私は特養や老健が措置の時代から、福祉業界で働いています。
私が入職したころは、「これからは福祉の時代だ」「介護事業が伸びる」などとまことしやかに語られていました。
思えばいろんな人が、入職してきました。そして夢を語り、転職していきました。
一番印象に残っているのは、「もうかりますよ」といいながら、ヘルパー事業に転職していった人のことです。当時の私は、財務の知識は皆無で、そのまことしやかに語られる噂も真に受けていたので、なんだか新たな世界に飛び出すその人をうらやましく思ったものです。
誤解1:施設収入には上限があるが在宅にはない
当時の素人な私でも、施設収入には限界があることは分かりました。施設には定員があるからです。100床なら100人しか入れませんしね。そうか国の政策は「脱施設」を謳い、高齢者や障がい者福祉は在宅、地域で生活をできるようになった。だから福祉で儲けたい人は在宅福祉なんだと思ってしまいました。
それに100床を埋めることの難しさも感じていました。特に高齢者事業は流動的な部分があり、ひと月の稼働率を97%以上(空所日数を1日以下にする計算)にするためには、入所に空きが出たらすぐショートステイでカバーをするようなことが、昔は流行っていました。ちょっと前だと宿泊デイなども同じ手法をしていましたよね。でもこのサービス、介護する側・受ける側には大変負荷が強いんです。本入所の利用者が入るまでの、ほんの数日間しか利用できなく、利用者も状態が安定しないため、夜は不穏状態に陥りやすいんです。ショートステイ利用者が介護施設に慣れるためと、その家族に介護のお休みを取ってもらうためのサービスなので、介護職員としては負荷が強いんです。その受け側をしていたので、施設というマスを埋めるのはこんなに大変なのかと思っていました。
それなら在宅生活を長く続けられる事業のほうが、高齢者のためになるし、そして定員がない。と当時の私は考えていたと思います。
誤解2:病院の様に儲かる
昔、どこの病院にも外来と入院がくっついていた記憶があります。
では今はというと、もう誤解を生む言葉ですね・・・。 どんな病院も外来診察はあるんですから(汗) え?外来があるように思えない病院をみたことがある?えーっとあるはずです(笑)
病院は外来診察をやる方が大変なんですよ。患者の診察者数って、デイサービスや飲食店の様に、いい食べ物やサービスがあれば毎日必ず決まった人数が来てくれる保証がないので。
それよりも昔と違うのは、入院できる病院の数なんです。今入院ベッド数を増やそうとしても、ほとんどの都道府県では受け入れられないと思います。特に高齢者など慢性期の患者がメインとなればです。
これも介護認定を受けた人は、できるだけ在宅での生活をしてもらい、慢性期の病院への入院を控え医療費を抑えたいという政策の意図があります。
でも、入院は福祉施設より儲かるのはなぜか?単純にお医者さんがいるかいないかの差です。
福祉施設職員の高所得者で、年収1000万円級ももらえている人ってごくごくわずかです。でも病院って福祉施設と同規模であればお医者さん、師長クラスは年収1000万円の収入です。同じ高齢者を扱い、利用者の本人負担額は同じなのにです。もちろん1000万円クラスの年収を約束しないと医者が来てくれないという考え方もできます。ですが、小さな外来診察の病院であれば山のように潰れていますよね?ということは医者だからといって必ず1000万円クラスの年収が約束されるわけではないし、医者がいれば必ず儲かるわけでない。簡単に言えば医者+病院には儲け方があるということです。特に慢性期であればいくつかの条件をクリアし、薬剤部門とのやり取りができれば、MRIや高度医療も必要なければ、先発医薬品も使う必要がないというところがみそです。
そんなことは露知らず、病院は儲かる≒福祉施設は病院のように儲かるのでは?というドラマかなにかの影響を当時は私は受けていましたね。
今思えば
そんなことを思い出していると、大昔の福祉施設の職員駐車場には高級車が止まっていましたね。大体が、福祉施設を建てた創業家は土地持ちの大地主が多かったので、土地を売ってのお金もあったのでしょう。だから買えたのであろうに、頑張れば高級車が乗れるんだなーと思ってたこともありました。
あれから数十年、福祉で儲かる方法なんて見たことがありませんでした。
今思えば、「もうかりますよ」といった人に憧れた自分は青かったなーと思います。もしかしたら成功しているかもしれませんが、同じ業界にいてその人の名前を聞き及ぶことがないので、きっとその人も今頃苦労しているんだろうと思います。
昔私の上司が言っていました
「福祉って、生活に困っている人を助ける仕事なのに、その人たちを支える側が高収入だなんてありえないだろ?」
と。おっしゃるとおりでした。