福祉施設がダサいのには理由がある…自閉症の息子のために元ヤフー社員が作った「綺麗でオシャレな施設」の秘密 3/1
https://president.jp/articles/-/66798
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Gさんを預けるために見学した福祉施設を訪れ、衝撃を受けた。薄暗い部屋にたくさんの注意書きがでかでかと貼られ、あるのは使い古した机と椅子とマットだけ。スタッフは皆疲れ切っている……。「地味を通り越して『ダサい』と感じた」と話すが、どこもそうした状況になるのは、福祉業界の構造に問題がある。
~中略~
非営利に関してはサービス業の意識が希薄なところが多く、10人という定員さえ満たせれば設備に積極投資する発想も生まれない。法人税もかからないので設備投資に再投資すればよさそうなものだが、そういった発想をできる人材が福祉業界には少ない。
「だから僕は『ぼろ施設、ぼろ儲もうけ』と言っていますよ」
冗談交じりのこの一言は、福祉事業の問題点を鋭くついている。
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元ヤフーという一流企業出身者は見るポイントが違うとでも言いたい文面だったので、取り上げさせていただきます。
1.事業媒体が放課後等デイサービスという限定的なもので福祉全体を語られても
ここに出てくるのは放課後等デイサービスです
放課後デイサービスとは
放課後等デイサービスの対象児童は、児童福祉法第6条の2の2第4項において学校教育法第1条に規定する学校
(幼稚園及び大学を除く。)に就学している障害児と定められている。
厚生労働省:放課後等デイサービスの対象拡大について より
https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000602802.pdf
福祉事業別の利用者の施設期間を簡単に表せば
保育
0~6歳 の6年間程度
高齢者施設
1~10年から 10年前後
(https://www.yurokyo.or.jp/kakodata/investigate/pdf/report_h25_01_02.pdf)
障がい者の居住環境として、グループホーム事業化が30年程前に制度化
現在は高齢化が進んでおり、利用年数は10年以上と思われる
https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000938677.pdf
くらいになります。
これと比べて、今回の放課後等デイサービスは小学校から高校までですから、もし高校まで利用すれば10年以上の利用ということになります。
保育の利用率から言えば、産休の取り方次第ではほぼ1歳からの概ね5年間であり、高齢者事業に至っては病院への入退院機関が算定に入りませんから、もっと利用期間は短く考えてもいいはずです。
なにが言いたいかというと、放課後デイサービスと比較して
・施設利用期間が長くなく、
・利用者の流動性が高くなく
・常時利用定員上限までの利用が難しい
事業とを、一つの福祉とくくり、問題視するのはあまりにいい加減なものいいだと思いますが?
2.施設運営として
『ぼろ施設、ぼろ儲もうけ』?
保育園や障がい者施設、有料老人ホームが今のご時世でぼろ施設だとそもそも立ち行きませんよね?
となれば、今でもぼろ施設の印象といえば、乳児院などの児童福祉施設や養護老人ホーム・軽費老人ホーム・特別養護老人ホームあたりといえないでしょうか?
これらの施設ってそう簡単には様変わりしないですよね?
でも、それには理由があって、建物が鉄筋性のコンクリートでできており、大よそ国からの補助金が投入されています。となるとその施設の耐用年数は、30年~50年とされており、ちょっとやそっとでは立て替えられないんです。立て替えたら減価償却分の補助金の返還を国から求められるからです。
参照元:補助事業等により取得し、又は効用の増加した財産の処分制限期間
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=27ab0076&dataType=0&pageNo=1
大規模な修繕となれば、国・都道府県・市の許可が必要になり、さらなる補助金を受け取る必要になります。
自力で直せないかなど考える方もいるでしょうが、措置施設(特養を除く)である以上、修繕費用の積み立てにも制限がかかり、取り崩すときにも所管庁と理事会の承認が必要になるなど相当の手間が必要になります。
https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/kenko/kkenkofu/files/3023_keiri_sotisisetu.pdf
ましてや、このような物価高騰の時に修繕をするとなれば、所管庁から監査時に丁寧な入札をしたかなどの指摘を受けるため、施設側は二の足を踏むものです。
薄暗かろうと、ぼろかろうと、施設運営している側も望んでそのようなことはしていないんですよ。
3.公務員宿舎と同じような現状が起きている
話はそれますが、2010年ごろ豪華な議員宿舎が問題になったことを覚えていらっしゃるでしょうか?国会議員には豪華すぎるとして批判を浴びた「赤坂議員宿舎」の話です。
作りが豪華なだけでなく、立地条件も良く、土地の価値の高いところに宿舎が建っていたことが問題になりましたよね。
この話の一方で、
「公務員の宿舎の住環境が余りにも劣悪な現実がある。3階に住む人が1階の共同トイレを使用するしかなく、そのトイレの中に洗濯機がある、という宿舎もある」
という問題もありました。
引用元:平成 23 年 12 月1日 国家公務員宿舎の削減のあり方についての検討会
https://www.mof.go.jp/policy/national_property/councils/syukusyaarikata/231201_01.pdf
なぜこのような2極化が進んだかというと、国家公務員宿舎法に定める早朝・深夜に働く職員や災害対応にあたる職員らが、非常時の初動体制を整える関係上、立地の良いところに宿舎が建っていることも要因の一つなんです。立地の良いところに建ち、豪華な建物に見えるような宿舎となれば、一般市民からすれば税金の無駄遣いの様に映りかねない問題から、宿舎の積極的な建て替えが迎合されず、建物の老築化が進んだという側面もあります。
この問題は、福祉施設にも当てはまります。
特に古い養護老人ホームや軽費老人ホームは、あくまで福祉的施設であり、利便性から立地は譲歩されても建物が豪華だったり、積極的な建て替えはされてこなかったという背景もあることを知っていただきたいです。
ただ中傷するのではなく、もう少し勉強してから福祉を語っていただきたいんですが?