ヌーソの皿の上

福祉とpc関係の記事です

福祉業界の自浄化作用 過程主義

相変わらず社会福祉法人などの福祉業界の不正受給問題が取り沙汰されていますね。

単純なミスであれば仕方がありませんが、どうも組織ぐるみだったり、あろうことか理事長が率先して・・・、などのニュースも目にします。

 

nu-so.hatenablog.com

 

nu-so.hatenablog.com

 

なぜ福祉業界は自浄作用が働かないのか考えてみます。

 

 

そもそも監査とかあるのでは?

 

一般的な職種と比べて、福祉という仕事との一番大きな差の一つに「監査」があります。

それでも在宅サービスや老健・有料老人ホーム等では、余程の問題を起こさない限り、ほぼ厳密な監査は行われません。ですが、あることにはあるんです。

 

ただ監査といっても、市町村で行われる監査、消防による監査、都道府県で行われる監査が存在します。こんなに監査があるのかとちょっと驚かれませんか?それでいて、お互いの監査で調査する項目が被ることがあるんです。そうなるとどうなると思いますか?

監査同士の干渉が起きるんです。つまり自分の組織の監査のほうが厳密であるという、ローカルルールが作り上げられ、ローカルルールの青天井が起きたりもしているんです。

 

この件については全国的にも問題視され平成29年ごろから、独自のローカルルールの是正が行われています。

 

https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000645974.pdf

 

 

また、逆のパターンも存在するわけです。監査自体が甘いという地域の問題だけでなく、「監査で指導されなかったら問題ない」と判断をする事業所・法人が出てくるわけです。これが一種の不祥事の温床であり、各々の事業所・法人の根拠になる法制度の理解不足にもつながってきます。福祉施設の職員たちは、対人援助のスペシャリストではありますが、法制度理解の授業や経験はあまりありません。ある意味不得手な項目だけに、監査という「お上のおっしゃるとおりやっている」という保障が欲しい場合も出てくるのです。これが、いつまでたっても法理解は進まなく、施設が本来持つべき法的根拠による浄化作用が育ちにくくなる、ということにつながります。

 

このような記事も書いていますので参考までに。

nu-so.hatenablog.com

 

 

虐待問題

 

監査や法理解の問題だけでなく、その対人援助そのものにも問題がある場合もあります。

老人施設での高齢者虐待、障がい者施設でのパワハラ、保育園での不適切保育などもニュースで目にすることは多くないでしょうか?

 

福祉施設は社会的弱者である人々のために存在している、まさに社会福祉を行う施設です。ということは利用する人たちは、必然的に社会的に弱い立場の人たちが集まるわけです。

 

どんなに高度な資格を取り、対人援助を長年培ったとしても、利用者への配慮が、利用者にとって、100%の効果が発揮できることはまずまれといっていいのです。

にもかかわらず、福祉施設の長年のキャリアは、その初心を忘れさせ、徐々に傲慢な態度を取らせているように思います。となれば、社会的弱者への虐待やパワハラなどの不適切な対応がなくなるわけはありません。

 

このように感じた理由は、自分の両親の身体状態悪化により、福祉サービスの利用をせざるを得ないことがあったからです。ツィッターでは、何度かつぶやいていますが、実に傲慢な事業所に対応されました。包括という、ある種地域の主観的機関だっただけに、事業所は変えられませんでした。それでいて両親が入院をしているという、ある意味人質を取られた状態では、その対応に注意することすらできませんでした。

 

今更私のブログ程度で書くほどのことではない、ごくごく基本のバイスティックの7原則も忘れてしまったのかと、本当は言って注意したいほど劣悪なケアマネさんでした。

 

対人援助時に傲慢な者たちが、わが身を振り返るでしょうか?傲慢さは自分への歪んだ肯定感を生むだけのものです。そのような状況では自浄作用は高くは望めません。

 

 

不適切保育なども書いているので、こちらの記事もどうぞ

 

nu-so.hatenablog.com

 

 

でもモラハラパワハラとは縁遠いのではないか・・・?と思ったら

 

では職員同士の関係、職場環境はどうでしょうか?福祉事業は女性の多い職業です。

男性より、チームの和を重んずる女性が多いのであれば・・・などとは思わないでしょうか?

 

先日、労災についてのニュース特集をしました。

https://nu-so.hatenablog.com/entry/2022/07/02/120000

 

実際はこの通りで、全職種の中でもワースト1位の精神障害決定数です。

しかも、利用者間によるものが多いのかと思えば、問題点は「上司とのトラブル」とあります。これは、福祉の職場の働く環境が良い状態だといえるでしょうか?

それどころか、上司とのトラブルが発生しやすい環境だと仮定して、例えば上司の問題行動を指摘できる環境が保てると思いますか?まずできませんよね?そんな環境で自浄作用を求めること自体あり得ないというわけです。

 



ではどうすればいいんですかね?

 

ここまで、福祉業界に自浄作用は望めないことをつらつらとまとめてきました。

 

でもどうしてこのような状態になったのでしょうか?

これには2つの問題があるように思うんです。

 

その一つが、福祉業界自体の未成熟 職務主義があるように思えるのです。

2000年の介護保険を皮切りに、福祉業界全体が一般企業の参入を促し、まず福祉としての受け皿を大きく求めてきました。日本全体の社会福祉の急拡大がこの20数年行われてきたことにより、法理解や対人援助能力・職場環境が他の産業に追いつかなかったとは言えないでしょうか?

また人手不足と言われる日本において、本来は適正な人材を福祉業界として雇用・育成していくべきだったのに、先に福祉の受け皿の「職務」が先行しました。これが福祉業界が玉石混交している状態を作り上げたのだと思います。

 

もう一つには、成果主義の反対、「過程主義」な職業だからではないでしょうか?

成果主義は、ある意味評価がしやすいですよね?とにかく結果を出した時点で評価するわけですから。でも福祉は、一人ひとりの人間への対応です。保育園の「卒園」というゴール・結果以外、高齢者福祉・障がい者福祉のゴールはほぼ利用者の「死」が結果です。

もちろんモニタリングという考え方もありますが、モニタリングですら「途中観察結果」だと私は思います。

要するに、福祉は結果が出しにくい、評価しにくい「過程」主義なのではないでしょうか?厳しく言えば、真のモニタリングが行えない業界だとすら思えるのです。

 

福祉業界の更なる成熟、職務主義からの脱却が、福祉業界の自浄作用を強めるものと私は考えます。