今年の予算を積算するのは難しそうですよね。物価高騰に、春闘の動向、そしてウクライナで起きている戦争による燃料費の高騰と、悩みの種は尽きません。
それは社会福祉法人においても同じことです。
そのため、2023年度の予算を見るポイントをひとつの記事にしようと思います。
ですが、どのように予算の見るポイントを説明すればいいか、ずいぶん悩みました。
介護保険関係事業→介護保険改正は来年なので、収入は横ばいで計算すればいいですが、入所、通所（入所の比にならないほど車両費・燃料費がかかっている）で予算の立て方が異なるので基準になりにくい。
障がい者支援事業→支援事業における事業収益が千差万別で指標になりにくい
ということで、やっぱり保育園会計で説明することにしました。
もう覚えている方はいないと思いますが、小カッパきゅうり保育園を例に上げ説明します。
小カッパきゅうり保育園の設定
定員120名の地方都市保育園 2021年までの年間平均利用率は101％くらいとします。
恐らく２０２３年の平均利用率は100%を切るものと思います
委託費収入
処遇改善はすべて受けているとします。
問題は春闘により民間企業の賃金が上がったとすると、人事院勧告は同率上げたとします。
今年の春闘は3%くらいの賃上げを目指しており、満額回答する企業も多いようなので、委託費における人件費も3%くらい上がったとします。
となると、入所稼働率が1%下がり、人件費が3%上がったとして、
2021年決算 134,208,773円 → 2023年予算 138,369,245円 3%くらいの上昇
400万円くらいの収入は増えるものと思われます。
※サブスクでおむつ代などの収入があるのではないかと思われるかもしれませんが、おむつのサブスクは、おむつのサブスクを提供する会社と保護者の契約なので、保育園にはなんら収益は増えません。
人件費支出
この保育園、収入から見れば人件費はパンパンですね。もう首が回らなくなってきていますね。
でも、委託費収入が上がっているので払い出さなければなりません。
委託費収入が3%上がる計算なので、そのまま3%上げます。
2021年決算 118,599,621円 → 2023年予算 121,169,016円
委託費収入が400万円上がっているのに対し、人件費は350万円で抑えられましたね。
この理由は、非常勤職員給与は3%上がらなかったという計算に基づきます。
そううまくいけばいいですが・・・。
給食費
120名定員にしては、給食費が抑えらえているように思います。恐らくコロナなどで喫食量が少なかったものと思います。
なので、20%の喫食量の増加、さらに食材費の高騰3%上昇を加味します。
2021年決算 7,900,289円 → 2023年予算 9,764,756円
180万円くらいの上昇になります。
※給食費の利用収入が増えるのでは、とお考えになる方もいると思いますが、大体の保育園の給食費を月額費用で徴収しています。え？ならコロナで儲けただろうと？そんなわけはありません。食材の注文は約2週間前から予約するもので、急に食数を減らすなどはどの保育園もできないと思います。なので、「朝、園児が体調不良の連絡がきたから給食費が儲けた」などにはなりません。
事業費
ここからの科目はあまり細かく説明をしても、上記のような主要科目ではないですし、保育園以外の事業所では参考にならないものと思います。割愛させていただきます。
ただ計算としては、日本銀行が「消費者物価（除く生鮮食品・エネルギー）の前年比は、2022
年度に２％程度となったあと、2023 年度は１％台後半」と分析をしています。
日本銀行：経済・物価情勢の展望（2023 年１月）
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2301a.pdf
以上から、各科目に3%の上昇を積算させます。
2021年決算 17,149,843円 → 2023年予算 19,293,048円
200万円くらい上昇する計算になります。事業費には給食費も含まれていますので、ただ3%にしたわけではありませんよ。
事務費
この大区分に関しても事業費と同じように3％の物価上昇を積算させます。
2021年決算 7,125,830円 → 2023年予算 7,860,284円
と計算されます。70万円くらい支出が増えるものと思われます。
以上の結果から
ここまでの計算で小カッパきゅうり保育園は
収入が400万円増え
支出が500万円増える計算になります。
（人件費+事業費+事務費）
となりますので、大よそ2021年と比較し、収支差額が100万円下がる見通しが立ちましたね。
収支差額
2021年決算 11,893,674円 → 2023年予算 10,590,135円
収支差額だけを見て1000万円も儲けるの？などとは思わないでくださいね。
ここからさらに、施設建設の借金や、修繕費の積み立て、法人本部への繰入、職員の退職金積み立てがありますので、収支はとんとんどころか、赤字になる計算になります。
以上になります。利用されている施設や、勤めている職場の予算が発表されましたら、小カッパきゅうり園と比較してみてくださいね。
ありがとうございました。
参考資料 小かっぱきゅうり園 2021年度 収支決算書
※こんな園ありませんからね（汗）
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第十七条第四項関係 |
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小カッパきゅうり保育園区分 資金収支計算書 |
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（自）令和3年4月1日 （至）令和4年3月31日 |
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（単位：円） |
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決算(B) |
備考 |
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収入 |
保育事業収入 |
154,597,608 |
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委託費収入 |
134,208,773 |
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利用者等利用料収入 |
4,728,957 |
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利用者等利用料収入（公費） |
1,820 |
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利用者等利用料収入（一般） |
4,728,350 |
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その他の事業収入 |
15,659,878 |
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補助金事業収入（公費） |
15,122,153 |
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補助金事業収入（一般） |
537,725 |
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139,400 |
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受取利息配当金収入 |
709 |
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その他の収入 |
2,380,416 |
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受入研修費収入 |
33,333 |
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利用者等外給食費収入 |
2,153,033 |
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雑収入 |
291,074 |
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事業活動収入計（１） |
157,025,200 |
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人件費支出 |
人件費支出 |
118,599,621 |
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職員給料支出 |
76,262,767 |
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職員賞与支出 |
16,942,275 |
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非常勤職員給与支出 |
9,383,743 |
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退職給付支出 |
892,133 |
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法定福利費支出 |
15,118,702 |
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支出 |
事業費支出 |
17,149,843 |
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給食費支出 |
7,900,289 |
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保健衛生費支出 |
368,839 |
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保育材料費支出 |
1,063,266 |
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水道光熱費支出 |
3,674,566 |
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燃料費支出 |
1,434,455 |
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消耗器具備品費支出 |
1,833,257 |
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|
保険料支出 |
448,077 |
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賃借料支出 |
406,258 |
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車輌費支出 |
20,231 |
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補足給付費支出 |
1,820 |
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事務費支出 |
7,125,830 |
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福利厚生費支出 |
625,388 |
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職員被服費支出 |
397,511 |
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旅費交通費支出 |
104,071 |
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研修研究費支出 |
45,063 |
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事務消耗品費支出 |
558,852 |
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印刷製本費支出 |
4,400 |
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修繕費支出 |
1,465,407 |
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通信運搬費支出 |
628,011 |
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広報費支出 |
402,220 |
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業務委託費支出 |
868,247 |
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手数料支出 |
1,213,976 |
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土地・建物賃借料支出 |
540,000 |
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保守料支出 |
462,184 |
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雑支出 |
173,433 |
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支払利息支出 |
142,581 |
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その他の支出 |
2,161,178 |
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利用者等外給食費支出 |
2,161,178 |
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事業活動支出計（２） |
145,131,526 |
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事業活動資金収支差額（３）＝（１）－（２） |
11,893,674 |
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