もありました。

それでも、作れて4つくらいの役職しかないわけです。一つの保育園の保育士はだいたい20人くらいいるのに、たった4つの席を奪い合うような状態だったわけです。

であれば、園を増やし「主任保育士」の席を増やす方法として、「小規模保育」に着目し、事業拡大を目論みました。ですが、シミュレーションした結果、運営は到底無理でした。

普通の保育園よりも、保育士を手厚く配置できるように見えますが、一番の問題はその保育士の年次有給休暇消化問題でした。普通の保育園より保育士の分母が小さいため、職員処遇が低下してしまうんです。かといって加配できるほどの余裕もないというのが結果でした。

 

今、実際「小規模保育所」を運営しているところに話を聞いてみると、相当細かい勤務表(時間・分で分けるようなイメージ)を作成し、利用する側の園児・保護者にも利用時間に対する取り決めが厳格だと聞きました。

 

でもそうでもしない限り、小規模保育園の運営は一般の保育園よりも厳しいことがずいぶん昔からわかっていたので、社会福祉法人が小規模保育園事業を拡大しなかったんです。

 

 

2.保育園を小型化するメリット

 

それでも、保育園の定員を少なくした方がメリットが多いんです。

①定員・保育士の分母が小さくなる

介護や障がいの分野におけるグループホームと同じ考え方で、大きな施設を行うより利用者・園児を集めやすく、必要な保育士数も確保しやすいというメリットがあります。

私のシミュレーションの話の様に、職員処遇がさがるというデメリットと、一人でも登録園児が減ったり、保育士が減ればそれによる減算も大きいという問題もあります。

 

ですが地方の特養の様に、利用者はいるが介護者がいないため、ベッド稼働率が下がるという問題も、今後の保育園で起きないとはいえません。永続的な事業継続のためにも、今後減りゆく、若い保育士を確保しやすいというメリットもあるといえます。

 

②小規模保育と通常の保育所との事故発生率

https://nu-so.hatenablog.com/entry/2023/08/04/203000

この記事の表を再掲載しますと、

①  死亡及び負傷等の事故 からの抜粋版

 

 

合計数

施設・事業数(時点)

事故の発生確率

幼保連携型認定こども園

483

6,475

7.459%

幼稚園型認定こども園

25

1,307

1.913%

保育所認定こども園

74

1,354

5.465%

地方裁量型認定こども園

0

84

0.000%

幼稚園

36

9,111

0.395%

認可保育所

1,190

22,541

5.279%

小規模保育事業

23

5,930

0.388%

家庭的保育事業

1

848

0.118%

居宅訪問型保育事業

0

22

0.000%

事業所内保育事業(認可)

8

674

1.187%

一時預かり事業

1

10,236

0.010%

病児保育事業

0

3,791

0.000%

子育て援助活動支援事業
(ファミリー・サポート・センター事業)

2

964

0.207%

子育て短期支援事業
ショートステイ・トワイライトステイ)

0

1412

0.000%

ショートステイ918 か所
・トワイライトステイ494

放課後児童健全育成事業
(放課後児童クラブ)

565

26,683

2.117%

企業主導型保育施設

24

4,370

0.549%

認可外の居宅訪問型保育事業

0

6,502

0.000%

2,432

 

 

※詳細性を欠くため、地域単独保育施設・その他の認可外保育施設分の29件を差し引く

見ていただきたいのは、通常保育園と小規模保育園の事故率です

 

保育園     5.279%

小規模保育事業 0.388%

 

と、小規模保育園のほうの事故発生率が、通常保育園の10分の1以下だということです。

今、3歳児だけでなく、乳児の保育士も加配する補助金がでましたが、ただ保育士を加配し、保育士の目の数を増やしても、事故率は下がらないという問題があると思います。

 

そりゃそうですよね?保育士の人数が多ければ多いほど、「自分じゃない誰かが見ている」という人頼みになりがちで、肝心の園児への注視が減るというのは。

実際、先日の保育園園児置き去り事件も、園全体の園児を全保育士で見ていたからこそ、園児の取りこぼしがあった事件でした。

 

少数の保育士が、緊張感をもって保育をしているほうが、事故が少ないというのがこの数字に表れていると思います。

 

③限定感

マーケテイング用語でスノッブ効果という言葉があります。

参照元ウィキペディア

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%8E%E3%83%83%E3%83%96

簡単に入手できるものよりも、希少性や限定性が高いものに魅力を感じる心理

のことを言います。

 

つまりは、120名や150名定員の保育園よりも、20名以下の保育園のほうが「限定感」があるように感じないでしょうか?

 

例えば、150名定員の保育園と、15名定員の小規模保育園が近隣にあったとします。

150名定員はいつでも入れそうなのに対し、15名定員となれば入るのが困難に感じますよね?保護者の思考としても、15名定員の保育園に試しに入ってみて、子どもが環境にあわないようだったら150名定員の保育園に移ると考えたほうが、つぶしがきく、保険になると考えるわけです。

 

福祉業界もお得感で推し量られる時代になったといえないでしょうか?

 



3.生き延びる保育園になるために

以上から、小規模保育園を運営する方が今後はメリットが多くなるといえないでしょうか?

 

かといって、今既存の保育園を抱え運営している法人は、この出生率も下がってきている中、おいそれと小規模保育園を開くことは難しいですよね。

 

では分園というブランチを作るということも考えてみてはどうでしょうか?

競合する事業所と画一的な事業展開では、今後は生き抜けないかもしれません。小さな地域だけに目を奪われず、新天地を探すという方法もあるのではないでしょうか?

 

それでも分園をすれば、減算になるというデメリットもありますよね。そのため、分園はよくよく地域性を分析するのが必要になってくると思います。

 

“分園を設置する施設の場合、「基本分単価」、「処遇改善等加算」、「所長設置加算」については、中心園と分園それぞれの定員区分を基に単価を計算します。その上で、分園については、その合計額の「10/100」を差し引いた額が適用されます。また、その他の加算については中心園と分園の定員を合計した定員区分を基に単価を計算します。”

https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/faq/pdf/kouteikakaku/zenbun.pdf

 

 

建築費が高くなっている中、新たな小規模保育園開設は難しい、分園するにも場所がないという、手づまりを感じている保育園もあると思います。

そんな保育園は、既存の保育園をもっとプラットホーム化するという考え方もあります。

 

時代の機運は、サブスクではないでしょうか?高齢者施設でいえば小規模多機能型(ある意味サブスク)が増えてきています。高齢者福祉事業の小規模多機能というのは、泊まる・通う・派遣するという3つのサービスが月単位で定額利用できるサービスです。

今後デイサービスも、通うほかに、訪問介護も派遣してくれるサービスになっていきます。

 

これを保育所で置き換えれば、ベビーシッター事業との併用を模索するというのも手ではないでしょうか?病児保育はできなくても、預かり料が安い、プログラムのない一時預かりベビーシッターを派遣、もしくは収益事業として行う、というアイディアです。

 

保育園の小型化だけでなく、事業展開の方法がまだまだ見つかるかもしれません。

保育園の事業展開でお困りごとなどや、ご相談があればご連絡ください。