読売新聞
"葛飾区の私立認可保育所で、2017年度以降の5年間にわたり、区から支給されていた運営費が1000回以上にわたって不適切に使用されていたことがわかった。職員の私的な飲食や他の施設の物品購入などに使われていたといい、総額は約6200万円に上る。すでに全額が返還されており、区では会計検査の強化などの対策を講じたという。
~中略~
その結果、総務などを担当していた男性職員(諭旨退職)が、私的な飲食費用に充てていたほか、区外の保育施設で使う電化製品や玩具を購入していたことが判明。さらに、勤務実績がない職員への給与支払いなどの事例が明らかになった。
~中略~
区が保育施設に行う検査は施設の安全性のチェックなどが主で、経理まで踏み込まないことも多かったため、区は今年度から、全私立保育施設に年1回、会計に関する帳簿なども確認することを決めた。"
https://www.yomiuri.co.jp/local/tokyo23/news/20230710-OYTNT50216/
東京すくすく
" 法人と元職員は、利息分を含めた約7300万円をすでに葛飾区に返還した。区は再発防止のため、本年度から区内全ての私立保育施設に年1回の指導検査を実施することにしている。"
https://sukusuku.tokyo-np.co.jp/hoiku/72089/
かつしか堀切保育園を運営している葛飾会は特にコメントは出していないようです。
いつも社会福祉法人会計に関するニュースは目を通すようにしています。ですが今回は、額が額なのに法人・所管庁がなぜ気づかなかったのか気になり、会計を調べてみました。
使われたであろう科目は?
大体、一年ベースで約1200万円でしょ?
家計に置き換えれば、月16万円の収入のある家で、1万円が抜かれていたらさすがに気づきませんかね?
”私的な飲食費用に充てていたほか、区外の保育施設で使う電化製品や玩具”
飲食費用だからと言って、あからさまに”給食費”や”会議費”で落とすわけはないでしょうから、追うのは難しそうです。
ということでまず、電化製品を取り扱う科目であろう、消耗器具備品費を見てみます
消耗器具備品費
この法人では、事務消耗品費の科目は使っていないので、電化製品があるとしたらすべてこの科目になります。
2022
予算3,300,000
決算3,802,141
差額-502,141
2021
予算3,728,213
決算5,367,358
差額-1,639,145
2020
予算2,500,000
決算9,176,931
差額-6,676,931
2019
予算1,350,000
決算2,266,507
差額-916,507
2018
予算2,500,000
決算1,933,789
差額566,211
となっていました。
どうお感じなりますかね?
近年の物価高騰は2023年からとすれば、2022年度分に関しては許容範囲だったとして、
2021年、2020年あたりに、100万円~400万円くらい含まれているような額に見えますよね。
つづいて人件費です。
人件費
記事には
”勤務実績がない職員への給与支払い”
とありましたよね。
人件費は額が大きいので、含めやすいと思います。実際どうなっているか見てみましょう。
2022
予算116,200,000
決算128,103,989
差額-11,903,989
2021
予算144,893,392
決算126,720,324
差額18,173,068
2020
予算93,700,000
決算94,228,229
差額-528,229
2019
予算85,600,000
決算90,934,554
差額-5,334,554
2018
予算72,700,000
決算89,498,087
差額-16,798,087
となっています。
明らかに変ですよね?
2022年・2021年の人件費は、予算以上に人件費がかかっていることになっています。
コロナ真っ只中で、十分な開園も難しかった時にも関わらずです。
しかも、年間で2~5人近くの人を多く雇ったかのような額になっています。これは超過勤務手当で膨れ上がった金額とは言い難いんですよ。
でも、2019年・2018年にも同じ状況があったということを覚えておいてください。
その他の怪しい科目
そのほか、電化製品を買ったり、玩具を買って他所に回すような科目も見てみます。
教育指導費・渉外費は以下の様になっています。
教育指導費
2022
予算500,000
決算362,500
差額137,500
2021
予算2,076,871
決算456,000
差額1,620,871
2020
予算800,000
決算886,703
差額-86,703
2019
予算750,000
決算768,376
差額-18,376
2018
予算720,000
決算707,772
差額12,228
渉外費
2022
予算650,000
決算5,000
差額645,000
2021
予算300,000
決算85,627
差額214,373
2020
予算300,000
決算765,222
差額-465,222
2019
予算400,000
決算262,460
差額137,540
2018
予算260,000
決算244,750
差額15,250
この二つの科目にしては額が大きく感じますが、大よそ予算通りの執行という印象は感じないでしょうか?
となれば、人件費や消耗品費で前期末を触っているかも気になりますよね?
続いて前期末に触っていないか見てみます。
当期資金収支差額合計
2022 4,327,466
2021 44,820,664
2020 -4,177,594
2019 380,646
2018 23,218,882
赤字どころか、黒字状態なことがわかりますよね?
5年間で6200万円ものお金が不正として動いたのに黒字なんですよ?
以上からの総括
上記から
人件費→私的な飲食
消耗器具備品費→電化製品
に使われたという印象を受けます。
そして、いくつか不可解なことが出てきました。
- 人件費はコロナ前から、予算より決算で大きく支出されている(正職員数人分)
- 保育材料などは、予算すら組んでいないのに、いきなり数百万円の額が決算で支出されている
- 人件費・保育材料・消耗器具備品費はどんぶり勘定な予算立てをしているのに、給食費などその他の科目はほぼ予定通り予算が執行されている。
- 前期末は触っていない
ということです。
特に人件費は、有名な経営塾で習うかのような人件費率です。
この法人の職員給与はかなり抑えられ、若い職員で運営されていることもわかります。
以上から言えるのは、
人件費など抑えるだけ抑えるように予算を組み、でも前期末に無駄な計上をさせないため、年度末近くに予算もないのに、人件費計上や玩具を買って当期末資金収支を調整した
という印象を受けるのです。
つまり、この法人の組織ぐるみで行ったことで、この男性はトカゲのしっぽきりを受けたのではないでしょうか?
でなければ、個人で6200万円もの金銭を返却できるでしょうか?
私の推論が間違っているのであれば、この記事はよろこんで消させていただきます。
ですが、そのためにも葛飾区はもっと詳細な監査をするべきではないでしょうか?