ヌーソの皿の上

福祉とpc関係の記事です

福祉施設の礼儀マナーについて思うこと

これまでも、福祉施設で「利用者様」と呼ぶことについて、記事にはしてきましたが、今回は福祉施設での礼儀・マナーについて考えてみたいと思います。

そもそも数ある福祉業態の中でも、利用者を「利用者様」と呼ぶのは介護業界だけなんですよね。
障がい者施設、特に成人年齢以上が利用するGHや入所施設で、利用者に「様」をつけて呼んでいる施設を私は見たことはありません。
国内には何万もの施設がありますから、中には障がい者施設で利用者のことを「様」付けで呼んでいる施設が全くないとは言い切れませんけど。

それよりも保育園で園児のことを「様」付けで呼んでいるような園は見たこともありません。こちらは障がい者施設よりももっと「ない」に等しい状態だと思います。

なのに介護施設で利用者を「利用者様」と呼んでいる施設は多いと感じます。
これはなぜなんでしょうね?

 

 

 

介護の成り立ちから言えば


介護は、看護から派生したものです。保育園の様に子どもを集め預かる場所だったり、障がい者が共同して生活する場所などとは成り立ちが違い、高騰する医療費を抑え、なり手不足の看護師を守るために作られた「安価な医療」とも呼べる側面を持ちます。遠い昔、私が介護員だった頃は、摘便、浣腸、サクション、胃ろうに関する作業を含め、看護師の指示のもと介護員がすべてやっている時代でした。変な話ですよね。本来、医師がオーダーする事を医師に代わって処置するのが看護師なんですが、その看護師の指示に従って作業をするのが介護員という位置づけでした。現役介護員時代、医務室で座っている看護師に薬をもらいに行き、間違って誤薬しようものなら、看護師に怒られる。そして看護師の仕事と言えば、嘱託医師の往診時に、おしぼりをもって後ろを歩くというイメージでした。当時はあまり何も考えなかったので、それでも看護師さんとは仲が良かったですが、今思うとどうもへんてこなことをさせられていた印象です。話は脱線しますが、準介護福祉士などという制度は、昔の看護介護の関係の二の舞になりそうで、どうしても賛同できません。制度と言えば、すぐ下を作り出す考え方の浅さが嫌なんです。

 


言葉遣いが悪かったのは


それでも病院の主戦力は看護師であり、看護師なしでは病院は成り立ちません。30年前は、これから高齢化社会を迎えるにあたり、なり手不足もあって、大変看護師は重宝されました。今の介護士よりも、問題は深刻に扱われ、看護師の地位向上のために全国で看護師上がりの議員も誕生したりしました。その甲斐あってか、看護師の地位は徐々に向上し、処置にまで及ばない煩雑なものには、下位である介護士という作業員もできました。ただ置き去りになった問題もありました。看護師という職の地位向上と比例せず、看護師の資質が向上はしなかったわけです。もちろん医学の勉強はされたんでしょうが、患者への処遇、対応がおざなりだったわけです。その危機感を感じたのも看護師たちであり、看護師の役職者たちは、看護師の接遇、マナー、礼儀を重んじるようになりました。それほど、看護師たちの言葉遣いは褒められる状態にはありませんでした。
病院において、患者=客である以上、お客様=患者様になり、下位である介護士たちにも、その接遇・マナーを求めたのが「利用者様」の始まりに近いと思います。その一番の理由に、特養や軽費老人ホームよりも、老健や有料老人ホームのほうが、「利用者様」や様付けで呼んでいるところが多いと思います。特養や軽費老人ホームの成り立ちは、病院から派生したものとは違い、毛色としても保育園・障がい者施設に近い措置から始まりました。なので、特養上がりの私からするとどうしても「様」付けをすることに違和感を感じています。

 


それでも介護は高齢者相手


介護はあくまで高齢者という、全員が年上なわけです。いかに下の世話をしてくれる相手だからと言って、利用者側が介護者たちにへりくだる言われはないわけです。
私の子どもの頃、親戚の叔父叔母たちは「お前が赤ちゃんの頃は、おむつを替えてやった」などと言って、下の世話をしたことでマウントを取る親戚がいたものです。本当にしてくれたのかはわかりませんが(笑)そういう年代だからこそ、介護という、人がやりたがらないことをしてくれる相手には、下手に出てしまうところあるのでしょう。そういう意味では「利用者様」という「お客様」扱いをして、一定の距離を保つ行為は、利用者側の精神衛生を保つことにもつながります。介護者側としても、非礼な言動からの苦情を避けられる効果もあるでしょう。でもこの「お客様」扱いが、新たな問題の温床にもなってきました。それがカスハラなんでしょうね。
丁寧に関わると今度は、利用者側の権限が強くなるという、介護者と被介護者というのはバランスは保つのが難しい関係図にあると思います。

 



この記事を書くきっかけになったのは、福祉職のマナー講座というものを目にしたのがきっかけでした。接遇、礼儀、マナーを学ぶことはビジネスマンにとって大事なことだと思います。でも礼儀正しい対応は、相手にもそのマナーを求めてしまうという、一定の距離感を作り出す行為でもあると思います。接遇マナーを重んじるということは、ある意味相手に心情を読み取らせない行為、壁を作る佇まい(たたずまい)のような気がしないでしょうか?ちょっと思い出してほしいんですが、バイスティックの7原則に「礼儀作法を重んじる」なんて項目はありませんでしたよね?
利用者の様付けは、過度なものを生み出すのではないかと私は危惧しています。