ヌーソの皿の上

福祉とpc関係の記事です

認知症になる心構え 前編

前回は認知症に罹患することについて記事にしました。
もしかしたら認知症は、防衛反応なのではということを書きました。

今回は、その続きで認知症になる心構えについて考えてみました。
ならないため、予防するための心構えはたくさんあると思います。

でも認知症になることがデフォルトでいずれなるものとしたら、どんな心構えが必要か?意外に長くなってしまったので、今回は前編です。


認知症って聞くだけで、ネガティブな印象がつくものですよね。

・今までできたことができなくなり
・家族の名前を忘れ、人間関係が悪くなった
・排泄も人の手を借りなければならなくなる etc.

などの印象が強いですよね。

でも、よく考えてみると「認知症」以外のものが混ざっていないでしょうか?

認知症というのはあくまで記憶障害です。
「今までできたことができなくなる」や「排泄の失敗」というのは、認知症が原因の動作そのものを忘れてしまうこともあるとは思います。ですが、高齢化による機能障害の可能性のほうが高いものと、混在して認識されていると思うんです。

では、もっとも問題になるものはと考えれば、認知症になってからも煩わしく感じるであろう人間関係の維持ではないかと思います。
現役の頃と違い、認知症になれば常に介護をしてくれる人がそばにいてくれなければなりません。
その介護する人とはどうやったらうまくやれるのか?
少し話が変わりますが、よく言われる話で、「あなたは何者か?」と問われたら何と答えるか?という問いがありますよね。

有名人で名の通っている人なら、
アインシュタイン」や「スティージョブズ」と答えられるかもしれません。
でもだいたいの日本人は、この問いに対して、職業を答えますよね?
そして、ニュースでも犯罪を犯した人に定職がなければ「職業不詳」とまで表記も出ています。

華々しい経歴のある人であればなおのこと、「元教授」「元代表取締役」など元までつけて自分を表現します。
この考え方って、日本人の「仕事」のこだわりと、それに対する驕り(おごり)を生んでいるように感じるんです。
もしサラリーマンだったとして、サラリーマンなのは何年あるでしょうか?今なら半世紀近くサラリーマンで働く人も多くなるかもしれませんが、人は働いても40年くらいですよね。
今の日本人の寿命が人生80年くらいだとして、働けてその半分くらいしかないんですよ。でも現役だったころの人生の半分で、自分を表現してしまっています。

残りのもう40年って、大半が誰かに頼って生きなければならない年月だと思うんです。
でも、自分の現役時代ばかりに目を奪われてしまうと、残りの40年がアディショナルタイム(ロスタイム)扱いになってしまいます。

「元社長」だろうが「元大物政治家」「発明家」だろうと、赤ちゃんの頃があり、親などに面倒を見てもらってきました。
そして、年老いればその輝かしい経歴に関係なく、老い、そして今までできていたことができなくなるかもしれないのです。

認知症になるための心得の一つは、その輝かしい自分を線引きし、過去のものとすることがまず第一だと思うんです。これは特に男性に多い傾向があるように思います。だからこそ男性は施設に入りたがらない、介護を受けたがらない理由だとも思うんです。

どんなに勲章をもらったり表彰をされるような現役時代だったとしても、今の自分ではないということです。そして、現役時代いくら職場で偉かったとして、高齢者施設に入った時には、介護員から見たら隣にいる利用者さんと変わりがなく見られていることを覚悟してほしいんです。

よくある話で、「元教師」だった方が施設に入ったら、「先生」と呼ばないと返事をしないという利用者さんがいたりします。それだけその教師という仕事に誇りを持っていたのかもしれません。
でもその誇りがあろうと、例えばお風呂には入らなければなりません。入浴を嫌うがために、入浴を勧める介護員に「しつこい」「失礼だ」なんて怒ることがよくあるんです。お風呂は疲れるし、人前で裸になるのは嫌だし、それどころかもし下着が汚れているのを見られたらそれこそ恥ですよね。現役の頃の誇りに関わるわけです。

でも心配しないでほしいのは、介護員からすれば「先生」と呼称しているだけで、「先生」だからといって特別扱いはしません。でもそれを良しとしたくないんですよね。
職業こそが自分だったからでしょう。でもそのネームバリューにこだわることが人間関係を悪くする要因になりかねません。
ましてや認知症という記憶障害になった時には、自分を肯定するものにすがりたくなるものだと思います。

自分が何者でもなく一個人として、例えお金を払っている介護員相手だろうと、まず人として敬うことができないと、認知症になっても人間関係に苦しむことになります。

年老いたときに「私はそんなに現役の頃のことにしがみついていない」と思っていませんか?
日本人の仕事に対するその固定概念の強さは、認知症になった時に表出するんですよ。後編は次週。