「2022年11月から連日報道された不適切保育は、世間で注目を浴びましたよね。
厚生労働省の調査研究によると、令和2年時点で全国の自治体が把握した不適切保育は96自治体で345件あるそうです。
参照元:https://cancerscan.jp/news/153/
ですが、今回の一件により2022年12月27日、厚労省・文科省・内閣府は全国の自治体と園に対して事案発生時の対応体制や現場の実態に関する調査を始めたそうです。」
「うーん、氷山の一角と言われた通りだったね。このままならもっともっと出てきそうだよね。」
「そうですよね。虐待は完全に駄目だとして、不適切保育については見極めがとても難しいとも思うんですよ。」
※当サイトでも、不適切保育の記事を書いていますので併せてお読みください。
「常葉大学短期大学部の西田泰子特任教授の言葉がとても印象に残っているんですけど、
『不適切な保育は誰にでも起こりうると考え、園全体で対策に取り組むことが大切です』
https://www3.nhk.or.jp/lnews/shizuoka/20221228/3030018763.html
とおっしゃっているんですよ」
「待っておくれよ、ヌーソさん。おらにはそもそも虐待と不適切保育の差ですらわからないよ。」
「うーん、どうやって説明したらいいかな? 裾野市の事件を元に言えば、保育士が園児を宙づりにしたそうですが、これはどう思いますか?」
「おら、母親に木にしばりつけられたことがあるから、それくらいなら楽しいと思うね。」
「何をしてしばりつけられたんですか?」
「子どもの頃悪いことしたからさ」
「(内容は教えてくれないんだ)」
「なら悪いことをした園児を暗い部屋に閉じ込め、反省させるような行為はどう思います?」
「おらも娘を物置に閉じ込めて、叱ったことがあるからなー。それくらいいいんでないの?」
「いや、私も押し入れの中が大好きで、自分から押し入れにこもっていたことはありますよ・・・。ならバインダーで叩くという行為もあったそうですよ。」
「おら、叩かれることはされたことないから、娘を叩くようなことはしたことはないね。女の子に手はあげちゃだめさ。」
「でも今の時代、これらすべて親がやっても虐待行為として扱われ、児童相談所が自宅に訪問に来るほどの事案になるんですよ。」
「親が子をしつけるだけでも、問題なのかい?」
「屋外で、児童が10数分大泣きしただけでも、児相(児童相談所の略)は動きますよ。もしその子が保育園児だったら保育園にも連絡は入り、親の状態や、保育園での様子など事細かに調べられていると思っていいんです。」
「だいたい大泣きしたことすら、どうしてそんなことがお役所さんわかるんだい?」
「それは児相が地域からの通報を広く求めてますからね。」
参照元:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/dial_189.html
「それくらいに、今は子どもの人権に対してデリケートな時代なんです。」
「はりえさんのようなご高齢の方の時代からすれば許容範囲だったとしても、一般家庭でもそれくらい厳しい眼で見られているこの時代に、保育のプロがやったというのは、やはり時代錯誤であり、人権擁護に対する認識不足だったと思いますよ。」
「そういう、今の時代にシフトできていない保育園が、全国で報道されるほど多かったというのは、『他の保育園は安全だ』と言ってしまった私としては残念な限りです。」
「そう言われるとそうかもね。子どもを預ける身としては、いくら自分がそう育ったからと言って、おらのように物置に押し込めるような保育士がいたら嫌だよね。」
「そんな時代ですから、そもそも『早くしなさい』と言うことすら不適切保育に該当するんですよ。」
「えー、それはないよ。子どもに早くしなさいも言えないの?」
「強制させる言葉ですからね。」
「さらに、遅いからと言って急かせるために、食べている席の電気を消すような行為をしたら、もう虐待行為と認識していい時代なんですよ。」
「うちの子はたらたら食べてたら、毎日『早く食べなさい』っていって育てたようなもんだよ?それもだめ?」
「はりえさんはさておき、保育のプロである保育士がやったらアウトですね。」
「そもそも集団生活だから早くしなさいが出てくるんであって、大人になったら仕事中でない限り誰かに言われることのない言葉なんですよ、『早くしなさい』は。」
「おらなら子どもたちに何も言えなくなるよ・・・。どうやって育てろっていうんだい?」
「うーん、はりえさんにとっての『しつけ』ってどんなイメージですかね?」
「・・・、ああ、そういうことか。しつけと聞いたら、『怒られる』と思うね。怖いイメージがあるよ。」
「しつけって、ひらがなのしつけと漢字の躾があるそうですよ。」
しつけというのは、元々は仏教用語だそうで、「習慣性」を意味する「じっけ(習気)」が一般に広まる過程で「しつけ」に変化したものだそうです。
それに対して、躾というのは礼儀作法に限定する武家礼式の用語として生まれた国字なんだそうです。
https://gogen-yurai.jp/shitsuke/
「なんだか難しいよ?」
「では保育、つまり6歳以下の子どもを預かるということは、しつけ、躾は含まれると思います?」
「?躾はまず違うだろうね。礼儀作法をならうところではないだろ?ならしつけかい?そりゃ人を叩いたりしたらだめだということは教えなきゃならないけど、習慣性だろ?それがしつけというのかい?」
「私も同じ意見ですよ。私は保育園というところはしつけをする場所では無いんだろうなと思うんです」
「どこかしら『子どもをしつけなきゃならない』というイメージが残っている人がいるんだろうなと。その時代錯誤な人たちが今回のような問題を引き起こしているんだろうと思ってしまうんですよ。」
「言われてみれば、『早くしなさい』という言葉もいらないのかもね。子どもはちゃんと周りをみていて、急かさなくても自然に周りに合わせて食べるようになるのかもしれないね。うちの子も気づいたらそうなってたよ。」
「叱るようなことをするよりも、脅しながら、なだめすかしながら、ほめてやらせるのが小さな子の育て方なんだね。」
「だから脅しちゃダメなんですよ、はりえさん・・・」