一般企業(民間)では聞きなれない言葉のようですが、都道府県や市町村などの所管庁の監査を受ける福祉施設の就業規則には、この「職務専念義務の免除」が明記されていることが多いです。
つまり性質上でいえば、「公務員の服務」に対しての「免除」を説明した規則ということです。逆に一般企業であれば、簡単に「特別休暇」などで処理できるものですが、このおかげで混乱している福祉施設の方がいるようなので解説していきます。
1.職務専念義務の免除とは
職務専念義務の免除(職専免・義務免)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%81%B7%E5%8B%99%E5%B0%82%E5%BF%B5%E7%BE%A9%E5%8B%99
こちらのウィキペディアを元に簡略化して説明すると
・国家公務員法及び地方公務員法には、「職務専念義務」という服務規定がある。
・この「義務」を免れる、免除される特別な定めが「職務専念義務の免除」
ということです。
基本、公務員はアルバイトなどの副業も厳しく禁止されているのはこのためなんですね。
2.該当する例
法律の独特な整理の仕方のため、求職・停職・有給・産前産後休暇などもこの規定の中には定められていますが、今回はその部分は省いて
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労働基準法7条には
公民としての権利を行使し、又は公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合においては、拒んではならない。
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とあり、具体的に①公民としての権利 ②公の職務 の2種類があります
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公民としての権利(労働基準法7条)
・選挙権
・被選挙権
・最高裁判所裁判官の国民審査
・特別法の住民投票
・地方自治法による住民の直接請求権
・行政事件訴訟法による民衆訴訟
・公職選挙法に規定する選挙人名簿に関する訴訟
・公職選挙法に規定する選挙または当選に関する訴訟
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb3991&dataType=1&pageNo=1
・衆議院議員その他の議員の職務
・労働委員会の委員の職務
・労働審判員の職務
・検察審査員の職務
・民事訴訟における証人の職務
・選挙立会人の職務
・裁判員の職務※
となっています。
3.例えば裁判員になった場合
想定されるであろうケースで一番わかりやすいのは、裁判員に選ばれたときかと思います。
この内容は、説明すると長くなるので、わかりやすかったこちらのページをご覧ください。
法務局:御協力 お願いします 裁判員制度
https://www.moj.go.jp/keiji1/saibanin_info_room_03.html
山形労働局:労働者が「裁判員」としての職務を行う場合は労働基準法第7条の「公の職務」に該当します
https://jsite.mhlw.go.jp/yamagata-roudoukyoku/roudoukyoku/gyoumu_naiyou/kijun/kantoku/01_5.html
そして問題になってくるのは休暇と賃金の問題です。
労基法には休暇制度を設け、付与するようにとありますが、有給か無給かという問題に発展しますよね。特に裁判員になった場合は、報酬が発生しますから有給の場合、賃金が2重で発生してしまいますよね。
この問題については、有給も無給も当事者の自由となっています。(昭和22・11・27基発339号)。ただし、労使間の取り決めと言えども、有給なのに裁判員報酬から給与を差し引くようなことは禁止されています。
労働者側から見た有給・無給それぞれのメリット・デメリットを説明すると
有給
メリット・・・・その日の賃金が2重になる
デメリット・・・年間定めている年次有給休暇が減る(特別有給休暇の場合は別)
無給
メリット・・・・年次有給休暇が減ることがない
デメリット・・・職場からの賃金はもらえない
といった形になりますね。
これは裁判員制度で具体的に説明しただけであり、すべての公民権の行使に該当するわけではありません。
4.該当しないもの
では、公民権に該当しないものはどのようなものがあるのでしょうか?
選挙の応援などの選挙運動
非常勤の消防職員の職務など
個人としての訴訟の行使(民事上の損害賠償請求)
とされています。こんなに少ないんです。
ただ、今回は「職務専念義務の免除」の話で、かつ福祉施設の場合を想定していますから、民生委員などはどうなっているのかが問題になってくると思います。
参照元1:政府広報 ご存じですか?地域の身近な相談相手「民生委員・児童委員」
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201305/1.html
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000116286.html
民生委員は、都道府県庁の健康福祉部長等や、市町村福祉事務所の民生委員担当者から、勤め先に対して民生委員、児童委員に対する便宜供与協力依頼が来る場合があります。
そのため勤め先によりますが、就業規則に民生委員(児童委員兼務)、農地委員、公安委員などは、その職務を遂行する場合、出勤扱いとする「職務専念義務の免除」の対象として載せられている場合があるんです。
ただ、都道府県庁・市町村福祉事務所からの公文書が、絶対の効力があるとも言えないようで、企業の就業規則に必ず載っているわけではありません。
5.そしてやっと本題
ここまでを整理すると「職務専念義務の免除」に該当するのは、①公民権の行使に該当するものと、②都道府県・市区町村からの依頼のあった職務に絞られるということです。
そして、これらの職務による報酬というのは、損失の補償であり、日当ではないということです。
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損失(例えば,保育料,その他裁判所に行くために要した諸雑費等)を一定の限度内で弁償・補償するものです。したがって,日当は,裁判員等としての勤務の対価(報酬)ではありません
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https://www.moj.go.jp/keiji1/saibanin_qa_others.html
以上から、
・個人が副業するために休暇申請に使う
・労働組合活動に使う
ものではないということです。
言いたかったのはこのことだけですが、随分長くなりました。
長文お読みいただきありがとうございました。