ヌーソの皿の上

福祉とpc関係の記事です

居酒屋けんざん(14) 居場所

「先日(2022/7/26)、秋葉原無差別殺傷事件の加藤智大死刑囚に死刑執行されたそうです。」

 

「おら、全然覚えてないね。どんな事件だ?」

 

「えー、ほんとにですか?ちょっとも?」

 

「なんだか、最近こういう事件が多くて、本当に申し訳ないけどわからない。」

 

詳しくはこちら

秋葉原通り魔事件

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A7%8B%E8%91%89%E5%8E%9F%E9%80%9A%E3%82%8A%E9%AD%94%E4%BA%8B%E4%BB%B6

秋葉原7人が殺害された無差別殺傷事件

 

 

「なんだか、残忍な事件だったんだね。ちょっと思い出したよ」

「この加藤死刑因ってどんな人だったんだい?」

「やっぱり、孤独で悩みでも多かった人だったのかい?なにか思いつめていたとか?」

 

動機についてはこのような供述がありました

 

"加藤死刑囚は動機について裁判で「掲示板で『なりすまし』や『荒らし』などの嫌がらせを受け、重大事件を起こすことでやめさせようとした」と述べ、掲示板については「建て前ではなく本音で語り合える場で、生活の中で心のよりどころだった」と説明しました。1審判決は事件の動機として掲示板について挙げたうえで「家族、友人、仕事などを失いどこにも居場所がないという非常に強い孤独感を感じていたことも背景にある」と指摘しました"

 

「ということは、精神状態が不安定な人(心神耗弱者・心神喪失者)じゃないんだね?」

 

情状酌量による減軽などなかったところを見ると、そういうことなんでしょうね。」

 

「となると、余計に人物像が気になるね?」

 

情報を集めると下記のようなことが出てきました。

 

"加藤智大死刑囚(39)は青森県の出身で、地元の進学校を卒業したあと岐阜県の短大に進学し、事件を起こした当時は工場で派遣社員として働いていました。”

 

”事件から1年半余りがたった20101月の初公判では起訴内容を認め、「亡くなられた方、けがをされた方、ご遺族には大変申し訳ないことをしました。せめてものつぐないとして私にできることはどうして今回の事件が起きたのかを明らかにすることです」と述べました。被告人質問では事件を起こした理由としてインターネットの掲示板で嫌がらせを受けたことなどを挙げ、「現場に着いた後、意思とは別に体が拒否して交差点に進入できず、このまま戻ろうとも考えたが、自分の居場所がどこにもないと気付いて結局やるしかないと思った」と述べました。"

 

"加藤死刑囚の取り調べについては「隠し立てすることなく正直に話していた。実社会では友人がおらず、インターネットに没頭していて、ネットの書き込みに対しほかの人から反応が来て生きていることを実感していたが、反応がなくなると孤立を深めていったのだと感じた"

 

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220726/k10013736001000.html

 

とありますよ。

 

「ということは、耐えられない孤独によって犯行したってことかい?」

 

「孤独ですか・・・、はりえさんは、孤独だと訴えている彼にどんな印象を持ちますか?」

 

「うーん、

 ・プライドが高い?

 ・進学校にいたということは、もっと自分はやれる人間なんだと思ったんじゃないかな?

 ・本当はもっと違う未来を描いていたのでは?

 なんて感じはするね。力を誇示したかったからの犯行に感じるよ?」

 

「加藤死刑因の孤独については、このように分析する先生もいましたよ」

 

"北海道大学准教授の中島岳志は「コミュニケーションが下手で、友達がいない若者はたくさんいる。加藤はうまくやっている方で、もしかしたら、私が教えている学生の方が友達がいないかもしれない。なのに、加藤は孤独だった。問題は友達がいないことではなくて、友達がいるにもかかわらず孤独だったこと」と主張している”

wikiより

 

「ますますわからなくなるね。友達がいたのに孤独ってことかい?上辺だけの友達しかいなくて孤独というのはわからなくもないけど、それがどうして孤独なのかというと難しい話だね?」

 

「孤独という側面からだと、背景を深掘り出来ないですよね。私はどちらかというと『居場所』という発言のほうが気になるんですよ。」

「彼は犯行前夜に、『インターネットの掲示板でいやがらせを受けた』と訴えています。まだインターネットが現代のSNSより掲示板が主流の頃の話です。今のSNSであれば情報の発信者、受信者が特定されますが、この時代の主流である『掲示板』とは発信者・受信者ともに匿名なものなんです。もちろんコテハンIDなどで、ある程度人物は特定できていましたが、なりすましが可能だったんです。」

「そのような掲示板で、自分の居場所を見つけ、心のよりどころにしていた彼が居場所を失ったから孤独を感じたんでしょうね。」

 

「おら、掲示板もSNSもやったことないからわからないね。」

 

「私はツィッターというSNSをやっています。親しくなったフォロワーさんというツイッター上のお友達がいるんですが、そのフォロワーさんがコメント(リプ)をくれなかったりしたら孤独を感じますね。でも掲示板では、コメントをくれる人はいつもの人なのかどうかすらわからないコミュニケーションツールなんです。」

 

「なんだかわかったような、わからないようなだね」

 

「その匿名の不特定多数の人々との関係に、居場所を感じたということのようなんです。そして不特定多数の人を無差別に・・・。」

 

「そこが心が休まる場所、自分でいられる場所、素でいられる場所だったということだね?それはわかったよ、でも何で他人を殺すんだい?居場所というなら、なんで家族へ感情が向かなかったんだろうね?」

 

「うーん、家族に対してですか・・・。加藤死刑因は掲示板のコテハンと呼ばれる自分のニックネームを『不細工スレの主』としていて、自虐的な書き込みに対して反応が良かったそうですよ。」

「それは演技だったにせよ、どこかしら異性へのこだわりを感じるんですよね・・・。家族を持つことへの憧れを感じる気がしませんか?彼の本当に求めていた居場所とは、家族だったのではないんでしょうか」

 

「居場所って難しいね。そこに居場所があっても、本人が孤独だと思えば孤独なんだもんね。」

 

「居場所には種類があるそうですよ。」

"「私的居場所」と「公的居場所」に分類した。岸田(2005)は、「他者と一緒にいる居場所」と「一人でいる居場所」に分類している。これらの分類を考察していくと、“居場所”という言葉には、大別して、内省したり、物事に集中したり、リラックスしたりできる場所である『個人的な居場所』と、人との関わりの中で、自分の存在を感じ、自分自身が受け入れられ、求められる場所である『社会的な居場所』の2つがあるということが多くの研究に共通している。"

https://www.mskj.or.jp/report/3402.html

 

「一人でいる居場所はあったんでしょうが、彼は社会的な居場所がないことに孤独と感じたんでしょうね。」

 

「そんなに居場所って大切なんだね。」

 

「社会問題になってますからね、居場所事業といって、国主導の事業もあるくらいですから。」

国及び地方公共団体による「子供の居場所づくり」を支援する施策調べについて

令和3年 10 月7日

"一昨年度調べ(306 件)、昨年度調べ(411 件)と比較すると、地方公共団体の「子供の居場所

づくり」を支援する施策数は年々増加している。"

 

https://www8.cao.go.jp/kodomonohinkon/shien/index.html

 

"おおむね小学生から30代を対象としているが、就職氷河期世代の高齢化等社会情勢を鑑み、利用者の年代を限定しない施設もある。また、同一自治体内であっても施設や時間帯毎に小学生のみ、中学生・高校生のみ、高校生以上といった区分を設けていることが多い。保護者同伴や、保護者のみでの相談も可能である(居場所活動とは別個に、「当事者会」「親の会」が実施されている自治体もある)。

 

スペースの利用やイベント参加にあたり、居場所所在自治体における居住または在学・在勤が条件の場合もある。"

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B1%85%E5%A0%B4%E6%89%80

 

 

「それでも、ただ人がそばにいればいいってもんじゃないんだろ?」

 

「そうですね。対人援助の基本は、『非審判的態度をもて、傾聴、共感をしろ』など習うんです。でもこれって、援助者とサービス利用者という特殊な関係においてであって、本当の家族や友人関係とは違うんですよ。家族や友人が、傾聴・共感ばかりしてたらHSPになってしまいますよ・・・。」

HSPは近いうちに当ブログでも取り扱う予定です。

 

「それもあるだろうけど、居場所を作ったら今回のような事件は起きなかったのかい?おら、話を聞いていても、なんだか腑に落ちないね。」

「人としゃべるコミュニケーションツール?というやつかい?それを通して、人を殺そうという考えに至ることも、それでいて無差別に殺そうとすることも全部、ズレを感じるんだよ。話がかみ合わないね。どこか現実的じゃないゲーム感覚のような気もするね。」

 

「今回、この死刑が執行されたことは多方面で話題にはなっています。はりえさんの疑問もその一つだと思いますよ。」