ヌーソの皿の上

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介護保険サービス 契約解除について

介護保険サービス(特養・ケアハウス・訪問介護通所介護・居宅介護支援事業所等)を利用するときには、契約書を交わします。

 

この契約書、それぞれの事業所・施設で独自のものがありますが、実は大元になる契約書があります。それが今回紹介する、モデル契約書です。

 

このモデル契約書、おおよそ都道府県や各団体で無料ダウンロードができます。

 

今回は、そのモデル契約書を比較したいと思います。

 

 

比較するといっても、おおよその中身はそれほど大きな違いはありません。

そのため、今回は契約書において「事業者側からの契約解除」にスポットを当てたいと思います。弱者救済が本懐である福祉事業所のアンタッチャブルは、どのようになっているか、どう定めているかを比較します。

 

 

いきなり脱線して、押印はどうなっているのか

厚労省

https://www.mhlw.go.jp/content/000918580.pdf

問1.契約書に押印をしなくても、法律違反にならないか。

・私法上、契約は当事者の意思の合致により、成立するものであり、書面の作成及びその書面への押印は、特段の定めがある場合を除き、必要な要件とはされていない。

・ 特段の定めがある場合を除き、契約に当たり、押印をしなくても、契約の効力に影響は生じない。

 

難しい表現ですが、介護保険サービスのような民間の書面では必ずしも必要ではないということです。

たまに勘違いしている人がいますが、押印とは「記名押印」の略であり、本人であるという証明をするものです。それに対して、捺印というのは「署名捺印」の略です。どちらも、印を押すことを指しますが、李商社と契約書を交わすときは署名捺印が正しいと思っています。

 

 

全国社会福祉法人経営者協議会 「指定介護老人福祉施設」の場合

https://www.keieikyo.com/

 

https://www.keieikyo.gr.jp/mypage/data/p105.pdf

 

第 14 条(契約の終了事由)

 利用者は、以下の各号に基づく契約の終了がない限り、本契約に定めるところに従い事業者が提供するサービスを利用することができるものとします。

 一 利用者が死亡した場合

 二 要介護認定により利用者の心身の状況が自立又は要支援と判定された場合

   但し、利用者が平成 12 年 3 月 31 日以前からホームに入所している場合、本号は、

平成 17 年 3 月 31 日までは適用されません。

 三 事業者が解散命令を受けた場合、破産した場合又はやむを得ない事由によりホームを閉鎖した場合

 四 施設の滅失や重大な毀損により、サービスの提供が不可能になった場合

 五 ホームが介護保険の指定を取り消された場合又は指定を辞退した場合

 六 第 15 条から第 17 条に基づき本契約が解約又は解除された場合

第 15 条(契約者からの中途解約等)

1 契約者は、本契約の有効期間中、本契約を解約することができます。この場合には、契約者は契約終了を希望する日の○日前(※最大7日)までに事業者に通知するものとします。

2 契約者は、第 7 条第 3 項の場合及び利用者が入院した場合には、本契約を即時に解約することができます。

3 契約者が第1項の通知を行わずに、利用者が居室から退去した場合には、事業者は契約者の解約の意思を確認するものとします。

4 前項において、契約者が解約の意思を表明した場合、その意思を表した日をもって、本契約は解約されたものとします。

5 第 6 条第 6 項の規定は、本条に準用されます。

 

第 16 条(契約者からの契約解除) 略

 

第 17 条(事業者からの契約解除)

 事業者は、契約者又は利用者が以下の事項に該当する場合には、本契約を解除することができます。

 一 契約者が、契約締結時に利用者の心身の状況及び病歴等の重要事項について、故意にこれを告げず、又は不実の告知を行い、その結果本契約を継続しがたい重大な事情を生じさせた場合

 二 契約者による、第 6 条第 1 項から第 4 項に定めるサービス利用料金の支払いが○か月以上(※最低 6 か月)遅延し、相当期間を定めた催告にもかかわらずこれが支払われない場合

 三 利用者が、故意又は重大な過失により事業者又はサービス従事者もしくは他の利用者等の生命・身体・財物・信用等を傷つけ、又は著しい不信行為を行うことなどによって、本契約を継続しがたい重大な事情を生じさせた場合

 四 利用者が連続して 3 か月を超えて病院又は診療所に入院すると見込まれる場合もしくは入院した場合

 五 利用者が介護老人保健施設に入所した場合もしくは介護療養型医療施設に入院した場合

 

 

 

一般社団法人 神戸市老人福祉施設連盟  ケアハウスの場合

https://www.kobe-roushiren.jp/download/

 

 

第十一章   契約の終了 

第29条(契約の終了)

      次の各号のいずれかに該当する場合には、この契約は終了する。

      ① 契約者が死亡した場合

② 事業者が破産した場合又はやむを得ない事由によりケアハウスを閉鎖した場合

③ 施設の滅失や重大な毀損により、 サービスの提供が不可能になった場合

④ ケアハウスが介護保険法にかかる指定等を取り消された場合又は指定を辞退した場合

⑤ 第18条3項又は第30条、第31条にもとづきこの契約が解約または解除された場合

 

 

第30条(契約者の解除権) 略

  

第31条(事業者の解除権)

1 事業者は、契約者が故意に法令違反その他著しく常識を逸脱する行為をなし、事業者の再三の申し入れにもかかわらず改善の見込みがなくサービス利用契約の目的を達することが著しく困難となったときは、文書により、○○日以上の予告期間をもってこの契約を解除する。

① 契約者が、契約締結時及びその後の申請手続きにおいて、虚偽の記載及び申告を行った場合

② 契約者による利用料金等の支払いが、催告にもかかわらず3ヶ月以上遅延した場合

③ 契約者の行動が、他の入居者又はサービス従事者の生命、身体、健康に重大な影響を及ぼす恐れがある場合、又は、共同生活の秩序を著しく乱した場合、及び事業者の社会的信用を失墜させた場合

④ 契約者が、事業者の承認を得ないで施設の建物や附帯設備等の造作・模様替えを行い、かつ事業者からの求めにもかかわらず原状回復をしない場合

⑤ 契約者またはその家族が、事業所またはそのサービス従事者に対して、本契約を継続し難いほどの背信行為を行ったとき

⑥ 契約者が、連続して3ヶ月を越えて施設を不在にした場合及び病院又は診療所に入院すると見込まれる場合、若しくは入院して3ヶ月を越えた場合。

⑦ 契約者が第24条(契約者の施設利用上の注意義務等)※の注意義務等に反し、事業者の催告に応じなかった場合

⑧ 契約者が第25条(契約者の禁止行為)※の行為を行った場合

2 本条にもとづき、本契約が終了したときは、契約者は直ちにその居室を明け渡さなければならない。

3 本条の規定による契約の終了後、退去までに事業者が契約者に対して発生した諸費用ついては、全額契約者の負担とする。

 

第24条 (契約者の施設利用上の注意義務等)

1 契約者は、専用居室を契約者の居室以外の目的に使用することは出来ない。

2 契約者は、共用施設、敷地をその本来の用途に従って利用する。

3 契約者は、居室を原状のまま使用する。但し、事業者の承認を得た場合は退去時に原状に復することを条件として、居室の模様替えを行うことが出来る。この場合の模様替え、その他契約者の希望による補修、改修の費用は契約者の負担とする。

4 契約者は、本契約を終了するに伴い居室を明け渡すときは、前項による原状回復、居室及び備品等を故意または過失により著しく破損又は損失した場合は修理若しくは取替えに必要な費用負担を行う。

5 事業者が、サービスの実施及び安全衛生等の管理上の必要があると認められる場合には、契約者の居室内に立ち入り、必要な措置をとることを契約者は承認する。但し、その場合、事業者は契約者のプライバシー等の保護について、十分な配慮をする。

6 契約者の心身の状況などにより、 特段の配慮が必要な場合には、契約者及びその家族等と事業者の協議により、居室又は共用施設、設備の利用方法等を決定する。

7 自立の契約者が、明らかに要介護要支援状態になった場合、事業者から要介護認定を受けるよう

指摘がされた場合は1か月以内に申請を行うよう努めなければならない。

第25条 (契約者の禁止行為)

契約者は、ケアハウス内で次の各号に該当する行為を行ってはならない。

① 敷地内での喫煙。  

② 契約者が、専用居室において動物を飼育すること。

③ サービス従事者又は他の入居者に対し、宗教活動、政治活動、営利活動などを行うこと。

④ 「入居ご案内」その他において事業者が定めた以外の物の持ち込み。

⑤ その他の騒音、迷惑行為。

 

 

新潟県 居宅介護支援事業所

https://www.pref.niigata.lg.jp/sec/kourei/1287435730178.html

(事業者の解約権)

第9条 事業者は、次の各号のいずれかに該当する場合は、文書により2週間以上の予告期間をもって、この契約を解約することができます。

利用者が故意に法令違反その他著しく常識を逸脱する行為をなし、事業者の再三の申し入れにもかかわらず改善の見込みがなく、本契約の目的を達することが著しく困難となった場合

二 利用者が事業者の通常の事業(又は送迎)の実施地域外に転居し、事業者においてサービスの提供の継続が困難であると見込まれる場合

2 事業者は、前項によりこの契約を解約する場合には、担当の介護支援専門員(又は地域包括支援センター)及び必要に応じて利用者が住所を有する市町村等に連絡を取り、解約後も利用者の健康や生命に支障のないよう、必要な措置を講じます。

(契約の終了)

第10条 次の各号のいずれかに該当する場合は、この契約は終了します。

一 第2条第2項に基づき、利用者から契約更新しない旨の申し出があり、契約期間が満了した場合

二 第8条第1項に基づき、利用者から解約の意思表示がなされ、予告期間が満了した場合

三 第6条もしくは第8条第2項に基づき、利用者から解約の意思表示がなされた場合

四 第7条に基づき、事業者から解約の意思表示がなされた場合

五 第9条に基づき、事業者から解約の意思表示がなされ、予告期間が満了した場合

六 利用者が介護保険施設へ入所した場合

七 利用者が(介護予防)特定施設入居者生活介護又は(介護予防)認知症対応型共同

 

 

生活介護若しくは地域密着型特定施設入居者生活介護を受けることとなった場合

((介護予防)居宅療養管理指導を除く指定居宅サービスの契約の場合)

八 利用者が(介護予防)小規模多機能型居宅介護を受けることとなった場合(訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導及び福祉用具貸与を除く指定居宅サ

ービスの契約の場合)

九 利用者が看護小規模多機能型居宅介護を受けることとなった場合(訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導及び福祉用具貸与を除く指定居宅サービスの契約の場合)

十 利用者の要介護状態区分が自立となった場合

十一 利用者が死亡した場合

 

 

兵庫県 ガイドライン

https://web.pref.hyogo.lg.jp/

 

重要事項説明書及び契約書のガイドライン(令和3年版)

契約の解約・終了

契約の解約方法について記載すること。利用者からの解約は一定の予告期間(1週間以内の期間とすることが望ましい。)までに通知すれば自由に解約できることとし、この場合には、解約料は徴収しないこととする。

事業者からの解約はやむを得ない場合のみとし、1ヶ月以上の期間を置き、理由を通知すること。やむを得ない場合とは、事業の廃止や縮小によりサービスの提供が困難となった場合、利用者が故意に不実を告げたり、病状等を故意に告げなかったりしたために、介護方法を大きく変更しなければならなくなる等円滑にサービスを提供できなくなる場合や一定期間以上(3ヶ月以上とすることが望ましい。)利用料金を滞納する等契約を継続できない程の行為を行い、事業者からの申し入れにもかかわらず改善されない場合等をいう。

 



 

以上から

 

いかがだったでしょうか?読み込むの大変ですよね。

ですが、都道府県が配布しているものは「著しく困難」や「やむを得ない」などあいまいな表現に終始し、具体的な内容は書かれてはいませんよね。

 

それに対して、団体が配布しているものは、かなり詳細な契約解除内容が記載されています。

 

本来福祉事業所は、都道府県が配布している内容で契約をしたいところですが、団体が配布しているものが増えてきているのは、それだけ契約に対してのトラブルがあったからだとは思わないでしょうか

 

契約するときにはせめて解除理由だけでも目を通してみてください