ヌーソの皿の上

福祉とpc関係の記事です

社会福祉法人啓真会 元理事長・元園長の特別背任について

先日、このようなニュースが報道されました。

 

社会福祉法人の元理事長 特別背任容疑で3回目の逮捕

https://www3.nhk.or.jp/lnews/niigata/20220511/1030021050.html

"新潟市で保育園などを経営する社会福祉法人の元理事長が、法人の資金およそ960万円を無断で口座から引き出したとして、特別背任の疑いで警察に逮捕されました。

元理事長は、資金をピアノの購入代にあてたなどとして、これまでに2回逮捕されています。”

 

引用元:NHK

 

 

社会福祉法人啓真会(新潟市西区)の資金を私的に利用した容疑で、元理事長の男性を3回目の逮捕

"新潟西警察署によると、2017年4月3日から同年10月27日までの間、社会福祉法人啓真会の当時理事長だった容疑者の男性が、自己が管理していた宗教法人の利益を図る目的で、2018年5月31日から2020年1月6日までの間、21回にわたり959万5,000円を、啓真会の管理する預金口座から支出して、男性(容疑者)の管理する口座に入金し、啓真会に財産上の損害を加えたもの。”

引用元:日経

https://www.niikei.jp/339060/

 

 

とありました。

この事件内容についてまとめていきます。

 

 

 

 

 

これまでの経緯

 

最初は、2020年の市の改善勧告

"新潟市は25日、同市西区大友の社会福祉法人「啓真会」で、元理事長らが多額の法人資金を不正利用したなどとして、社会福祉法などに基づく改善勧告をしたと発表した。総額は1億1500万円に上り、同法人は元理事長らへの損害賠償請求や刑事告訴などを検討する。”

引用元:20208月 毎日新聞

https://mainichi.jp/articles/20200826/k00/00m/040/020000c

 

この時に、3つの容疑がかけられていました。

<1>元理事長が14年度~20年1月にかけて179回にわたり、計1億601万円を無断で法人口座から引き出した

<2>元保育園長が、保護者らから集めた実費徴収金の一部の239万円を自宅に持ち帰った

<3>元理事長と元保育園長、その親族が14~19年度にかけ、自宅のグランドピアノを購入

 

これに対し、今年の初めから容疑が固まり

 

<1>は2022224日、新潟市西区在住の僧侶の男性(53歳)と同所居住でその父親である無職の男性(85歳)を、社会福祉法違反(特別背任)の容疑で逮捕

<2>2022316日に、法人の口座から合わせて164万円を引き出して私的に流用し、法人に損害を与えたとして特別背任の疑いで再逮捕

 

そして、この3つ目の容疑で今回逮捕となったというわけです。

 

この元理事長は浄土真宗本願寺派の僧侶だったようで、元保育園園長はその息子にあたります。

親族とも出ているので、役職者には親族がいる、まさに親族経営の法人だったようです。

 

 

ピアノの問題は難しくはなかった

恐らく今回の逮捕は、一連の容疑の中でも一番明白な容疑だったように思えます。

そもそもピアノで一番高いグランドピアノといえども、相場は200万円前後と言われています。どれほど高級なピアノを購入しても、960万円までなるとは思えません。つまりは、あまつさえ自宅用のピアノなのに付加がかかっているように思えるんです。例えばのちに社会福祉法人に納品、寄付する予定だったとしても、購入者がマージンを取る典型的なやり方なんです。それも大げさすぎるくらいに。

 

それよりも、問題だったのは

<1>元理事長が計1億601万円を無断で法人口座からの引き落とし。

<2>保護者らから集めた実費徴収金の一部の239万円。

が思いのほか少額でしか容疑がかけられていない状態にあります。

 

未収金と実費徴収

ピアノは買ってしまえば、その実物があるので動かぬ証拠になります。固定資産台帳という帳簿にも処理されなければならないものなので、ほぼ動かぬ証拠になります。

問題は、帳簿でも明確に確認がとれないものです。

WAMネットで財務状況を2018年から見てみました。

https://www.wam.go.jp/wamnet/zaihyoukaiji/pub/PUB0200000E00.do

 

実は事業活動計算書・資金収支計算書上はほぼ適正な会計処理をされています。

ですが、新潟西警察署捜査2課は”多額の未収金の計上”があったとしています。

 

2018年と2019年の未収金を見てみましょう。

 

2018年 未収金 83,772,358

2019年 未収金 90,233,878

 

となっています。これは額として大きいか小さいかお分かりになるでしょうか?

実は会計に携わる者でも、問題ないと思ってしまうんです。

それはなぜかというと、この法人は 特別養護老人ホーム「新潟あそか苑」を運営しているからです。

特養内にはショートステイ・デイサービス・居宅なども併設されています。

介護保険施設である以上、介護保険収入は国保連請求してから、2~3ケ月遅れて振り込まれることになります。つまり、年度でみると未収金をたてなければなりません。

新潟あそか苑のひと月の介護保険収入は3000万くらいですから、その2~3ケ月分となれば、大雑把に8000万~9000万の未収金は立てるのが通常の会計処理なんです。

 

注視しなければならないのは、拠点区分であり、新潟あそか苑の事業未収金(利用者からの実費徴収も含む)は

 

2018年 76,047,826

2019年 70,759,244

となっています。どういうことかというと、8000万~9000万の未収金は姉妹施設である、保育園の大友中央保育園がたてている未収金なんです。

 

保育園は介護保険収入ではなく委託費収入のため、このような多額の未収金をたてる必要はないんです。

 

この保育園は定員40名の施設で、年間収入は9000万程度なのに、9000万の未収金をたててしまっているので、貸借上では次期繰越活動増減差額が赤字になってしまっているんです。

本来この園の次期繰越活動増減差額は27千万円くらいあることになっています。

 

もちろんこれは、容疑者である元理事長らに、のちに返金を求めるため法人側があえて未収金として処理した。もしくはあえて特別損失として処理しなかったためかもしれません。

ですが、それでも注記に記載が必要な内容ではないでしょうか?

ブラックボックス

 

改めて、社会福祉法人の未収・未払はどうもブラックボックス化されやすい問題だと感じてしまいます。

 

このような記事も書いていますので、ご覧いただければ

 

nu-so.hatenablog.com