ヌーソの皿の上

福祉とpc関係の記事です

介護保険制度の課題とは?現金支給のメリットとは?

今回は、昨年シリーズで掲載した記事の一つ「福祉3.0(3) なら介護保険制度をやめたら?」の補足回をさせてください。

https://nu-so.hatenablog.com/entry/2023/12/10/160000

この記事の中で、

“現金支給に切り替えたからと言って、地方の福祉が改善されるわけではありませんよね。

 

そして、福祉事業所数が増えるわけでも、福祉事業所の赤字体質も改善されません。

 

ですが、人手不足が改善されるんです。”

 

 

とし、

 

“家族介護をしている人たちに給付することで「担い手」と認定してしまうという考え方”

とまとめました。

 

この現金支給にした方がいい理由をもうひと掘りします。

 

 

1.保育の質・介護の質

介護と同じ福祉業界を見ると、アベノミクスの三本の矢である、保育無償化が推し進められ、量の確保のため保育園が乱立したというのが2015年ごろと、丁度10年くらい前の話です。

それと同時に問題になったのは、量に対しての「保育の質」でした。保育園が増えることによりその質の担保はどうしていくべきか、連日新聞の社説などに取り扱われていました。

このことについては、私個人の意見を記事にさせてもらっていますが、国家資格を持っている保育士が行う「保育」に対してなぜ信用や信頼を持てないのか?という点について疑問符を投げかけてきました。ですが残念ながら、2022年の静岡県の不適切保育を皮切りに、日本の保育は『狐疑逡巡』(こぎしゅんじゅん)の的となり、2023年は全国の保育園でたくさんの不適切保育が問題になりました。

このような遍歴を持つ保育と比べ、介護業界を見てみましょう。保育と同じもしくはそれ以上に、人材不足と負荷の強い職場の印象が強く、介護職員による高齢者虐待も長年問題にされてきています。ただ保育業界における不適切保育との違いは、高齢者虐待問題が長年常駐化してしまったことにより、「しかたない」「しょうがない」ものとして取り扱われている節を感じることです。

福祉サービスとしてあってはならない虐待問題の解決方法が、介護者不足という問題に阻まれていることへの、一種のあきらめの様にすら感じます。その裏付けになるのは、介護の「無資格者」でも行える専門職としての位置づけです。「介護福祉士資格」や「介護職員初任者研修」を受講していない者でも、介護職につけるという敷居の低さ、それほどまでの成り手不足が浮き彫りになっている事態です。「保育の質」は有資格者でも疑問符が投げかけられるのに、「介護の質」に関しては無資格で、虐待が頻発していても「介護の質」問題には及びません。国が推し進める方針としては、絵空事のように「特養の相談員は社会福祉士資格取得者でなければならない」、「特養のように老健社会福祉士資格所持者でなければ支援相談員になれないようにしよう」などと介護報酬改定の会議の場では提案されています。理想ばかり青天井なだけで、高齢者の虐待問題に真摯に向き合っている議題だとは到底思えない状態です。

 

 

2.ケアマネの成り手もいない

介護業界の問題点としては、介護者の成り手不足以外にも問題はあります。その一つにケアマネ不足も問題になっています。ケアマネ資格や主任ケアマネへの資格取得できるまでの長さ、更新の研修時間や費用の高さなどの問題がありながらも、介護職員よりも処遇改善が行われていないという要因があります。

介護保険創設時は、在宅サービスにおける適正なサービス提供の要として重要視されたこの資格、職ですが、準公共的立場と営業職としてどちらにも振り切れぬ、どっちつかずのままで20年以上が経ちました。もっと福祉のインフラ的立場として、公正な職とするのであれば、地域包括などという上位機関を作らなければよかったものを、それでも公正な立場とするため多くの研修は必要とする。でも実際は同じ事業所グループの在宅サービス(訪問介護・デイサービス)を斡旋する営業職としての毛色も強いという職です。

専門性を高めたいのか、各事業所の窓口機能としてあるべきか、どちらにも振り切れずにいるのに、ケアマネのケアプラン作成は有料化が議題としてあげられているのです。

 

ここでも社会保障制度の限界による問題派生が起きているのに、資格としての理想と現実に大きな隔たりがある状態なのです。

 

3.二極化

先日の記事で、「剛腕の劣等感」という記事を書きました。

 

社会人として優秀だった剛腕・凄腕の人ほど、交渉に長けるため福祉サービスに差が出てきているのではないかと注意喚起する意味も含めて書きました。

介護職員がいない、ケアマネもいない、そしてサービスを受けるには交渉力が必要となるとなれば、介護保険サービスの近未来は、どのような形を辿っても。二極化が起きるはずです。

簡単に言えば、「介護サービスを受けることができる人」「介護保険サービスを受けられない人」に分かれます。保険なのにサービスがない、サービスを受けられるという差別化、高級化がおきます。

でも、保険なので全国で徴収は行われるという、社会保障崩壊との瀬戸際を辿り続ける未来です。

 

そのせめてもの打開策として、要介護状態になった場合、要介護状態の給付費限度額を現金給付にするという手があると思うのです。

もう回避できない二極化があり、介護の質そのものも曖昧なのであれば、家族介護者救済をするための現金給付ということです。

 

 

4.生活保護の問題も

第3の問題としてあげたいのは生活保護費です。

本来、介護保険サービスは利用料として1~3割の自己負担が発生しますが、生活保護者は介護扶助として自己負担は発生しません。

この問題も、この10年で1%の増加という数百億円規模で問題が発生しています。

https://www.mhlw.go.jp/content/12002000/000977977.pdf

 

もし給付費限度額の現金給付となれば、保護費の抑制につながります。

介護保険、保護費どちらも同じ国家予算という出どころだとしても、介護扶助という優位性を取り除くことにつながるのではないかと考えています。

もちろんこれは、生活保護世帯へのパッシングではなく、国の政策への懸案であることはご理解ください。