ヌーソの皿の上

福祉とpc関係の記事です

福祉業界のブラックボックス・・・

 

障がい者福祉事業の未来図について

先日の記事で掲載しましたAIと福祉業界の未来図の中で、障がい者福祉事業、就労移行事業について記載をしていませんでした。

詳しくは

nu-so.hatenablog.com

記載しなかった理由は、高齢者福祉事業・児童福祉事業とは利用者層が違うので、AI化が進むことで障がい者福祉事業特有の問題が発生するというのは考えにくかったからです。ですが、福祉ビジネス以外の、一般的な企業のAI化が進むことで抱える問題と同じく、職種が減るという問題は存在します。
 AI化が進むことで社会に及ぼす影響は、一重に「人件費」との兼ね合いです。どんなに重要で必要不可欠な職種だったとしても、高給な人件費がかかるとなれば企業はAI化を導入するはずです。AI化することでその職種の代替ができるとなれば、その分だけ人件費を落とすことができます。AI化が進むということで、企業は潤いますが、高給な職種が減るということはあり得るのです。これがごくごく一般的な企業で起きるということは、障がい者事業も同様のことが起きるということです。就労支援でせっかく高度な技術を身に着けることに成功したとしても、高い給料を望めばAI化されてしまうということが起きるのです。特に知的障がい者の人たちが独立し、一人暮らしの夢を見ることに水を差しかねない状況が迫っているといえるのです。そのためにも、障がい者福祉事業は下請け事業だけでなく、積極的に独自の事業を開拓し、作業工賃が回収できる事業を目指す必要性に迫られるといえるのです。
ですが、問題はそれだけではありません。

福祉ビジネスの肝を覚えてやろう

話は少し変わりますが、私は一時期、会計などの事務職についていたことがあります。介護福祉士などの資格は持っていても、全く会計など習ったことがないのに、業種替えしなければなりませんでした。でも私はこの時、業種替えはチャンスだと思っていました。それは事業の「ブラックボックス」を知ることができると思ったからです。福祉ビジネスの肝を覚えてやろうと意気込みました。
数年、会計の仕事をした結論から申し上げますと、福祉ビジネスに「ブラックボックス」など存在しませんでした。そもそも私が事務職になった頃から、福祉事業の情報開示が求められはじめ、今では財務諸表がいつでもインターネット上で見られるようになりました。財務諸表を見ていただければわかるかと思いますが、売掛金や買掛金が存在しないですし、社会福祉法人であれば税金もほぼ存在しません。とてもシンプルな会計が社会福祉法人会計なんです。気を付けるといったら未収未払や預かり金の額を注意するくらいでしょうかね。

もうタイトルを回収してしまいましたが、ブラックボックスはなくても福祉事業における肝は少し理解できたつもりです。
福祉事業の肝はやはり「人」です。

社会福祉法人の淘汰

福祉事業は巨大な法人よりも、一法人いち施設が多いと言われています。もう数十年、社会福祉法人の淘汰が必要だといわれてきましたが、ほとんど進捗がないと感じています。その理由の一つは、制度改正の多さにあります。介護保険や委託費収入の基準が数年に一度変わるとなれば、巨大な法人はそのたびに色々な対応に迫られます。ですが、小さな法人であれば、エッジが効くので新たな制度改正に柔軟に対応できるのです。社会福祉連携推進法人の推進を厚生労働省は進めていますが、同時に制度改正を繰り返すことはブレーキとアクセルを同時に踏んでいるようなものなのです。

でもこれからは小さな法人の運営はより難しくなると思います。利用者の確保よりも、人材難である職員確保に苦戦するからです。
日本はもう数十年、地方都市の活性化、「村おこし」をしてきました。コロナが後押ししたところもあり、地方で住む若者も増えたとテレビでは報道されていますが、果たしてどれくらい増えたと言えるのでしょうか?コロナ後もやはり大都市への一極集中はとどまることはないと思っています。

人が集まるということ

なぜ、「村おこし」「地域活性」がうまくいかないのか、ずいぶん昔は悩みました。
ですが、一つ答えが見つかりました。答えはシンプルでした。人は、人のいるところにしか集まらないんです。

どんなにいい条件や良い立地である場所が手に入っても、人がいなければそこで事業を起こすことは難しいですよね?どんなにきらびやかな物や話題の店舗が地方都市にきても、あの田舎独特の夜の寂しさは紛らわすことはできないとは思わないでしょうか?人のいないところには人は集まらないことが、「村おこし」の失敗からわかったことです。

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もぐもぐ


人に左右されるからこそ

これらはすべて冒頭の障がい者福祉事業も同じことがいえるんです。これからの日本で地価が安いからといって、地方に障がい者ユートピアを作ろうとしても人は集まらないんです。それどころか利用者、従業員両方どちらも集まりません。
今、地方都市で事業が安定している障がい者福祉事業があっても、10年~20年先に同じ場所で事業を成り立たせることは難しい時代が近づいているのです。

人口減少が顕著になる日本で、これからも福祉ビジネスを続けるにはAIよりも大事なのは、「人」です。すべて人なんです。
人のいるところとなれば、大都市で事業を行う必要性があるのです。
人がいるところに人が集まる。福祉は人の集まるところでしか行えない事業なのだと思っています。それが福祉事業のブラックボックスの答えだとも思っています。