現在、父は老健に入っています。ありがたいことに認知症状は強いものもなく、介護認定も要介護1なんです。それなら施設ではなく自宅で介護もできる範囲と思うでしょうが、車いす生活な上に、家の段差が非常に多く、車いすでの生活ができるようになっていません。住宅改修も満度に使ってしまっているんです。かなり父も渋ったんですが、どうしても自宅での生活は厳しいと判断し、施設入所することになりました。
母も亡くなり、私の下の名前を呼んでくれるのは、この世界で父だけになってしまいました。なので、父にはどうしても私の名前を忘れないでと言っています。3年前、廃用性症候群が強くなった時に、かなり記憶が混濁したことがあり、一時的に私の名前を忘れたことがあったからです。それから父はリハビリを頑張り続け、今の状態を維持してくれるきっかけにもなりました。
その父を在宅で見ることは、転倒やケガとの隣り合わせであり、そこからの認知症状の悪化を考えると在宅生活はどうしても考えにくい状態にあります。
介護する職についていた身から、家族の介護を受ける身に変わったわけです。
介護職時代、どうして盆や正月くらい家族を引き取らないのかと思っていたことがあります。認知症状の強くない家族なら家庭で見たほうが本人も喜ぶのに、と安易に考えていましたが、今の父を自宅に招くことは、家の構造上父にかかりつけにならないと生活は難しいだろうという判断に至っています。今の私にはその時間を割くことができません。ましてや今は、お盆休みをもらえる福祉の職場は少ないのものです。
だからといって父への思いはあるので、施設に入れることを「姥捨て山」のようには思っていません。というより、私にすれば父という「人質」という感情さえ芽生えています。
父は体が不自由云々以前に、注文の多い性格です。「靴下を持ってこい」といわれ買って持っていけば、「靴下の長さが短い」といったり、パジャマは「足首がキュッとしまっているのは嫌い」といってみたり、先日も「バスタオルを買って来い」と言われたので持っていけば、「これは大きすぎる」と返されました。本当にめんどくさい人です(# ﾟДﾟ)
そんな父も関係しているのか、施設からの注文もとても多くなりました。
「介護保険証の写しを〇〇まで持ってきて」、「施設長が年に一度の健診をするので、家族は同行するように」など、そんなに細かい指示をだしてくるとは思っていませんでした。
極めつけは、金曜の夜、同僚との飲み会の席なのに、ケアプラン更新に伴い家族の意向を教えてくれと電話が来ました。今は対応が難しいと話しましたが、施設ケアマネ側の働き方改革上の問題なのか、今日のこの時間以外での対応はできないと強く突き放されました。施設の内情を知る身としても強くは断り切れず、同僚たちを待たせたまま20分くらい施設ケアマネ側の話を聞くことになりました。ケアプランの家族の意向確認って、家族が話すのではなく、施設ケアマネ側が話すんだっけ？と思いながらも、父に肩身の狭い思いをさせたくないと思えば、従順にならざるを得ませんでした。
その父が歯医者（複数回の受診をするわけではない）にかかることになりました。昨今の介護保険の加算は、口腔ケアに重きを持つようになりましたから、たかが歯程度とないがしろにはできません。お金がかかるのは仕方がないと思ってはいたんですが、施設から驚きの付け加えがありました。「通院はご家族が行ってください」と突っぱねられたんです。いやいや施設入所している以上、介護保険限度額は満額施設で支払っているので、介護タクシーなども頼めないものを？と聞き返したら、まさかの「介護保険上、施設からの通院は含まれていません」と言ってきました。いやいやそれはないでしょ？施設の場合、通院付き添いによる移送は、「利用者から別途交通費費用徴収が行うことができる」とあるくらいなのに。ただ施設からの送迎は必須ではなく、グレーゾーンではある部分はありますが、よくもまあぬけぬけと「介護保険」にはないといいのけたなと、
私が元介護員だということも知っていて、介護ができるから家族なら家族がやりなさい、施設から通院に人員を割くわけにはいかない。ということなんでしょう。
思うところ、考えるところはいろいろありましたが、それ以上突き返すことはできませんでした。やはり、私には父は「人質」だからです。
父との残り少ない時間だと思い、土日に対応してくれる歯医者に通院をしますが、どうしても腑に落ちないところはあります。昔より福祉施設は強硬な姿勢になったなと、家族が介護を受ける身になって強く感じています。
