いつもの朝礼
「~~つまり僭越ながら私をリスペクトしてほしいんです。」
「わー部長もとにもどっちゃってるー」
「ヌーソさん、あなたと話していてはなかなか話が進みません、ビジネスはスピードが必要なんです。」
「福祉はビジネス的側面はありますけどね・・・。」
「よって、私は利益率に着目して事業転換しようと思います。」
「は、はあ(改めるようなことでもないと思うんだけど・・・)」
「福祉系の事業で利益率が高いものを調べだしてちょうだい。」
「あ、あのー部長、お言葉ですが、利益率っていうのはどの利益率ですか?」
「??経営指標として出されている、一般的なものですよ。みんながわかりやすいものですよ。」
「うーん・・・、例えば粗利ですか??」
粗利=売上総利益
「そ、そうよ」
「じゃあ、売上高との違いはなんですか?」
「人を試すのはやめなさい」
「・・・」「粗利といっても、売上原価を出すために、本当は期首商品棚卸高と期末商品棚卸高差額を出したりするものですからね。」
「え?なにそれ?」
「施設の経理規程にも棚卸資産の計上方法は記載されているはずですよ。
棚卸って、商店でいう在庫のことです。化粧品屋さんでいえば化粧の在庫のことですよ。」
「最後のはわかる・・・。・・・わかってるわよ。」
「むっ・・・。」
「社会福祉法人の就労移行支援事業所などを運営して、主に物販をしているところなら計上しているものです。
保育園や老人ホーム系は在庫といっても微々たるものだから、ほとんど計上しないですよね。」
「該当するといっても
保育園・・・折り紙・絵具類などの保育材料・紙おむつ・ペーパータオル類・給食用食材 など
老人ホーム系・・おむつ類・消毒液系・シーツなどのリネン類・ペーパータオル類・給食用食材 など
になりますか。それぞれ全部合わせても10万前後にしかならないですよね。この程度では決算時の収支差額に大差は出ないので計上しないんです。
なのでいくら全国共通である社福といっても、粗利だけでも正確な基準があるとは言えないんですよ。」
「さらに利益といっても
①粗利(売上総利益) 売上高-売上原価
粗利はビジネス用語
②営業利益 粗利-販売費及び一般管理費
会社が本業のサービスや主力の商品によって稼ぎ出した利益のこと
③経常利益 営業利益+営業外収益-営業外費用
企業がいつもどおりの活動をする中で生まれる利益のこと。コロナなどのパンデミック、災害などで臨時で生じた収益や損失は含まない
④税引前当期純利益 経常利益+特別利益-特別損益
経常利益と違うのは、特別利益や特別損失を含んだ利益
⑤当期純利益 税引前当期純利益-法人税等
最終的に残った利益
と5種類があるんですよ。」
「ええ?そんなにあるの?分かりにくいわ」
「一般的な会社で説明するとなれば、ラーメン屋さんがわかりやすいですかね?
①800円のラーメンに食材費が300円かかっているのであれば、一杯あたりの粗利は500円と計算される
売上高-売上原価
②①の500円から食器(販売費)や土地代・テナント料(一般管理費)を差し引いたものが営業利益
粗利-販売費及び一般管理費
③お店で飲料水の自動販売機を設置していたと想定して
②の営業利益に自動販売機の収益を足して、自動販売機の電気代や搬入料金などを減らす
営業利益+営業外収益-営業外費用
④例えばコロナで、飲食店等への協力支援金をもらった、コロナで営業時間が減ったなど
経常利益+特別利益-特別損益
⑤④から法人税・所得税を引く
税引前当期純利益-法人税等
といったところでしょうか?」
「少しはわかったけど、まだわかりにくい。説明下手なんだから。
そもそも社会福祉法人の話なのになんで、ラーメンの話なのよ。いつもラーメンばっかり食べてるからそうなるのよ。」
「・・・そうですね。では社会福祉法人会計に当てはめてみます。」
定義
原材料費
高齢者施設・保育園だと給食の業務委託費等
就労移行事業所等の場合はそのまま材料費・外注加工費等が含まれます
①粗利(売上総利益)
売上(経常収入)-売上原価(業務委託費など)
②営業利益
①粗利ー(土地賃借・テナント代など)
社会福祉法人の場合、土地代は寄付などで取得していることがあります。
なので土地賃借というのも固定資産管理上からいって、最近事業を始めた事業所のほうが多いはず
です。
③経常利益
②営業利益+(受取利息ー支払利息)
貸借対照表の当期活動増減差額をみます。
自販機や駐車場の利益は本部会計で処理しているはずなので外します。
④税引き前当期純利益
資金収支計算書をみます。経常活動増減差額十分かと。
⑤当期純利益
④税引き前当期純利益ー税金
社会福祉法人会計の場合、④税引き前当期純利益と同じ
「となるでしょうか・・・」
「待って、社会福祉法人って税金払うの?」
「払いますよ。モノを販売した時の消費税などは共通ですからね。」
「・・・」
「それで、結局のところヌーソさんは利益率はどこを見たらいいと言いたいの?」
「もう一度お伺いしますが、部長ならどう見るべきだとお考えでしょうか?」
「もうぉ(怒)・・・やっぱり粗利でみるべきだと思うけど・・・」
「なるほど。それも一つの指標ですよね。」
「指標も見る人によって違うんですよ。」
①銀行・経営コンサルタントの指標・・・・
経常収入(売上そのもの)、①粗利( 売上総利益)
※一般企業・事業との比較がしやすい指標を出すためだと思います。
②厚労省・福祉系団体の指標・・・・・・・
当期末資金収支差額、③経常利益
当期末資金収支差額÷経常収入を利益率といっていることも
※社会福祉法人同士の比較をしやすい指標を出すためだと思います。
「見る人の見たい指標によって、利益率などの意味合いが変わってくるんです。」
「つまり、部長がどの指標に基づいて経営戦略・経営判断するかのほうが一番大切だということです。」
「わかった。少し考えてみる。」
「利益率や指標のように、ひとつの情報だけで全てを判断しない方がいいですよ。」
「・・・」
「私は旦那さんが、事業を始めていたことは社長から聞いていません。本当に知らなかったんです。」
「・・・」