ヌーソの皿の上

福祉とpc関係の記事です

使われなくなった福祉関係用語

今回は、福祉業界の使わなくなった言葉を集めてみました。

福祉業界って、ほかの業界より言葉の移り変わりがあると感じています。

その言葉たちがなぜ使われなくなったか調べてみました。

 

 

  1. 痴呆

アルツハイマー型、脳血管性、レビー小体型など認知機能が低下し、日常生活全般に支障が病気、認知症の元の名称です。

 

この言葉は約20年前に名前が変わりました。

 

もとになる英語での名称も、dementia で「愚か」という言葉に近かったんです。

 

中国語でも「痴呆症」と言われていた時期があり、台湾では1990年代から「痴呆症」ではなく「失智症」と呼ぶ活動があったそうです。

https://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/11/s1119-8b.html

 

 この名称は特に字にいい印象を持ちませんよね。

「痴」は愚かなこと・「呆」は呆れるという意味があるからです。

 

これに対して、厚生労働省は2004年6月、「痴呆」に替わる用語に関する検討会を設置、7~8月に代案を取りまとめ、関係団体・国民など広く意見をまとめたそうです。

その当時、これらの動きに対して「また言葉狩りがはじまった」と報道もされていました。

 

言葉狩りとは

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A8%80%E8%91%89%E7%8B%A9%E3%82%8A

 

そんな中でも、2004年12月に厚生労働省は「痴呆」から現在の「認知症」に名称変更を決定しました。

 

その後2013年に発表された『精神疾患の診断・統計マニュアル第5版』(DSM-5)では、

dementiaからmajor neurocognitive disorder(重度の神経認知障害)に変更されました。

 

ということはdementiaという英単語がよくなかったということなんですかね?

 

 

  1. 子供

今は「子ども」と表記されることが多くなりましたよね。でも「供」は教養漢字であり、公用文書は子供と表記されていますよね?祝日は「こどもの日」なのにです。

 

この問題が大きく取り上げられたのは約10年前の平成22年の訓令(官庁における法令の解釈について命令)ではないでしょうか?

https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a204171.htm

 

リンク先の質問内容にもあるように、

“昭和二十五年の文部省用字用語例においては、「仮名書きが望ましいが、漢字書き、交ぜ書きも可”

と戦後間もなくの頃から「こども」「子供」「子ども」どれでもいいとされてきていました。

 

それでもこの言葉は平成22年までの間にも、何度も差別用語にならないかと話題に上がってきました。

 

問題は「供」です。

 

  • 供は、神仏などに供える。お供え、という字であり、子供と書くと「生贄」的な表現に感じる(これの出どころが今はなくなっていましたが、その当時はそういっていたホームページが多数あったはずです)。
  • お供などのような表記にも使うため、子どもを所有物かのように扱う言葉になる。
  • 達と同じ、複数の人を指す言葉ですが、昔は「女ども」「黒人ども」「豚ども」など人を卑下するようなことばに「ども」が使われていたんです。

 

 つまりは、字も読み方も印象が良くなかったんですね。

この言葉、リンク先にもあるように、未だにきれいさっぱりと「こども」「子ども」に使用などの方向性は決まっていません。

 

 

  1. 精神薄弱

私がこの業界で働きだしたときはまだ、精神薄弱者施設といってました(汗)

  現在の知的障がいのことを指します。

 

 でも、類義語を調べたらやたらと出てきますよね。

発達障害」「精神遅滞」「知恵遅れ」「知能遅滞」「知能障害」「知的障害」「精神発達遅滞」

 

その中で、どうして精神薄弱と決まったかというと 1941年に制定された「国民学校令」という法律の中の第53条にあります。

https://dl.ndl.go.jp/pid/1460926/1/20

 

リンク先をご覧ください。私読めませんでした(汗) 漢字が読めない・・・。

 

ですので、

https://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/others/detail/1318024.htm

こちらのリンクを引用すると

第五十三条 国民学校ニ於テハ身体虚弱、精神薄弱其ノ他心身ニ異常アル児童ニシテ特別養護ノ必要アリト認ムルモノノ為ニ学級又ハ学校ヲ編制スルコトヲ得

 

とあります。心身に異常がある児童らを「精神薄弱」と表現していますよね。

つまり、医学用語ではなく法律用語だったんです。この言葉を使う前までは「低能」、「劣等」という表現を使っていたそうです。

では、どこから持ってきた言葉かというと、ドイツ語が起源のようです。

 

ドイツ語のSchwachsinn   又は英語のFeeble-Mindedness       を直訳したもの

            (薄い) (精神)       (弱い) (精神)              

 

https://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/06/s0621-5f.html

 

それに対しアメリカの学会では、Mental Retardation (精神遅滞)を利用していたようで、その後WHOもMental Retardationと疾病分類されています。

 

 

なら、精神遅滞でもよさそうですが、昭和57年には精神薄弱という言葉も不適当用語とされなかったんです。

 

これが余計に混乱を招いたのでしょう、発達障害から知能障害、挙句の果てには痴呆まで混ざってしまっていたため、

 

平成 5年           日本精神薄弱者福祉連盟は、症候名として「精神遅滞」、障害区分として「知的障害」とする結果をとりまとめた

 

とされています。どうしても統一用語が欲しかったんですね。この流れを見ると「ちてきしょうがい」の表記ですら的確な表現なのかと感じますが、連盟さんが決めてくれたからやっと落ち着いたという印象を受けますね。

 



  1. 障害

統一用語を無理やり作るのもいかがかと思っても、昔の様な分類「めくら」「おし」「つんぼ」「びっこ」「どもり」などの言葉では差別用語ですよね。

 

  でもこれはもう「害」という字が問題だと思いますよね。

一時期「障碍」という言葉にしようとしたことがありますよね?

中国語でも障害は「阻碍」と書きます。

 

ならなぜ、障碍にしないのか?これは検討会の資料をそのまま載せます。

https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/kaikaku/s_kaigi/k_26/pdf/s2.pdf

 

「障害」については、遅くとも江戸末期には使用された用例があり、他方、「障碍(礙)」については、もともと仏教語で、明治期に至るまで「しょうげ」と読まれてきた語であり、「ものごとの発生、持続にあたってさまたげになること」を意味するが、仏教語から転じて平安末期以降「悪魔、怨霊などが邪魔すること。さわり。障害。」の意味で多く使われてきた。

明治期に入ると、「障碍(礙)」を「しょうがい」と読む用例が現れ、「障碍(礙)」という一つの表記について、呉音で読む「しょうげ」と漢音で読む「しょうがい」という二つの読み方が併存するようになる。こうした不便な状況を解消するためということもあって、次第に「しょうげ=障碍(礙)」と「しょうがい=障害」を書き分ける例が多くなり、大正期になると、「しょうがい」の表記としては、「障碍(礙)」よりも「障害」

の方が一般的になる。

とあります。つまりもともとは障碍(しょうげ)と読んでいて、悪霊の邪魔というのも的確な表現には感じられませんね。

 

ならまだ「チャレンジド」という言葉も使われていたこともありましたよね。

これについても資料で取り上げられており、

 

(挑戦という使命や課題、挑戦するチャンスや資格を与えられた人)を語源とする呼称であり、障害をマイナスとのみ捉えるのでなく、障害を持つゆえに体験する様々な事象を自分自身のため、あるいは社会のため積極的に生かしていこうという思いを込めている。時代が大きく変わろうとしている今、様々な価値観による様々な呼称が自由に使われて当然であり、国家がそれを統一することは避けるべきだと思う。

 

と、なっています。

だから、「障害」「障碍」「障がい」が入り乱れているんですね。これも「子供」同様まだ変わっていきそうですね。

 

 

蛇足:ろうあ者

私は学校で、障がい者の中でも聴覚障がい者は、自分たちを聾啞者と呼称していると習いました。

 

「聾」という漢字は中国の漢語を起源とし、龍の目は千里眼で、鼻も敏感だが、音は角で感知するために耳が退化してきこえなくなったという由来から、聾唖という表現を好んでいると習いました。

 

  ですが、今回この記事を書くにあたって調べてみたら、ちょっと違ったんですね。

 

https://yamanashi.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=1018&item_no=1&attribute_id=22&file_no=1

 

日本聴力障害新聞(昭和27年1月1日)に次のように 記述されている。 「この耳は実際は役立たず、その上にある鹿の角みたいなものがアンテナの役目をして 物音を聞く、故に耳の聞えぬ龍の耳としてすなわち聾と読む。どうせ実在しない動物なの ですから、これもいいかげんな作りごとでしょう」(資料9)として,「聾」の字にまつわ る俗説は根拠がないと指摘している。

 

 

もし同じように覚えている方がいたら気を付けてください。