ヌーソの皿の上

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食物アレルギーと責任問題:保育園同意書で指導を受ける

保育施設がアレルギー発症の責任問わずの同意書求める 県指導 4/3

https://www3.nhk.or.jp/lnews/saga/20240403/5080016850.html

食物アレルギー発症「園に責任を問わない」と同意書求める 鳥栖市の保育施設が保護者に 佐賀県が「不適切」と指導 4/4

https://news.yahoo.co.jp/articles/b5cc2d7937d48201734880c126e7b4a2e6f927f4

"鳥栖市内の保育施設が食物アレルギーのある園児(5)の保護者に対し、園生活で発症しても「園に責任を問わない」とする同意書の提出を求めていたことが2日、分かった。保護者は応じず、園児は退園した。アレルギーの有無は園児を預からない理由として認められておらず、県は不適切な対応だったとして同園を指導した。"

 

"保護者は「1月以降も在籍するならサインをもらわないと預かれないと言われた」と話し、同意書を提出せずに退園の手続きをした。"

 

"「何の説明もなしに『責任を負わない』と言い切る内容は見たことがない」などとして指導"

 

yahooコメントを見ても、保育園側に同情的なコメントが多いように感じました。
福祉施設への理解を示してくれる方が増えていることは、同業者として大変喜ばしいとことです。

施設の給食って、一般の方から見たらどのようなイメージなんでしょうか?

 

 

1.経験談


給食など食堂や食事ができるお店からみればメニュー数も少ないのだから、楽なイメージなんてないでしょうか?

これでも、ピンチヒッターで給食室の応援もこなしたことがあります。
同僚からは「大丈夫?」などと心配を受けましたが、夏の暑い日に汗をだらだら流しながらスタッフの欠員補助をしましたよ。給食室が暑いなんてあるのかと思います? 如何にIH調理器が増えようと、量を炊くために米はガス、4つ以上あるコンロは常にフル稼働、食洗器からもお湯の熱気が出ていて、クーラーをフルパワーで使おうと全然給食室は冷えません。そして、スタッフは食品が傷まないようになのか、すさまじい勢いと熱気で食材を切り刻んでいる場所が給食室でした。
今でも給食室応援の時、よく熱中症にならなかったなというのが思い出ですね。

 

2.福祉施設の給食とは

話を戻しまして、福祉施設の給食って、献立通りに作るだけで、問題は作る量が大変なんだと思いませんか?
でも問題は、作る献立でも量でもないんです。2~3品を100食作るくらいの仕事量なら、最悪一人で対応できると調理の方は言ってましたね。さすが職人集団。

問題は個別対応の多さなんです。
今の障がい者施設も高齢化が進んでいるので、ほぼ高齢者施設レベルで刻み食対応がされています。

高齢者施設だと


主食(ごはん)だと、
通常、7分粥、5分粥、3分粥、重湯

という種類に分かれ、これに対し副食の刻みの細かさが比例します。
重湯レベルになると、介護施設だとミキサー食などと呼びますよね。
そしてお味噌汁を含め、すべてにとろみをつけないと誤嚥の原因になるので、提供する食事全部がゲル状になります。
ヘルパー実習などではこのミキサー食の作り方も習うんですが、私が習った頃はほぼ全部に牛乳を入れてミキサーにかけるので、心からおいしくない食べ物になります。

なら、一般食とミキサー食だけでいいと思うかもしれませんが、口の周りの咀嚼能力、筋力維持、腹持ち(これ大事)のためにも、ミキサー食から3分粥→7分粥などできるだけ一般食に戻す、いわゆるリハビリも行います。
この経過は利用者さんの状態によるので、全パターンを必ず作っているというわけではありません。

 

3.本題の保育園

となれば今回の本題である保育園は?
お子さんを育てた方なら皆さんわかると思うんですが、

離乳食初期→中期→後期→完了期

にわかれますよね?しかも親御さん次第で、慎重に提供しすぎたり逆に子育てに慣れ過ぎてると、中期とか後期などすっ飛ばして完了期になることはよく目にしていると思います。
保育園がそんないい加減なものなのかと思わないでくださいね?

作る量だけでなく、初期などの期間食ならまだまだ何とかなるように思えますよね?
でも0~満1歳児って、おおよその保育園は20人もいないはずです。
つまりはひと期間2~3人分ずつしか作りません。

そしてアレルギー食対応です。
大人の様にアレルギー反応のある物をただ除去すればいいというわけではありません。
本当の意味での食材の「食い始め」にも関わります。赤ちゃんは成長段階に合わせて、食べさせる種類を増やしていかなくてはなりません。
これを保育園側で増やすことは不可能なんです。
家庭ではどのような食事を提供しているかも鑑みて、「今日ははじめてパンを食べよう」、「今日は大豆製品を」などと保育園が率先して食材種類を増やし、しかもアレルギーには注意してというわけにはいきません。

小麦をただやめればいい、ただ大豆を使わなければいいというわけでもありません。
小麦を使わないということは、だいたいの酢は使えません。酢が使えないということは、酢が含有しているケチャップも当然使えません。

でも現場では小麦除去の申し出がある家庭から、「カレーは食べさせています」などという話を聞かされてひっくり返るほど驚かされるんです。

しかも、食い始めで「なぜ小麦を食べさせないのか」と聞けば、家族に「パンが嫌い」がいるというだけだったりまで付加されたりします。これはもうアレルギー対応の話ではないんですよ。

そんな食い始めやアレルギー対応による除去料理を作るとなれば、一つの献立に対し派生する提供食(期間食を含め)の種類は、多い時には10数種類に上る時もあります。これは一人ではできないですよね。

できるだけアレルギー物質のない米粉など提供していますが、アナフィラキシーショックの危険性からみれば、完全除去の対応をしたいというのが保育園側の思いでもあります。

この保育園はまじめに対応したいがために、そのような同意書を作ったのだろうと想像します。
なので、まさに説明が足りなかったのだろうと憂いています。