4月に軽度要介護者の介護保険はずしが話題になりました。
その発端になったのは財政制度等審議会財政制度分科会でした。
財政制度等審議会財政制度分科会の配布資料のうち社会保障(参考資料)
これに対して、
4/27 財務省から11の提言、次期介護報酬改定の行方に影響/斉藤正行氏 高齢者住宅新聞
https://www.koureisha-jutaku.com/newspaper/synthesis/20220427_04_1/
5/1 軽度要介護者の介護保険はずし。利用者負担の原則2割化。財務省が繰り返し提案する介護保険改革案 yahoo
https://news.yahoo.co.jp/byline/miyashitakumiko/20220501-00293355
5/17 「実態を無視した暴論」 ケアマネ協会、財務省の介護費抑制策に猛反発 JOINT
https://www.joint-kaigo.com/articles/2022-05-17-3.html
などとパッシングが上がっていました。
5/26には、政府の規制改革推進会議の医療・介護分野の答申案が出され、
人材難が見込まれる介護分野では、介護施設の入所者3人につき、少なくとも1人の職員を配置する現行の基準を特例で柔軟に運用
などと、着々と話が進んでいます。
重要な会議だったので、提言されるまでの経緯とその会議の概略をまとめていきます。
まず経緯
この件の順を追うと
財政制度等審議会 財政制度分科 令和4年2月16日の議事録によれば、
まず、
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社会保障費については、高齢化による増加、国債費につきましては、国債残高の増加によるもの
~中略~
社会保障費を「高齢化による増加分」に相当する伸びに収める必要がある
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と提言しています。
この「高齢化による増加分」の伸びとは、p28の3,900億円内程度を指しています。
その上で主計局長は
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利払費(利息払い)がマイナスで落ち着いてるのは ~中略~ それだけ(低い)金利の恩恵をまだ被っている。これが逆回転し始めると、~中略~ ものすごい歳出の拡大圧力が実はある~
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と心配していました。
ですが提言の次の月、3月よりアメリカの利上げが始まり、さらに日本経済も厳しい状況に追い込まれています。
そしてこの提言の次の日には、今年の2/17の規制改革推進会議で
先進的な特定施設(介護付き有料老人ホーム)の人員配置基準について
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/committee/220217/agenda.html
という書面議決が行われています。
その中には
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・デジタルテクノロジーの活用により人員配置基準を特例的に柔軟化することで、介護施設に関わる経験から、むしろ現場の負担が軽減され、介護の質が上がる可能性もある
・介護報酬が減額される場合、本特例を活用し介護職員の処遇改善を図るインセンティブが減殺される
・施設ケアがひっ迫するのは、平時ではなく急変時。日々のケアを薄く浅く軽減するよりも急変を起こさない、あるいは起こした時の対応が重要。
・できるところは少ない人材でやってもいいという選択はあるべき。
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抜粋
などの意見が挙げられていました。
この面に着目し、本会議で取り上げられたというわけですね。
会議の主な概略
分科会では、コロナや医療についても取り上げられていますが、
介護・障害・子ども・子育ての項目に注目し概略化します。
介護・障害
・介護サービス提供体制の効率性の向上の必要性
・・・人材の必要数と処遇改善について
・業務の効率化と経営の大規模化・協働化
①小規模な法人が他との連携を欠いたまま競争するということでは、介護の質の向上にも
限界があるため、経営の大規模化・協働化を図る
②介護サービスの経営主体は小規模な法人が多く、競争が必ずしもサービスの質の
向上につながっているとも言い切れないうえ、業務の効率化も不十分と言わざるを得ない。
効率的な運営を行っている事業所を指標にした介護報酬を定めていく必要がある。
・介護施設・事業所等の経営状況の把握
・・・障害福祉サービスは財務諸表の公表が義務化しているのに低調である。
・利用者負担の見直し
・・・介護保険サービスの利用者負担を原則2割とすることや2割負担の対象範囲の拡大を図ること、さらには現役世代並み所得(3割)等の判断基準を見直す。
・ケアマネジメントの利用者負担の導入等
・・・ケアマネジャーのサービスのチェックと質の向上にも資することから、ケアマネジメントに利用者負担を導入すべき。
・多床室の室料負担の見直し
・・・介護老人保健施設・介護医療院・介護療養病床の多床室については、給付費対象になっている居住費(室料+光熱水費)を除外する。
・区分支給限度額のあり方の見直し
・・・加算の区分支給限度額の例外措置を見直すべき(総合マネジメント体制強化加算・特別地域加算・緊急時訪問看護加算、特別管理加算、ターミナルケア加算 等)
・地域支援事業(介護予防・日常生活支援総合事業)のあり方の見直し
・・・介護予防・日常生活支援総合事業は、実効性の確保を法制上の整備を検討
・軽度者へのサービスの地域支援事業への移行等
・・・要介護1・2への訪問介護・通所介護についても地域支援事業への移行を検討
・軽度者に対する居宅療養管理指導サービス等の給付の適正化
・・・軽度者(要支援1・2、要介護1・2)の費用の伸びが顕著な状況であるため、請求の適切性を確認していく。
・障害福祉サービス等予算・利用者数の推移
・・・65歳未満の利用者数の増加の影響が大きくなっている。利用者数には大きな地域差がある。
子ども・子育て
・家族関係社会支出の国際比較
・・・欧州諸国と比べて低水準との指摘があるが、我が国の子育て世帯はネット受益(受益超過)である
・仕事と子育ての両立
①育児休業給付については、雇用保険の対象とならない非正規雇用労働者等は受け取ることができない。
②非正規雇用労働者等の子供の方が待機児童になりやすい事態が生じている可能性がある。
・子ども・子育て支援の安定的な財源確保
・・・・児童手当のあり方の見直し