このようなブログを投稿している身ですが、福祉現場の最前線で働いていた時の自分の支援の在り方は、決して合格点を出せるようなものではなかったと思っています。
今でこそ、ハラスメントという言葉はよく耳にする時代ですが、私が介護現場にいた時は、まだまだ「お客様は神様」という時代であり、利用者の罵詈雑言、暴力行為は当たり前の世界でした。そのためカスタマーハラスメントという言葉を耳にした時は、ある種のカルチャーショックすら受けた身です。でもその現場職員当時を思い返せば、いち福祉従事者として、私からも利用者へのハラスメントに当たる行為があったと反省をしているんです。
何を言いたいかというと、介護を受ける身、介護をする身どちらにも相手への距離感・境界線が曖昧な時代だったと思い返してしまいます。
そんな回想の中、今回取り上げたいのは「不適切保育」です。
保育においての不適切?どのようなことが不適切に当たるのでしょうか?
不適切とは
昨年2021(令和3)年3月に厚労省の実態調査「不適切な保育に関する対応について」という調査結果が発表されました。この調査結果これまで保育士向けの研修ではよく取り上げられている資料でもあります。
参照元:「不適切な保育に関する対応について」(実施主体 株式会社キャンサースキャン)
https://cancerscan.jp/wp-content/uploads/2021/06/dcd34c7b5f61320be9d95ac0c0751157.pdf
(1)不適切の定義
まず、不適切についての定義ですが、
「虐待行為を含む、児童福祉法や保育所保育指針に定められた、保育の基本的事項にそぐわない行為全般」
をさします。
その不適切な保育の具体的な行為類型としては、
① 子ども一人一人の人格を尊重しない関わり
② 物事を強要するような関わり・脅迫的な言葉がけ
③ 罰を与える・乱暴な関わり
④ 子ども一人一人の育ちや家庭環境への配慮に欠ける関わり
⑤ 差別的な関わり
となっています。
(2)不適切行為
体罰や差別的な虐待行為は論外として、具体的な例を挙げれば、
・乳児の食事介助時、咀嚼ペースを無視したり、泣いているところへ口に運ぶ
・おかずやお汁をご飯に勝手に混ぜる(別皿に盛ったカレーや納豆などを本人の了解なくのせる行為)
・眠ってしまった園児を無理やり起こす
・服が汚れても着替えさせない(またすぐ汚れそうも×)
・本人の意志確認なく一斉にトイレに行かせる(「みんなトイレの時間だよ」など)
・排泄時の下半身露出への配慮をしない
・「だめ」など一方的な禁止の言葉をかける(ダメな理由を説明する)
・子どもがいるのに電気を消して、急かせる(「もう電気消えますよー」など)
等が挙げられます。意外に感じるものもありませんか?でもこれは不適切行為なんです。
参照元:新潟市幼児教育・保育施設等における不適切保育防止のための
https://www.city.niigata.lg.jp/kosodate/ninshin/hoikujigyosya/hoikumannual.files/hoikuguideline.pdf
のチェックリストより
※他の地域でも策定されていますが、新潟市が一番まとまっていて読みやすかったと思いますので関係者の方には特にお勧めします。
それ以外にも
今なら当たり前のど真ん中の常識といえるのは、子どもたち、園児の呼び方ではないでしょうか?
10年前くらいまでは、普通に園児を呼び捨て、あだ名で呼ぶ保育士をよく目にしました。まるで小学校や中学校の先生かのように、「〇〇(あだ名)、早くしなさい」ときつい口調で乳幼児に接していたわけです。いくら親しみを込めた呼び方であろうと、目に余る行為だったと今では感じます。
不適切行為が起きる背景
調査結果にはこのような問題が起きる背景に、保育士の労働環境を指摘しています。保育士は子どもを預かるという重要な責務だけでなく、その業務内容も多岐にわたり重労働なのに低賃金。なおかつ長時間労働を強いられていることが起因しているとされています。この対処として、区市町村の行政や各保育園の施設長・主任保育士のリーダーシップと、園全体の保育の質の向上がカギになっているとされています。
保育園で不適切行為?虐待行為?と心配される方も多いかと思いますが、虐待の定義が広くなったのです。その中で、ほんの10年前までは当たり前で、保護者の前でも堂々と行われていたことが、今の保育現場では不適切行為・虐待にされるわけです。施設長や主任保育士といったリーダーシップの旗振り役も、数年前まで園児に対し堂々と行っていた行為だったものを、どのように強いリーダーシップを発揮し抑制していけばいいのでしょうか?
初段でお話ししましたように、介護業界は利用者と介護者(サービス提供者)という特殊な人間関係の距離感・境界線が鮮明になってきました。その境界線が鮮明になった理由は、どちらか一方ばかりにスポットライトを当てて判断しないことにあると思います。
先日このような記事を書きました。
最後に
あくまで保育は「先生」という指導的立場ではないという、原点に立ち返ってほしいと思います。あくまでも子ども、特に乳幼児を安全に、その上で発育を補い促すのが保育ではないでしょうか?
子どもの権利や今まで行った行為(不適切行為)ばかりに着目せず、まず保育園という施設の機能について改めて認識することが、第一歩ではないかと思っています。
色々申し上げましたが、まず自戒を込め、保育の質の向上を祈願します。