「お怒りですね、はりえさん」
「そりゃ怒ってるよー。娘さんにご飯食べさせないなんて(怒)」
「はりえさんが珍しくやる気ですもんね。ほんとは先週この話題を取り上げたかったんですが、一週遅れてしまいました。」
「ちょっとニュースの内容を整理してみましょうか。」
“小学生の娘に十分な食事を与えずに低血糖症にさせ、入院で支払われる共済金をだまし取ったとして、大阪・大東市に住む34歳の母親が傷害と詐欺の疑いで逮捕されました。”
“入院中の娘が母親から「食うなよ、寝とけ」、「夜も食べんとしんどいって言って寝とき」などと電話で言われていることに病院側が気づき、事件が発覚したということです。
警察によりますと、5年前の2018年以降、▼娘は、同じような症状で40回余り入院し、▼この入院に伴う共済金や保険金、あわせておよそ570万円が口座に振り込まれている”
引用元:NHK
https://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20230718/2000075806.html
“さかのぼって5年前から、娘に下剤を繰り返し飲ませていた疑いがあることがわかりました。”
引用元:容疑者「娘は難病、検査のため入退院を繰り返している」学校にウソ説明した可能性 医療機関で難病の確認とれず
https://news.yahoo.co.jp/articles/6068e1888f7b1db8ca43f81e134bc24aea4aa127
「よくわからないけど、食事をとらないほうがいい病気ってあるのかい?」
「娘さんはケトン性低血糖症の診断を受けているそうです。」
“~娘はケトン性低血糖症と診断されています。厚生労働省によりますと、幼児期に見られる低血糖症で、痙攣や嘔吐などの症状が見られるものです。”
“この女の子、全部で43回入院し同じ病院で39回入院していますが、病院側は「ちょっとおかしいな」とはならないですか?
~中略~
~聞いてる通りやろうとしたら、この子も夜寝ると起こせないんですよ、眠りが深くて」などと言われると~~ちょっと少し結論が出しにくくなっていた、というのもあるかなと思います。”
引用元:容疑者の娘「ママはもやしを食べていた、いいなと思ったけど怒られると思って言わなかった」低血糖症について小児科医は『症状だけでは故意性が認めにくい』【MBSニュース解説】
https://news.yahoo.co.jp/articles/06f873c8f9abe8dae30421cbfd9b98ca9ecf6375?page=1
「病院側もおかしいとは思っていたということですね。」
「じゃあ児童相談所はどうしてたの?」
「実際保護をした経過があったそうですよ。」
“通報は去年10月18日に匿名で「母親が子どもに食事を食べさせてない」「入院を繰り返しているのは母親が食事を与えていないからではないか」という内容のメールが届き、20日に大東市が調査をしたところ、虐待は確認できなかったということです。
1回目の通報から5日後の23日、再び匿名で「夜に子供がベランダに出されて、母親が大声で罵声を浴びせている」という内容のメールが届きました。
ただこの後も市としては虐待を確認することができませんでした。
そして11月8日、短期間に通報が相次いだため、見守りが必要な「要保護児童」に指定されたということです。”
引用元:「子どもに食事させてない」虐待疑う通報が去年2回 8歳娘を入院させ共済金だまし取った疑いで母親逮捕 発覚のきっかけは病院での“スピーカー通話”「娘のSOSだったのでは」
https://news.yahoo.co.jp/articles/564430b38a8e9865f7304b74375da6f34200c4a8
「また児相がやり玉に挙がっていますが、児相は虐待やネグレクトに対しての対応なんですよ。」
「私がブログで今まで取り扱ってきたもの、知ってほしいことは、ネグレクト一つにおいても育児との境界線はすっぱりとした線引きはないということなんですよ。ところが、今回の様に完全な犯罪になると、これは虐待の問題という範疇には入らないわけです。
それを児相の対応が問題とするのは違うと思うんですよね。
ただそのきっかけとして虐待があったことは間違いありませんが、でもこの問題をただの虐待として片付けるのは、問題の本質が見えなくなると思うんです。」
「なにいってるんだか、わからない」
「えー(涙)いや、その要するに犯罪は犯罪としてみてほしいということですよ。」
「ならそういえばいいんだよ、こっちにはネグレクトは犯罪みたいなものとしかわからないんだから。」
「・・・、はい(涙)」
「これは犯罪だということはわかったよ。」
「次に、この母親の人物像の話に移りたいんです。その前に、この母親がかけられている容疑について触れておきたいんです。」
「共済金をだまし取ったという詐欺罪、娘に下剤を飲ませて下痢にさせた傷害罪、入院中の娘に食事をとらないよう言いつけた強要未遂。などなど罪状に上がっていますが、一番の問題は子どもにご飯を与えなかったことですよね?」
「でもさっき話したような、難病(ケトン性低血糖症)があるんだから、そこは今段階でははっきりできないんだろうさ。」
「逆説的にいえば、下剤と共済金がなかったら、病院・児相ですら犯罪として見抜けなかった恐れのある話だとは思いませんか?」
「子供に食事をあげないのは保護責任者遺棄罪(刑法218条)が成立しますし、もしそれが原因でこの子が亡くなれば、保護責任者遺棄致死罪(刑法219条)だってありえた話なのにです。」
「それはあるだろうけどさ」
「話を戻して、母親の人物像の話を整理すると」
“「娘の病院代が足りない」と容疑者が7年前に離婚した元夫に金を無心してきたということです。
元夫は離婚する際に慰謝料500万円を払っていましたが容疑者に現金数万円を渡しその際に容疑者から「助かる」と言われたということで経済的に困窮していたとみられます。“
引用元:「娘の病院代足りない」母親が元夫に金を無心…離婚の慰謝料『500万円』受け取りもさらに要求 同時期に処方を受けた下剤を娘に飲ませ始めたか
https://news.yahoo.co.jp/articles/f7c5f6345685ef4309befdb49b732df2a81fa927
“娘を入院させる直前に知人男性から資金援助を打ち切られていたことが分かりました。
~中略~
容疑者には交際相手の他に資金援助を受けていた男性がいて、去年1月から毎月数十万円を受けとっていたという”
引用元:娘の入院直前に男性からの資金援助打ち切り…母親・縄田佳純容疑者の収入激減か 大阪・共済金詐取事件
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/617797?display=1
「職はパート従業員とあるけど、そんなにお金に困っていたのかい?」
「それについてはですね」
“交際相手を旅行に誘ったり、友人を岩盤浴に誘ったりしていたといいます。その他にも、エステや外食費にも充てていたとみられ、警察が裏付けを進めています。”
引用元:“共済金詐取”の母親 5年前から娘に下剤か 娘の入院直後に“旅行”“岩盤浴”の計画も【news23】
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/615765?page=2
「おそらく生活レベルを下げることができない人のようですよね。」
「人物像は分かったさ。それで、さっきのネグレクトの話と浪費症から何が言いたいんだい?」
「昔は、あえて子どもを病気にさせ、それを長引かせることで、懸命に看病をしたい親が問題になったのを覚えています?」
「ああなんかそんなのあったね?」
「これ、“ミュンヒハウゼン症候群”といわれる虚偽性障害で、一種の精神疾患とされているんです。この問題は病院側も事例を元に、厳しい目で親を監視しているはずなんです。
参照元:代理によるミュンヒハウゼン症候群
https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/abuse_8.pdf
今回の事件とは似て異なる話ですけどね。」
「そうだろうね、この母親はお金が欲しかっただけだから、もっと単純な話なんだろうさ。」
「でもミュンヒハウゼン症候群の疑いの目をもってしても、すり抜けてこのような事件に発展したということに、この事件の問題の大きさを感じるんですよ。」
「私にはこの母親は浪費症であることから、見栄っ張りな性格な人物像があるんです。見栄っ張りな人って体裁のいいことを言うところがあるんですよ。
病院側は複数回反復入院する親の場合、ミュンヒハウゼン症候群を疑うわけです。でもミュンヒハウゼン症候群の場合精神疾患ですから、もし対象が子の場合、例えば症状に対してツジツマの合わない回答をしてしまいます。そういう疑いの視点を持てば問題が発覚するはずなんです。それが、今回のような見栄っ張りで体裁のいいことをいう相手に対しては、その視点だけでは、事件性を見つけ出せないという問題があると思うんですよ。」
「社会的に子どもの虐待は問題視されていることはわかりますが、医療や福祉分野において、今後はより高度な視点を求められることになる事件だというのが、私の感想なんです。」
「やっぱりわからん、要するにみんなもっと頑張れってことだね。」
「えー(涙)、そんな風にまとめないでー」
「お金なんかどうでもいいんだ、それよりご飯を食べさせないのが悪いんだ~(激怒)」