ヌーソの皿の上

福祉とpc関係の記事です

葛飾区の保育所補助金の誤支給について解説

葛飾区が補助金誤支給 4年にわたり区内保育園へ 金額、施設数は精査中 東京新聞 6/10

https://www.tokyo-np.co.jp/article/182622

 

引用

東京都葛飾区が、パートの保育士を雇用した私立認可保育園に支給している補助金を巡り、二〇二一年度までの四年間に誤って多く支給していたことが分かった。区が九日、区議会保健福祉委員会で報告した。支給額を算出する表計算ソフトの計算式に誤りがあったという。

 

とニュースになっていました。

 

これに対し、葛飾区は

https://www.city.katsushika.lg.jp/kurashi/1000056/1002333/1029002.html

 

引用文

 葛飾区長  青木 克德

 

 このたび、葛飾区内の私立認可保育所に対する補助金の一部に、算定誤りがあることがわかりました。

 区民の皆様、各保育所には、大変なご心配とご迷惑をおかけしておりますこと、お詫び申し上げます。

 

という、謝罪文が掲載されています。

 

 

この問題について解説します。

 

 

 

 

区はさておき現場の保育園はわからなかったのか?

 

誤りがあったと言っていますが、保育園側はそれに気づけなかったのでしょうか?202248日、山口県阿武町の職員が、463世帯分の新型コロナウイルス対策の給付金4630万円を誤って1世帯に振り込んだ事件があったばかりですから、葛飾区内にある87か所の保育園のどこかは不正取得に気づいていたのではないかと疑う人もいると思います。

それはほぼありません。保育園側はわからなかったと思います。

 

その理由を挙げると

①「パート保育士等加算」という補助金葛飾区独自の補助金であるということ

葛飾区は他の区に比べ、要綱など加算に関わる条文の掲載があいまいであるというこ

 

が挙げられます。

 

まず①についてですが、私が住む地区には存在しない補助金です。東京都内の他の区にも、パート保育士加算は存在していますが「11時間保育の実施のためのパート保育士の雇用に要する経費」という延長保育に対しての加算を制定しているんです。

それに対して、葛飾区は延長保育と限定しないパート保育士加算を設けているようです。

続けて②についてですが、この記事を掲載するにあたり、葛飾区のホームページを徹底的に調べました。まず要綱が読みにくい、しっかり掲載していない、という面から他の区に比べいい加減だと思います。

福祉系、特に保育園はあくまでも都道府県・市町村からの委託事業です。すべて所管庁・役所の指示が絶対であり、現地監査等も受ける立場であります。そのため、保育園側は条文・要綱を読み込み、制度理解をして運営をしなくてはならないという部分があるんです。それなのに、今回問題になっているパート保育士等加算について理解するために、要綱やQ&Aを調べても出てこないんです。それなのにどうやって不正取得ができるでしょうか?

 

また、ニュースでも取り上げられていましたが、保育園の委託費・加算関係は複雑な面があります。

どうして複雑かというと、その補助金の出所が国なのか、都道府県なのか、はたまた市町村なのかで分かれて申請をし、補助金を受け取っているからです。都道府県関係ならまだしも、国からの委託費や処遇改善(Ⅰ)などは地域差を是正するため全国一律の支給ではありません。そのため、計算する保育園側もその複雑さのため、措置から委託費に変わってからは、役所より専用のExcelファイルが送付され、そのファイルに入力することが多くなりました。

このファイルが今回間違えていたというわけです。このExcelファイルはパスワード設定されていることが多く、中身、特に関数を変えられないように出来ているため、保育園側は言われた通り入力しているだけなんです。

 

さらに87か所の保育園が葛飾区にあるといいますが、この保育園にどれだけの事務員がいたかという問題もあります。葛飾区を所在地にしている社会福祉法人38か所しかないんです。その中で保育園を運営していない法人もあるでしょうから、保育園で計算業務をしている事務員の実態数は30人を軽く下回るはずです。ということは、他の区に席をおいている事務員や計算業務の委託先が計算しているということになり、葛飾区の独自加算を理解し、計算業務をしていた事務員は30人以下だったということも、今回の問題ではないでしょうか?これは東京独自の問題だと思っています。

 

以前に東京についてまとめた記事も書いていますのでご覧ください。

nu-so.hatenablog.com

 

 

 

返還を求める金額について

 

葛飾区の区議が算出した額では4年間で5億円にも上るとされています。保育園の多くが申請していたとされていますから、恐らく区内保育園87箇所が元としているため、

 

1園あたりの1年で過剰に受けた補助金額は

 

500,000,000円 ÷ 87箇所 ÷4年間 ≒ 1,436,000

 

となります。保育園は1年間で140万円ほど多く補助金を受けていたということです。

 

 

葛飾区のパート保育士の平均時給は、1,0451,800円 

最大で年225万円(雇用保険抜き)くらい受け取っているパート保育士もいると思います。

それでも扶養控除内で働く人が多いでしょうから、人件費は130~140万円で±がないくらいではないでしょうか?

ですが、今回の補助金はその人件費を倍受け取っていますから、人件費に多少の差はあったとしてこの140万円はほぼパート保育士人件費外に当てられていることになります。

 

1年で140万円とありますから、4年で500万円くらいの返還義務が発生してきます。

 

いくら大人数の保育園があったとしても、年間の経常収入は2億円くらいですから、どうあっても前期末残高を取り崩しての返還しか保育園側は手段がないと思われます。

返還には理事会を経るのはもちろん、保育園には前期末取り崩しのルールがあり、経常収入の3%以上は所管庁への事前協議が必要になります。

 

前期末支払資金取崩額≦ 事業活動収入計(予算額×3%

 

一般的な保育園の経常収入は15千万程度ですから、経常収入の3%400万円程度の計算になります。

つまり、絶対所管庁(葛飾区)にお伺いをして返還することになります。

お上が間違えたのに、お上に取り崩してよろしいでしょうか?とお伺いしなければならないんです。

 



 

最後に

保育園の加算関係で区長クラスが謝罪文を出すのは異例なことだと思います。それどころか今まで聞いたこともありません。

区側は返還に応じない園には民事訴訟も視野に準備を始めていると思います。ということは、保育園は誤振込に気付いてから5年間は返金義務が発生しているので、毎年分割で返還する保育園も出てくるのではないでしょうか?

 

葛飾区は結果がわかり次第、報告するとありますので、詳細が分かり次第、記事を追加したいと思います。

 

この後はこちらをご覧ください。

nu-so.hatenablog.com

 

nu-so.hatenablog.com

 

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他のニュース参照元

 

東京・葛飾区が保育園への補助金を“数億円”誤支給か 保育士の人数を2倍で計算 abema  6/9

https://news.yahoo.co.jp/articles/f04a9e7aaf14b6c134c7cde1c1b1050cc861ef37

 

東京 葛飾保育所への補助金 4年間誤って多く支給 調査急ぐ NHK 6/10

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220610/k10013665541000.html

 

保育所補助金4年間過大支給 算定ミス、数億円か 東京都葛飾区 時事 6/10

https://news.yahoo.co.jp/articles/d5748710d6df9c67ae726c5a31aadc521c5ca6f4

 

4年間で“総額5億円”か・・・葛飾区が保育所補助金“誤支給”なぜ? 6/10

https://www.youtube.com/watch?v=uhf_31xna6U

 

東京・葛飾区が補助金を“誤支給” 4年間の計算ミスで保育園に「数億円」か…返還を求められた園側は困惑 FNN 6/9

https://www.fnn.jp/articles/-/372517