ヌーソの皿の上

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岸田首相の“異次元の子育て対策”と保育現場で起きていること

「誰でも保育所利用」制度など創設へ 「異次元の少子化対策」原案 FNN 3/29

https://www.fnn.jp/articles/-/506691

“児童手当の所得制限の撤廃と高校生までの延長のほか、親が働いていなくても保育所に子どもを預けることができる「こども誰でも通園制度(仮称)」の創設を盛り込む方針。“

 

岸田首相、「こども誰でも通園制度」で少子化対策に自信も…「選挙対策」「保育士足らず」と疑問の声続々 SMATFLASH 4/3

https://news.yahoo.co.jp/articles/2a17a73fcb3144073e810820cf4469a43e522d04

” なかでも「本当にできるのか?」と疑問視されているが、親が働いていなくても、保育所を時間単位で利用できるようにする「こども誰でも通園制度(仮称)」の創設だ。

 

 現在、認可保育園に入園できる基準は自治体ごとに定められ、「月の就労時間」「妊娠・出産」「疾病・負傷」「介護」などによりポイントが与えられ、優先順位が決まる仕組み。今回の政府案はこうした条件をすべてなくそうというものだ。

 

 しかし、保育現場には困惑が広がっているという。都内の保育士がこう話す。

 

「いまは待機児童ゼロという自治体も多くなっていますが、それでも保育士の数や子供が過ごすスペースなどはギリギリです。新しい希望者がどっと来て、実際に受け入れることができる保育園がどれほどあるのか、心配しています」

 

 たとえば東京・港区は「待機児童ゼロ」だが、0~5歳児を自宅で子育てしている世帯は1233世帯、全体の20.7%にのぼる。このすべての子どもが保育園に行くことはないだろうが、仮に半数が希望したとしても、人手不足のなかで現場の苦労は想像にあまりある。 “

 

 

この問題について解説します。

 

 

 

「誰でも保育所利用」制度など創設する背景とそのメリット

 

この問題に関連したニュースも読みましたが、コメントとして少子化対策の一環だとおっしゃる方が多いようです。

ですが、それも問題の一部分でしかありません。

この問題の本題は「無園児」と呼ばれる未就園児対策なんだと、私は感じました。

 

無園児についてはこちらをご覧ください

nu-so.hatenablog.com

 

この記事は去年のものになりますが、抜粋すると

“未就園(保育所、幼稚園、認定こども園等へ入所・入園をしていない)で、地域子育て支援拠点や一時預かり等の福祉サービス等を利用しておらず、 関係機関においても目視による確認ができない児童(未就園)”

 

 

その対象者と実態数は

“0~5歳児を持つ家庭の2% 約13万人”

 

とされています。

そして、この家庭の約半数の親は孤独を感じており、その多くは10~20代の親御さんたちだということです。

 

就労したくても就労できず、社会とのつながりが希薄で収入も安定していない若年層家庭を救済する方法が、この 「誰でも通園制度」 なんだろうと私は思いました。

 

誰でも保育園を利用できるようにすることで、子どもの虐待防止、人権擁護、さらに障がい児のうち知的障がい児たちをできるだけ国のセーフティーネットに早くのせることで、社会からの孤立化を防ぎたいのがこの法案の骨子だと思えないでしょうか?

 

 

ではそのデメリットは

 

日本の出生数の減少は拍車がかかるばかりです。第2次ベビーブーム時からみればその半分である80万人以下の出生数まで右肩下がりをし続けています。

https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/19/backdata/01-01-01-07.html

 

去年より出生数が減り続けているんですから、保育園の定員が翌年のほうが増えるということはほぼなくなるということです。

 

であれば、保育園は定員を満たしていないのだから、未就園児の受け入れをする拡大分の受け皿は可能だろうと予測されたのだと思います。

 

ですが、そう簡単な話ではありません。

誰でも保育園利用が可能になるということは、どの曜日の稼働率が増えるかについて考えが及んでいないのではないかと危惧しています。

今は就労している親が対象ですが、その親たちが務める職場側も子育て支援の一環として積極的な土日の出勤は、増やしていないとは思わないでしょうか?

それを見越した上で、保育園側も土曜日の職員体制は通常の半分以下で勤務のシフトが回っています。それが、誰でも保育園利用となれば、「土日は休養がしたいので子どもを預かってほしい」という親たちの利用が増えることにつながるのです。

 

今もこのような利用方法は問題ありませんが、積極的な「だれでも利用可能」にするということは、その土日祝日利用も視野に行政は開園を強いる恐れがあるのです。

 

「保育園は子どもを預かるのが仕事なのだからそうなるのは当たり前では?」と考える方もいるのではないでしょうか?現在でも朝7時くらいから開園をし、夜19時前後まで利用可能にしながら、土曜日も利用できるように保育園はなっていますよね?現在の保育士配置基準から言えば、ぎりぎりの人員で開園をしているということも知ってほしいのです。配置基準についても緩和されるからとお思いでしょうが、土曜日も8割近く保育園が稼働してしまった場合、緩和した人員では保育士の休日が確保できないのです。

 

そして、土曜日稼働率が上がるということは、保育士に支払われている処遇改善手当も減る恐れがあります。

それはどのような場合かといえば、

園児の定員が減っても処遇改善手当というのは減るものなんです。そんな中この制度が導入されると土曜日利用ができない保育園も出てくるはずです。そういう保育園の特徴は保育士の土曜日休みが多い保育園だと思いませんか?土曜日の保育士全体数が足りなければ子どもは預かることはできません。となれば、保護者側もそのような保育園は利用しないですから、結果的にそこで働く保育士の処遇改善手当も減ることにもつながるのです。

 

どうお感じになるでしょうか?せっかくの配置基準緩和とだれでも通園可能は、シーソーゲームのような関係性にあるのです。

 





今保育園の現場で起きていること

 

保育園の定員割れについては説明しましたが、保育園に潜む問題はそれだけではありません。働き方改革+(プラス) コロナの影響でリモートワークが増えたため、11時間以上の預かり時保育(延長保育)の利用率が軒並み下がっているのです。これもいいことだとお思いになる方もいると思いますが、延長保育には補助金が支払われており、児童の利用有無に関係せずに、延長保育できる保育士体制を整えなければならないのです。つまりたった一人の園児利用だけでも保育士を2名近く配置し続けなければならないのです。保育士の余力を日中帯に集中することができないのがこの延長保育の特徴なんです。

 

さらに、全国で小さな都市計画という構想が進行されており、

https://www.mlit.go.jp/crd/city/plan/unyou_shishin/shishin02.htm

この影響で、駅直結型保育園の利用率が下がっているのです。

産業構造の過渡期にあるため、都市部の保育園利用が下がっている実態を知ってほしいと思います。

 

このように多くの問題を含む制度のため、より慎重な政策運営を願いたいです。