転職先を見極める
年末が近づきましたね。
12月のボーナス(勤勉手当)をもらってからやめようと考える人は多いそうです。
福祉業界は、転職をあっせんする話がネット上でいろいろ出ていますね。
今回はそんな心機一転、新たな職場での活躍を夢見ていらっしゃる方々に、ちょっとだけ待ってほしい、という話です。
転職を止めたいのではなく、転職先を見極めてほしいんです。
その見極め方なんですが、自分の会社の退職金制度はどのようになっているかご存知でしょうか?
ちょっと調べてほしいんです。調べ方は、社福であればWAMネットにお勤め先の財務状況が公開されているはずなので、貸借対照表の退職金給付引当資産という欄を見て、数字が入っているか確認してください。その科目に数字が入っていれば、退職金は出る職場と考えてよろしいかと思います。
その上で、福祉医療機構に退職金をかけているかを調べてほしいんです。
福祉医療機構とは
ちょっと聞きなじみのない名称かもしれませんが、上記で財務情報を公開しているところを紹介しましたが、これも福祉医療機構なんです。
正式名称は、独立行政法人福祉医療機構(Welfare And Medical Service Agency 略してWAM 訳は福祉医療機構)といいます。
平成15年10月1日に福祉の増進と医療の普及向上を目的として設立された独立行政法人
で、その事業内容は
①社会福祉施設及び医療施設の整備のための貸付事業
②施設の安定経営をバックアップするための経営診断・指導事業
③社会福祉を振興するための事業に対する助成事業、社会福祉施設職員などのための退職手当共済事業
④障害のある方の生活の安定を図るための心身障害者扶養保険事業
⑤福祉保健医療情報を提供する事業
⑥年金受給者の生活支援のため、年金住宅融資等債権の管理・回収業務
等とされています。
引用元:https://www.wam.go.jp/hp/goannai-tabid-62/goannai-goannai-tabid-78/
このうち、
③社会福祉を振興するための事業に対する助成事業、社会福祉施設職員などのための退職手当共済事業
が今回の話であり、その内容は
社会福祉法人の経営する社会福祉施設等、特定介護保険施設等及び申出施設等に従事する職員が退職した場合に、その職員に対し退職手当金の支給を行う事業
社会福祉施設等職員に係る退職手当金の支給に充てる財源は、「共済契約者(経営者)」が負担する掛金と、「国」・「都道府県」の補助金によってまかなわれます(ただし、特定介護保険施設等職員及び申出施設等職員については、原則として公費補助はありません)。
引用元:https://www.wam.go.jp/hp/guide-taisyokuteate-outline-tabid-229/
福祉医療機構の退職金制度について
福祉現場で働いている方々は、直接福祉医療機構へ支払いをしていないので、実感がわかないかもしれません。でも職場の総務は、毎年異動などの変動も含め、会計担当に概算を出しているはずです。
その額は、職員1人あたり単位掛金額は、最低で44,500円を支払っています。
● 特定介護保険施設等職員 44,500円×3
● 申出施設等職員 44,500円×3
社会福祉施設職員等退職手当共済制度の掛け金
引用元:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=336CO0000000286
さてお勤め先が、特養や老健の方々は、上記の区分けで言えばどの施設になるでしょうか? 社会福祉施設等職員と 特定介護保険施設等職員では大きく10万円違いますね。たいしたことなさそうに思う方もいるかもしれませんが、職場は20人~50人位の職場ですよね?つまりこの差だけで、200万円から500万円の差になります。つまり人一人分の人件費にまでなるというわけです。
これが、退職金がある職場、ない職場の差につながります。社福だからと言って必ず福祉医療機構の退職金を申出しているとは限らないので気を付けてください。
この答えは以下の表になります。
引用元:https://www.wam.go.jp/hp/wp-content/uploads/kyousai00.pdf
保育園で働いている人は、 44,500円
特養や老健で働いている方は 133,500円
となるんです。
同一法人内に保育園と特養がある場合には、同じ法人職員だったとしても退職金の掛金の差があることを覚えておいてください。きっと、特養から保育園へ異動する人はいても、保育園から特養などに異動する人は少ないはずです。
ただし職場を異動しても、異動そのもので退職金をもらう額が、変動するわけではありません。掛金が変わってもです。これがこの退職金の特徴でもあるんです。
転職先には福祉医療機構の退職金を掛けているか調べよう
これまで、異動先がかわっても退職金をもらえる金額は変わらない話をしてきました。
実はこの退職金、違う社福に異動しても掛けることができるんです。
もちろん、別運営の社福であってもです。
本来なら、一つの職場をやめてしまった時点で退職金は支払われますが、この福祉医療機構の退職金の場合、退職金を受け取らないで、転職した先でも掛け続けられるんです。
退職金は、掛けてきた掛け金の年数が長ければ長いほど、受け取れる退職金が高くなります。今の職場をやむを得ず辞めることになっても、退職金の掛け金だけは保有したまま転職が可能だということになります。
詳しくは以下のサイトの合算制度をご覧ください。
参照元:https://www.wam.go.jp/wamappl/tkfaq.nsf/vQA/C723BA4462F24366492583C3000DC54D?Open
”合算制度とは、通常の転職に対応するもので、一定の条件を満たして共済契約者間で転職すると、転職前後の被共済職員期間を合算できる制度です。”
最後に
転職先を調べるときには、月給だけでなく賞与額、社保などの福利厚生のほかにも、退職金制度はなにを使っているかについても調べ、よく吟味してください。
そして、その職場を辞めることになっても、全部を放り投げるような辞め方をせず、合算制度の利用をしたい旨を伝えて辞めることが、賢い退職の仕方といえます。