障害者施設で食材費過大徴収 経済的虐待の疑い、厚労省が調査指示 9/21
障害者施設で食材費過大徴収 経済的虐待の疑い、厚労省が調査指示(朝日新聞デジタル) - Yahoo!ニュース
福祉事業会社「恵」
"利用者から食事の費用を過大に徴収していたことがわかった。障害者虐待防止法が定める経済的虐待(事業者の不当利得)の疑いがあるとして厚生労働省は同社の施設がある全国の自治体に対し、事実確認を指示した。
愛知県によると、昨年5月、岡崎市の障害者向けのグループホームで、食材費の過大徴収の疑いがある事案を把握した。県は同年12月に県内の別の施設で監査を実施し、実際にかかった食材費を上回る額を利用者から徴収していたことを確認したという。"
「経済的虐待」ですか、強い言葉ですね。
経済的虐待についてちょっとだけ説明すると
●高齢者の経済的虐待とは
「本人の合意なしに財産や金銭を使用し、本人が希望する金銭の使用を理由なく制限すること」
引用元:東京都福祉局 虐待の種類と程度
それに対して、
●障がい者の経済虐待とは
「障害者の財産を不当に処分することその他障害者から不当に財産上の利益を得ること」
EX.年金や賃金を渡さない、本人の同意なしに財産や預貯金を処分・運用する、日常生活に必要な金銭を渡さない、など
引用元:東京都福祉局 障害者虐待とは
似てるように見えますが、言い回しが違いますよね?
高齢者は「合意なし」「希望」という、本人の意思確認の言葉があるのに対し
障がい者は「不当」「処分」という、本人のうかがい知らないところで、「勝手に」という印象を受ける言葉なのが大きな違いといえると思います。
高齢者施設と障がい者施設の大きな違いの一つに
「預り金規程」
という規程が、障がい者施設には設けられています。
※もちろん高齢者施設に設けられている施設もありますし、障がい者施設なのに設けられていない施設もあります。
参照元:日本弁護士連合会
https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/legal_aid/format/data/kaigohoken_46.doc
この規程に基づき、支援員は障がい者の財産管理の支援も行っているんです。
障がい者がおろしてきたお金などを、事務所等で預かるので「預り金規程」というわけです。
この取り扱いの規程に則り、適切に対応していれば何ら問題は起きないように思えるかもしれませんが、なかなかそうはいかないんです。
厚労省にはこんなデータがあります。
引用元:「令和4年度使用者による障害者虐待の状況等」の結果を公表します
https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/001141991.pdf
虐待の種別の中でも、経済的虐待は圧倒的に多いことがお分かりになると思います。
その具体的な事例だとこのようなものがあります。
"○利用者の銀行口座から現金をおろし、利用者に渡さなかったり、利用者の通院費や衣類 等を購入した残額や利用者が必要としない物品を購入していた。
○利用者の勤務先から現金受け取りの給料等を利用者本人名義の口座に入金せずに着服 した。着服したお金は自動車やバイクのローンなどの返済、生活費に充てていた。 当該職員らは、退職及び解雇となり、被害額は法人が立替返済している。"
引用元:日本知的障害者福祉協会
http://www.aigo.or.jp/jinken/pdf/jian5%20keizai.pdf
預り金規程を設ける理由は、利用者自身の使い過ぎや、無計画な使用を抑制するために定めるものです。
その一方で、障がい者の方でも預り金規程に頼らず、節制した生活ができる方もいるわけです。
懸命に貯めたお金を、職権を利用し、無断使用している支援員・職員がいるので、このような事件になるのです。
このような事例については経済的虐待というのは、私も妥当だと思っています。
ここで今回の食材費過大徴収問題について振り返ると、文面にある通り
利用者から食材費以上の徴収を行うことは不正行為であることは間違いありません。
食材価格が毎月上昇する中、高騰する前に一部の食材を買いだめをするなどし価格の安定を測るなど、経営側の知恵を絞った結果かもしれませんが、一般の飲食店ではない以上不正は不正でしょう。
それでも「経済的虐待」と言われると首をかしげてしまうんです。
特に今回の場合、過大請求・水増請求ですから横領罪・業務上横領罪ですよね?
横領罪に比べ、虐待といえば暴行や傷害に類した意味が含まれますから、その意味合いや強調が強い表現になります。
指導する側が強い表現を使うということは、ある意味「見せしめ」的要素を含むわけです。
全容が説明されていないので不明な点はあるにしろ、この事業者は随分悪質な例だったことも想像できます。
ただその見せしめは、価格高騰で経営に苦慮する同業者他社たちに、恐怖を与えるものだということも知ってほしいです。