- 1.~12/22 段階でのニュースまとめ
- 2.あすなろ福祉会とは
- 3.なぜこのように問題視されているか、旧優生保護法との関係ついて
- 4.世間一般のもつ知的障がい者への理解度
- 5.知的障がい者の子ども
- 6.命を守るということ
1.~12/22 段階でのニュースまとめ
障害者の結婚、不妊処置が条件 北海道・江差の福祉施設 共同通信 12/18
https://nordot.app/977111698151161856
https://nordot.app/977107905801551872
"知的障害があるカップルらが結婚や同棲を希望する場合、不妊手術や処置を条件化し、8組16人が応じていた"
障害者不妊処置、福祉施設「強制はない」 北海道が聞き取り開始 北海道新聞 12/19
https://news.yahoo.co.jp/articles/5fd955f1e2f1ec30cd0aaff5048e842e80b7a17f
"担当者は「入所するには、本人がホーム側と賃貸契約を結ぶ必要があり、(ホームで生まれて)親に監護権がある子どもとの契約は想定されていない。子どもの健全な育成のための機能も備わっていない」"
不妊処置、北海道が実態解明へ 理事長「産むなら支援できない」 共同通信 12/19
https://nordot.app/977456342614753280
当事者は泣き寝入り、関連の会話も「ご法度」 江差の障害者不妊処置 北海道新聞 12/19
https://news.yahoo.co.jp/articles/4739684c9afb2073ff00cd3bc9d48db185d95a82
"施設に暮らしていた夫婦は、北海道新聞の取材に「不妊処置を受けた人を5、6人知っている」と内情を明かした。"
"夫婦によると、不妊処置に関する会話は「ご法度で、施設内で当事者から『悔しい』という声は出ない」という。夫婦は「(不妊処置を受けた入居者は)泣き寝入りしている」と話す。"
「事実把握し対応を検討」加藤厚労相 北海道の障害者施設 不妊処置 朝日新聞 12/20
https://news.yahoo.co.jp/articles/36e1d6bb50379a1d32000d84b5406a570c59b469
"会津大短期大学部の市川和彦教授(障害者福祉論)は「『サービスが利用できなくなる』などの条件があれば、施設側の言い分を受け入れるしかなくなるのでは」と疑問視。子供を持つ選択肢を諦めさせるのではなく、生まれた場合の支援方法を検討する必要があったとし、「入居者に寄り添った対応とは言えない」と語った。"
"「入居者に子供を産ませないという選択をさせる施設は、他にもあると思う」"
不妊処置「提案しただけで選択は本人」法人理事長が主張…「行き過ぎ」批判も 読売 12/20
https://www.yomiuri.co.jp/national/20221220-OYT1T50039/
「江差町の社会福祉法人あすなろ福祉会」に係る北海道知事コメント 北海道 12/20
https://www.pref.hokkaido.lg.jp/ss/tkk/hodo/gcomment/r4/138154.html
厚労相「不妊条件なら不適切」 北海道江差町の障害者施設 共同通信 12/20
https://news.yahoo.co.jp/articles/e469c41ee712949b3db45205523580ce0f5abd4f
不妊強制の確認できず 福祉法人への調査継続 北海道 時事 12/20
https://news.yahoo.co.jp/articles/ba521a3ab7331d00d3c2bc880d26885b373c4776
"「結婚などの申し出があった入居者に対し、施設として子どもの養育の責任は負えないと説明している」との回答があったが、不妊処置の強制があったかは確認されなかった"
2.あすなろ福祉会とは
福祉業界にいる方はピンと来たと思うんです。さらにわかりやすく言えばあの「江差福祉会」・「あすなろパン」というと多くの方がわかる、北海道でも有名な社会福祉法人なんです。約10年以上前に災害備蓄用の缶詰パンを販売し、東北大震災後には日本全国で随分売り上げたとニュースにもなっていましたよね。パンを買うことで障がい者支援にもつながると、私も施設から何度か注文をしたことがあります。
また、詳しくは覚えていませんが、当時障がい者の賃金が高い作業所としても有名だったはずです。北海道は冬になると屋外での委託事業が減るのに、その冬でも屋内で作業ができ、安定した賃金を支払われる作業所としても有名だったんです。
冬に強いあすなろ福祉会が、まさかその冬にこのような問題が露呈したことに浅からぬ縁を感じます。
3.なぜこのように問題視されているか、旧優生保護法との関係ついて
できるだけこの問題について報道したTVニュースも観ました。そしてその多くの番組で旧優生保護法に関わった弁護士がコメントしていました。
旧優生保護法の強制不妊手術 日弁連、19日に全国一斉相談会:朝日新聞デジタル
つまり、世間一般的な国民の視点としては、あすなろ福祉会が行った行為は、旧優生保護法のような古い体質の元、劣悪な人権侵害を行ったのではないか、という見方をしているのだと思っています。
今回は多くは触れませんが、旧優生保護法(1948~1996)のもとで行われていた、はっきり言えば障がい者本人の意思確認もなしに「強制不妊手術」が合法だった、という法律の問題です。月経を迎えてもいない女性に強制不妊手術を行ったなど、とても30年前まであった法律とは思えない内容なんです。
それと同位ないし、それに近いことをあすなろ福祉会がしていたのではないかという疑念が、このように大きく問題視されているのだと思っています。
4.世間一般のもつ知的障がい者への理解度
この件で、随分お怒りのコメントをしている方を眼にしています。ですが、あえて伺いたいんですが、そのコメントしている方々の知的障がい者についての理解度はどれくらいおありなんでしょうか?
旧優生保護法時代と違う点として、今回は知的障がい者に限定されます。
そして、今回問題になっている障がい者は、グループホームに住んでいる方々であり、その方々がどれくらいの障がい度合いだとお思いでしょうか?まさか、日本各地にはまだ巨大な障がい者収容施設があり、そこの人たちより軽度の障がい者がグループホームを利用しているなどと時代錯誤な人はいないでしょうか?もう30年前から知的障がい者は地域での生活を根ざし、ほぼ施設よりもグループホームに住んでいる方のほうが多いんです。軽度の知的障がい者はグループホーム等に住まず、サポートを受けながらも独立して生活をしているので、グループホームに入っている方々はおおよそ中度以上の障がい者が利用しているんです。
そして中度以上となれば、その問題点として
・辻褄のあう返答・回答ができるのか
という大前提の元
・両者の相違ない結婚なのか
・妊娠はできても、子どもを育てるという行為はできるのか
・望んでいない妊娠の場合どうするのか
などの問題を抱えています。
となれば、サポートするあすなろ福祉会は、ただ短絡的に、半ば強制的に不妊手術に踏み切った話とは到底思えないんです。
また障がい者は依存症が強い傾向にあります。計画的な妊娠が可能なのかという点も問題に上げなくてはなりません。
それらの問題とどのように向き合うべきか、とれる手段は少なかったにしろ、不妊手術という手段を選んだというのが現状だと考えられます。
手段は限られていたんだろうとは思うのですが、厚労省がいうように十分な説明と理解を得たのかが重要なポイントになってくると思います。
5.知的障がい者の子ども
あすなろ福祉会の会見でも説明がありましたが、「生まれてくる子どもの支援ができない」という問題点です。
グループホームでサポートを受けているのだから、子育ても可能だと思う方が一定数いるように感じています。ですが、グループホームのサポートとは24時間常時受けられるサービスではありません。あくまでも就労や就労継続に対してのアドバイス、食事や金銭面などに限られています。子育てをついででできるような体制にはなっていないのです。
また、生まれてきた子どもたちは、障がい者の子どもなのだから障がい者なんだと安易に思っていないでしょうか?割合としては障がい児が生まれる可能性は高いにしろ、健常者が生まれる可能性も0ではありません。そして、生まれた時、今回ならおなかにいるときを含め、知的障がい者と認定は受けるようなことはありません。何を意味するかというと、乳児検診時点まで健常者なのです。そして、乳児検診で知的障がい者と必ず診断を受けるとは限らないことも、お子さんを育てた方ならお分かりになると思います。おおよそ3歳児検診までは個人の成長にばらつきもあるため、保健センターも「保留」にすることが多く、3歳以下の知的障がい児はそう多くないのも現状です。また健常な3歳だったとしても、後天的な知的障がいを受ける恐れも持っています。
生まれたときから障がい者としてのサポートがあると思っている方がいるのであれば大きな間違いです。
6.命を守るということ
以上から、生まれてきた子どもの命を守ることに重点を置いたとしても、かなり高度な支援・サポートを必要とする結婚、妊娠だということは説明できたと思います。
その上でこの問題の大きなポイントは、日本の支援するプログラムの少なさだと感じます。
障がい者の生活支援以外に、①相違ない結婚をするための支援、②継続的な結婚への支援、③子どもを何人産み、どうやって生活ができるかの計画性の支援、④生まれてきた子どもの支援 と多岐にわたるプログラムを作り、本人達が一つの支援団体で決断に踏み切らないことが今回のような問題の防止につながると思います。