「結局福祉事業というのは、社会的弱者の方々をサポートすることが本業であって、そこに優劣など存在しないじゃないですか。なので、どのサービスの利鞘が多いか等の話には到底ならないんですよ。」
「ビジネスの基本に関わる話じゃないの?人件費率50%を越えるような事業が、利益をあげその利益分を事業に再投資できる?建物と一緒でしょ?減価償却費の積立も出来ていない建物が、補修修繕もせずにたってられる?資産価値も下げずに。」
「(むむ、わかったふりして・・)建物は立地条件と場所代にも依るじゃないですか、家屋の価格は下がっても土地価格が上昇すると見越した場合、無駄に積立てないという考え方もあるでしょ。」
「揚げ足取る気?土地価格上昇で撤退まで考えて、福祉事業を展開するつもりなの?それこそ福祉事業を何だと思ってるのよ。」
「(ぬぬぬ)部長が福祉やらビジネスやら建物を一緒にするからでしょ。建物だけで福祉ビジネスの縮図のようなことでまとめるからですよ。」
「ヌーソの言い方をまねて言ったのよ。ずっと言いたかったのよ、その言い方が癪にさわるって。やっとわかったでしょ。」
「もう怒りました。早退させていただきます。」
「理由なく上司の許可がない早退は欠勤扱いよ、それでいいの?」
「それくらいわかってますよ。それより2022年4月からパワハラ防止法が中小企業でも施行されましたよ。」
「労働局からパンフきてますー。」
もう
もー
この話のちょっと前
「前回の続きですが、社会福祉法人・NPO法人・一般社団法人、どの団体でも、大きく収益はあげることはできないんですよ。そもそもどのサービスにも報酬単価には上限があるからです。」
「団体で報酬単価の上限に変わりはないってことよね?」
「そうなんです、報酬単価が一番の問題なんですよ。報酬単価は医療で2年に一度、介護保険は3年に一度見直しが行われ、加算の在り方なども大きく変わる場合があります。保育や障害者総合支援法は大きな単価の変化はないにしろ、近年、単価そのものが大きく上昇するようなことはありません。」
「それくらいはわかってたわよ。それほど事業を左右するものなの?」
「確かに事業撤退に追い込まれる程の単価改正はありませんでしたが、介護保険導入時、大きな拡大した居宅サービスなどは、2006年以降の単価改正後、現在に至るまでには大きな事業の拡大はされていないんですよ。」
2000(H12)年 2005(H17)年 2016(H28)年
訪問介護 11,475人 24,795人(216%) 33,477人(291%)
訪問看護 4,693人 5,417人(115%) 8,839人(188%)
通所介護 7,133人 17,245人(241%) 23,017人(322%)
通所リハ 4,594人 6,238人(135%) 8,100人(171%)
要介護者数 256万人 409万人(159%) 610万人(238%)
「報酬単価には限界がある、事業を拡大をするには定員を増やすしかない。定員を増やすには職員の採用も必要になる。純利益を増やすにはどこまでも比例的に大規模にするしかない仕組みなのよね。」
「その通りなんです。どうしても報酬単価の中だけで、利鞘を増やせる仕組みにはなっていないんです。
」
「ならどうすればいいの?福祉の在り方も地域差がある、職員の給料確保の補助金はあっても、定員が100%近くの利用がないで処遇改善交付金を申請すれ逆に赤字になる。思うような事業転換はできないわよね?」
「福祉ビジネス内で全て完結して収益を出そうとするからなのではないでしょうか?福祉分野において報酬単価があることは事業を安定的に運営できる半面、あらゆる規制を同時に受け入れることになります。決してその規制が悪いといってるんじゃないですよ?ルールに則ることは、ルールに縛られるということです。福祉ビジネス+で物事を考えなければならないんですよ。」
「DXとか?」
「もちろんDX化は、マンパワー確保が急務の今後の日本では必須な内容ですよね。でもDX自体で収益を増やすことは難しいと思うんです。事業展開を考える上では、やはりリーチを伸ばすしかないんですよ。報酬単価以外で。」
「報酬単価以外で?別事業をやるってこと?モノを売ったり作れってこと?」
「いえいえ、そういうことではありません。同じ経路の事業を展開するしかないんですよ。」
「介護分野であれば、介護保険外サービスですよ。」
例えば
訪問理容
食事の宅配
病院内送迎
生活支援以外での家事支援及び代行
身体介護以外での外出支援
相談支援(介護保険外)
等が挙げられます。
「あること自体は知っているけど、事業展開するマーケットとしては決して大きな分野とは言えないわよね?」
「それもおっしゃる通りです。ただ、日本の社会保障費のあり方から言っても、問題になっている要支援の制度廃止はいつかは導入される問題だと思うんです。そうなると、この介護保険外サービス分野が担わなければならない人たちが増えていくということだと思うんですよ。」
「それも一理あるわね。」
なんて話してたのに・・・・。