保育園で“水まき中”の事故 当時5歳の園児がぶつかり重体に 今も介助が必要 第三者委員会が報告 複数人での保育徹底を提言 頭を打った「園庭の地盤の硬さ」の再確認も 愛知・一宮市
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/495735
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2022年6月、愛知県一宮市の市立保育園の園庭で、保育士が暑さを和らげるためなどに水を撒いていたところ、その水をめがけて走ってきた当時5歳の、年長の男子園児2人がぶつかりました。
1人は衝撃で転倒して、地面で頭を打って意識不明の重体となり、現在も介助が必要な状態だということです。
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という事件に対し、一宮市での第三者委員による報告書が公開されました。
1.報告書の内容
報告書内には、保育園での事故後取り組みが紹介されていますが、水まき(散水)についての取り組みは
「・散水は子どもたちがいない時に事前に行うこととした。」
とあるだけで、水浴びを含む水遊び自体を自粛することになったことが伺えます。
報告書p16
事件が発生した問題点としてあげられている内容として
・園庭での保育における複数人による見守りのあり方(配置を増やしたとしても事故を防げたかは不明なため)
・緊急時の職員の協働的対応方法(園内全体への伝達)
・保育士の配置基準の検討
などが挙げられています。報告書p18
ですが、注目はニュースでも取り上げられているように「園庭の硬さ」に対する指摘です。
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(本児)は後頭部を園庭の地面で打った後に意識不明となり、救急車で病院に搬送され、急
性硬膜下血腫の診断を受けました。
<課題>
○事故後に園庭の地盤の硬さを検査したところ、各種スポーツ施設の設計・施工のた
めの「屋外体育施設の建設指針(公益財団法人日本体育施設協会屋外体育施設部会)」
における「プロクターニードル貫入抵抗標準値(クレイ系舗装)」では、校庭(学
校運動場)や多目的運動場の品質管理の基準を超える数値でした。保育園の園庭の
地盤の硬さには園児が安全に過ごすための管理基準がなく、定期的に検査する仕組
みにもなっていませんが、保育に適した環境か再確認する必要があります。
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この問題に対して、報告書では
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(提言8)園庭の地盤の硬さについて、保育に適した環境か再確認すること
保育園の設備の基準は、国の「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」をもとに
条例で定められており、園庭の広さに関する基準はありますが、園庭の地盤の硬さについては、園児が安全に過ごすための管理基準がなく、定期的に検査する仕組みにもなっていません。
しかし、他児との衝突により転倒し、頭部を地面に打ち付けた結果受傷したという本
件事故の態様を前提にすると、園庭の地盤の硬さと本児の怪我との関係について、科学的な検証を視野に入れて、地盤の硬さを含め保育に適した環境か再確認することが求められます。
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と提言をしています。
これまで、いろいろな事件の実証などに基づいた報告書は読んできましたが、園庭地盤の硬さについて問題視された事件は初めてではないでしょうか?
2.地盤に対しての基準について
文面を読む限り、どうやら園庭の硬度についての話をしていることは分かりますが、肝心の「プロクターニードル貫入抵抗標準値(クレイ系舗装)」とは何なのかわかりませんよね?
語句の解説
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クレイ系舗装(クレー舗装)とは?
クレー舗装(クレーほそう)は、土系舗装の種類で、舗装材にクレー(粘土)と呼ば
れる素材を使う。
舗装材として、荒木田土、真砂土(まさ土)、川砂等ににがりなどを混合し、これを土地にローラーによって転圧し舗装する。混合剤により保水力を高め、また土粒子を団粒状にすることにより透水性がよくなる。適度な弾力性もあり、運動場の舗装に用いられる。
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プロクターニードル貫入試験とは?
プロクターニードル試験の条件は、径6.5 ㎜の金属製の貫入針を使用し、地面に貫入させ、抵抗値から硬さを判定する。貫入速度が異なると正しい抵抗値が得られないので一定の貫入速度を保つことが大切である。貫入速度は0.25 インチ/sec、貫入深は1 インチでの抵抗値を計測する。
引用元:熊本県球磨郡あさぎり町 上小学校屋外運動場改修工事 特記改修書より
https://www.town.asagiri.lg.jp/dl?q=117484_filelib_cd24c722b176bcb45a2192a2b60da5dc.pdf
となっています。以上から専門ではない私が読み取る限りには、
「土などを用いた園庭であったが、運動場より硬い地盤だった」
ということになります。
参考のために基準値を掲載します。
競技場種類 |
貫入抵抗値(ポンド) |
摘 要 |
陸上競技場 |
50 ~ 110 |
トラック及び助走路 |
野 球 場 |
30 ~ 80 |
芝生舗装を除く |
多目的運動場 |
40 ~ 100 |
芝生舗装を除く |
校庭(学校運動場) |
50 ~ 90 |
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テニスコート |
40 ~ 110 |
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30 ~ 80 |
芝生舗装を除く |
この表から言えば、野球場やサッカー場よりも硬い園庭だったということは分かりますよね。ただし、それがご利用されていたり職場である保育園の園庭と比べることは素人には難しそうに思えます。
3.まとめ
今回のこの報告書は、今後も重要な一つの指針になりえる内容だと思います。
事件が起きた時の状況から言っても
・園児はカラー帽子をかぶっていた
・衝突があった時にすぐに駆け寄り、緊急の対応をできるだけ行った
とあるため、残るは園庭の硬度に対する注意を保育園はしていかなくてはならないかと思います。この報告書を機に、早急な基準作りが行われ、全国の保育園でプロクターニードル貫入試験が行われるようになるかもしれません。
それでも、報告書の生々しい事件時の、園児の容態を読むと目を覆いたく内容でした。今後このような痛ましい事件を防ぐためにも、保育園の設置基準は厳格にすべきだと思います。