この記事を執筆するにあたり、事前に申し上げますが、これは介護職員の労働を酷使したいものではないのはもちろん、同胞である介護職員の地位や立場をおとしめたいものでもありません。
一つの方法であると提言し、日本社会に介護職員が増えることを望むものであります。
介護職員の働き場
介護職員と一括りにしても、どこでどのような仕事をしているかでも違ってきます。
まず、介護職員の働き場として
・特別養護老人ホーム(ショートステイを含む)
・老人保健施設
・養護老人ホーム
・グループホーム
・ケアハウス(軽費老人ホーム)
・デイサービス(通所介護・お泊りデイ)
・訪問介護
・サービス付き高齢者住宅 などなど
代表的なものでも以上のものが挙げられます。どれをとっても言えるのは、利用者は高齢者であり、そのほとんどの事業で夜勤があることが特徴的ではないでしょうか?肉体の酷使や綺麗・汚いの仕事以上に、職員の精神を蝕むのは、この変則的労働であるといっても過言ではありません。24時間体制でシフトを組む介護の現場において、なり手不足の問題はもう何十年にもなります。この点に一石を投じたいと思います。
計算方法がわかりやすいことと、夜勤帯を含め多くの介護職員を必要とするという観点から、特別養護老人ホームで計算をします。
特別養護老人ホームの収支状況
特別養護老人ホームを運営するのはほぼ社会福祉法人のため、WAMNET(https://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/top/)で調べればいくらでも社会福祉法人の収支状況は調べられます。
なので、正確な数字で記述は可能ですが、ここでは地域的報酬差やその施設の介護職員のなり手の問題から、おおよその数字で紹介します。
まず、前提として
利用者数・・・・・100床(要介護度は設定しない)
介護職員数・・・・常勤換算数33.3人
介護職員年収・・・430万円(平均値)
という特別養護老人ホームがあったとします。どれも平均値です。
この特養の年間収入は
2億3000万~2億5000万円(補助金を含む)
ぐらいになります。
これとは別に支出の大部分は人件費ですので、
年間人件費支出は
介護職員(常勤換算なのでパートを含む)・・・430万円×33.3人≒1億4千万円
その他の相談員・施設長・・・・・・・・・・・3000万円
合計 1億7000万円
ぐらいになるわけです。人件費率が75%前後までなるので、なかなか民間企業の参入は少ないのが現状です。
これは人件費だけでの計算であり、介護職員を募集するため求人広告を出す広告費があります。それには年間数百万~数千万円支出していますので、事業費事務費はもっともっと少なくなります。
介護職員というのは
平均年収430万円という数字を見てどのように感じられるでしょうか?思ったより高いと感じる方もいるのではないでしょうか?介護の世界は特にデフレに強く、かつリーマンショックや今回のコロナによる経済的打撃などには年収は左右されません。利用者である高齢者人口も右肩上がりです。介護という仕事は将来的にも安定した職業と言えるのです。
それでも、なり手は少ないんです。それどころかその安定さから、職業としてのセーフティネットとして位置づけられているように感じてしまうのです。つまり、就労年齢もほぼ関係ないので、「ほかで夢を追ってだめだったら、介護でもやるさ」があるような気がします。問題を起こした有名人が介護の世界に入るなどもその後押しになったと感じています。
また、いろいろな人が集まる職場だけに、人間関係が悪いと印象を持つ人も多いです。これに関しては肯定も否定もしません。人間関係についてはその人個人の考え方だと思います。一致団結・大団円な職場を追い求めるのであれば他を当たられるべきです。福祉の本業は対人援助です。だからこそ千差万別の人間性を否定する人だけは、うちの業界には来てほしくないと思っています。馬が合わない人がいてもいいと思う人が集まる場所だと思っていただければ、他の職種と差はないと思います。
ではどうやって介護職員を増やすか
前置きが長くなりましたが、自分の中ではそれほど劣悪な職業だとは思っていません。でもなり手が少ない以上、何か手を打たなければなりません。認定介護福祉士や認知症専門士、オレンジバンドに外国人ケアワーカーなど様々な試行錯誤がありましたが、まだまだなり手が少ないのです。
そこで最後のセーフティネットの職種ととらえられるのをやめてほしいと考えました。
そのためには、稼げる職種と変換をするのはどうでしょうか?
元になる計算
まず、年収430万円を時間給まで分解します。
年間休日を120日(年休は有給ですから含めません)とした場合、
365日-120日=245日
一日の所定労働時間が8時間だったとして
245日×8時間=1,960時間
430万円÷1,960時間=時給2,193円
介護職員の時給は2,193円とします。
ではパート職員の時給を2,193円とします。これでは週3~4日で3~4時間しか働かないパート職員が増えるだけと思われるかもしれません。ですが、扶養者控除内での労働に限定するからパート職員の長所が見えてこないのです。就労時間及び拘束時間を取っ払うためにパート職員契約を行うのです。
労使協定がいるとしても、パート職員に社保をつけます。
5時間パートで20日間(30日月として)労働として
5時間×20日×時給2,193円=月収219,300円
月収219,300円×12か月=年収2,631,600円
そうすると常勤職員をパート職員にするだけで、月7.5日分の職員が不足してしまいます。
職員側も年収が減ってしまいます。
ここで、パートになった職員ともう一つ契約を結びます。業務委託契約です。
業務委託契約
パート職員は直接の雇用計画とは別に、業務委託契約として60時間(7.5日分)以上契約を結ぶのです。
月収ベースで整理すると
業務委託費収入 時給2,193円×60時間=131,580円
月収
パート職員収入 219,300円
業務委託費収入 131,580円
合計 350,880円
ちなみにフルタイムのままの月収
年収430万円÷12か月=358,333円(30日月計算のため1万程度の差が出ています)
ほぼ差がなく支給されます。
となると・・・
大事なのは業務委託は60時間以上ということです。
介護職員が働きたいと思えば60時間以上働ける、働いてもらえるようにするのです。
フルタイムの介護職員や全て業務委託であれば、1日8時間、週40時間という労働基準に縛られてしまいます。その縛りなく働けるのがパート職員というわけです。
イメージとしては、一つの職場でパート職員と個人事業主を同時に就労するという方法です。とはいっても、パート職員と業務委託の比率は5:4位が限界だと思いますので、フルタイムより月10時間くらい多い契約が上限ではないでしょうか?
一番初めに計算したように年収を時給まで分解したので、労働そのものの対価としては下がらず、厚生労働省が推進している副業を同じ職場で行ってもらうというわけです。
働き方改革からいえば、1.25倍以上の超過勤務を月45時間まで行ったとして、123,356円稼ぐのとどちらがいいかという考え方もあると思います。でも超過勤務を全額請求などありえるでしょうか?職員側で遠慮する分もありますよね。フルタイム職員がすみずみまで行き届くような労働には時給が発生しない労働もあるはずです。
それを堂々と請求できる仕組みにしたいと思うんです。
さらに、介護の現場では有効な部分があります。常勤換算という言葉です。つまり5時間パートと3時間業務委託の人は、8時間労働になるので常勤換算上では1となるわけです。
介護保険・労働基準を両方クリアして、かつ副業もできる仕組みだと思います。
併用雇用という考え方です。
雇用者側の方はくれぐれも悪用はしないでください。