ヌーソの皿の上

福祉とpc関係の記事です

介護崩壊の未来図

先日こんな記事を書きました

nu-so.hatenablog.com

土曜日の記事は時間がないので短めにしているんですが、書ききれなかったので、こちらで続きを書いてみたいと思います。

前回は、徴兵制ならぬ懲介制がひかれるのではないか、という記事に対して私見を書きましたが、もう少し未来の介護のことを考えてみたいと思います。

その記事の中で私は、「介護職員は最悪一人でも施設を回せる」と書きました。
ちょっと肉付けが足りなかったと思うので書き足せば、将来、スーパー介護職員がどんどん生まれるとかのたぐいの話ではありません。

施設は介護保険上の基準配置が決められているだけで、その基準を満たさなければ介護報酬を減算されてしまうので、施設の介護職員はいつも募集しているイメージがあるだけなんです。
何をもって、足りてる足りていないかというのは、特養・老健だろうとはたまた有料老人ホームであろうとも、もらえる介護保険報酬上で基準でしかありません。

極論、日中帯100人の利用者に対し職員が1人だろうと、夜、職員が誰もいなくなるような施設であろうと、高齢者から見れば住もうと思えば住めるんです。安心安全な場所、人の住める場所かどうかは別にです。

ここから言えるのは、未来永劫、介護保険施設はなくならないし、介護保険法も崩壊することはないということなんです。
これからどんどん職員の配置基準を減らしていけばいいだけのことですから、一人でも介護職員がいれば介護施設を名乗れる時代が来るかもしれないんです。利用者さえ確保できれば、一人しかいない介護施設ですから、人件費は安いでしょうし、施設運営側が儲けることこの上ないわけです。

そんな基準緩和は起きない、人の人権をなんだと思っている?と反感を持つ人がいると思います。でも残念ながら、労働力不足の日本で、今以上に介護職員が増えることはありません。こんなに円安が続いている影響で、日本で働きたいと思う海外労働者も減ってきているのも事実です。そもそも人がいないのに、「基準」だとか、「高齢者の人権」などを強く訴えても、施設はおろか、介護職員は増えないじゃないですか。

私が思う高齢者福祉の未来は、今の人員配置基準が満たされない施設がかろうじて運営できるだけで、施設数も今よりは減っていくと思っています。同じように病院も減っていくでしょう。
では未来の我々高齢者はどこに行くか?この答えは地方に行くとわかると思います。過疎化の進んでいる市町村って、昔より話題にならなくなったと思いませんか?昔は、過疎化が進んでいる町は、「崩壊して誰も住まなくなる」なんて言っていましたが、あれから数十年、話題にすらなりませんよね?私は田舎に電車で小旅行するのが趣味なので、よく地方都市を回っていますが、かなりの限界集落だろうと、夜になったら家に灯りは灯るものなんですよ。その集落に住んでいるんです。昔は高齢者も地方から中核都市に人口が移動すると考えられていましたが、その人口移動もそろそろ横ばいになった印象を受けています。

つまり地方の高齢者はどこに住んでいるかと言えば、施設などではなく、自宅に住んでいるんです。
ありきたりな答えでしょうか?でもよく想像してほしいんです。今、地方に老人ホームはたくさん建設されているでしょうか?では介護保険サービスが選べるほどあるでしょうか?答えはどちらもNOですよね?これが未来の高齢者福祉の世界だと私は思っています。入る施設もなく、介護保険サービスもない、都市部にいけば施設はあるが、高額で入れなくなるのが未来の日本なわけです。

ここまでは、多くの人が想像できる話だと思います。
では、未来の高齢者が自宅で住み続けるとどうなるかについて考えてみます。
想定する世界は、高齢者は死んで平均寿命も落ちるとか、結局病院に入るとか、お金を積んで施設に入る、なんて安易な世界ではないはずです。入るところはないし、そもそも入っても十分に職員はいないんですから。
もっと阿鼻叫喚な世界なはずです。

その想像するために欠かせないのは、なぜ高齢者は寝たきりになっていくかの問題です。答えは一つではありません。認知症だってありますし、けがが起因するかもしれません。でも総じていえば、回復能力がないからです。本来、人は回復能力があるから、病院という施設ができ、治療をして治癒に専念してきました。でも、病院に入ろうと、生きているのに回復が見込めなくなるのが高齢者なんです。しかも回復を待たずに、どんどん生活能力(ADL)が落ちていく状態になります。これが廃用性症候群です。
病院も、施設も、介護保険サービスもない高齢者福祉の世界は、「廃用性症候群」の率が今より増えていく恐れを持っています。認知症は治療薬が出てきて、ある程度の回復の兆しはあるにしろ、この廃用性症候群の回復薬、特効薬というのはまだありません。

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廃用性症候群がすすめば、一人で住んでいても生活ができません。訪れる人もいないでしょうから、糞尿の後始末もできず、そして増える死因は「餓死」ということになりうると思えます。

近年、老衰が死因の第3位までになったとニュースになっていましたが、もしかしたら未来は孤独死・老衰の次に餓死が増える時代が来るかもしれないと想像しています。