2022年春から、日本はコロナ後としての舵きりを大きく始めました。緊急事態宣言を発しないはもちろんのこと、外出制限を行わない、濃厚接触者を特定しないなど、感染者は増加してもその方向性は変えません。
保育の世界で言えば、コロナ禍であれば代替保育というのが日本全国で敷かれてきました。これは、通常利用している保育園で、クラスターや濃厚接触者が大量に保健所より指定された場合、保育園は数日間の休園を行いました。この間の保育サービスの受け皿として、区市町村が当該園以外の場所で保育サービスを用意したものをいいます。
そんな中、先日こんな質問を受けました。
「ひとり親世帯が増えてきた中で、そのひとり親がコロナ感染した時など、いつもの保育園で柔軟に対応してもらえるサービスはないのか」
という内容でした。
私がまず思いついたのが、病児保育なんです。
通常の保育園でも病児保育を利用できる園も存在しますが、コロナ禍で病児保育の需要が増えたとは報道されませんでしたよね?
今回は、その病児保育について説明します。
まず病児保育とは
病児保育は病児対応型・病後児対応型、体調不良児対応型、訪問型といった4つの事業に分かれています。
(1)病児対応型 児童が病気の「回復期に至らない場合」であり、かつ、当面の症状の 急変が認められない場合において、当該児童を病院・診療所、保育所等 に付設された専用スペース又は本事業のための専用施設で一時的に保育 する事業。
(2)病後児対応型 児童が病気の「回復期」であり、かつ、集団保育が困難な期間におい て、当該児童を病院・診療所、保育所等に付設された専用スペース又は 本事業のための専用施設で一時的に保育する事業。
(3)体調不良児対応型 児童が保育中に微熱を出すなど「体調不良」となった場合において、 安心かつ安全な体制を確保することで、保育所等における緊急的な対応 を図る事業及び保育所等に通所する児童に対して保健的な対応等を図る 事業。
(4)非施設型(訪問型) 児童が「回復期に至らない場合」又は、「回復期」であり、かつ、集 団保育が困難な期間において、当該児童の自宅において一時的に保育す る事業。
引用元:厚生労働省 「病児保育事業の実施について」の一部改正について 令 和 2 年 4 月 1 日
https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/law/kodomo3houan/pdf/r020401/byouji.pdf
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/09/dl/s0930-9e_0003.pdf
保育環境改善等事業 2020
https://www.mhlw.go.jp/jigyo_shiwake/dl/r01_jigyou02a_day1.pdf
厚生労働省 令和元年度子ども・子育て支援推進調査研究事業報告書
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000756526.pdf
令和2年3月
その事業実態は?
検索をかけて調べてみたところ、
事業所数 3,130箇所
延べ利用者数 1,008,712人
平成30年度時点
https://www.cao.go.jp/bunken-suishin/kaigi/doc/teianbukai107shiryou2_2.pdf
となっています。
この数字をみて、十分な事業所数なのか?需要と供給はどうなっているか?疑問に感じないでしょうか
?
でも病児保育事業の需要の実態数の正確なものは、ネットを調べる限り見当たらないんです。
さてなぜでしょう?
病児保育事業所は、病院と保育所(園)の中間地点的事業です。
職員配置も
“看護師等を1名以上配置し、預かる体調不良児の人数は、看護師等
1名に対して2名程度とすること”
https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/law/kodomo3houan/pdf/r020401/byouji.pdf
とあるんですが、医師が必ず常駐しなくてはならない(園医などに相談することはあります)、看護師が必ず常駐というわけでもないんです。つまり精度の高い医療を受ける場所ではないんです。
このような中間的な位置のため、需要数が明確にできないという原因もあると思います。
病児保育事業の問題点
需要数が正確にできない以外にも問題点はあります。
①事業の赤字幅が大きい
2017 年度・2018 年度時点の統計ですが、病児保育型もしくは病後児保育型のいずれかを実施している施設・事業所に限ってみると、事業収支は100 万円超の赤字を起こしています。
原因としては、補助金の収入が少ないという問題と人件費率が高いという問題が挙げられています。
事業としての非正規率が高いとされているのに、人件費率が高いというのは、それだけ補助金としての収入が少ないことへの裏付けになります。福祉事業の補助金のそのほとんどは、利用実績だけでなく、体制確保・維持も求められています。例えば10人病児を利用できる準備をするなら、保育士等も5人常時確保しないと補助金が出ないという仕組みなんです。つまり、常時最大利用分の職員人件費を必要とするわけなんです。
②利用児童数が日々変動する・キャンセルが多い
アンケート回答の中から抜粋すれば
・キャンセル料の徴収が難しい
・キャンセルをどう扱うか
・キャンセルを当日の朝までに必ず守って欲しいと言ってもキャンセルの連絡がない。
とあります。①で説明するように体制は常時最大利用分の職員人件費がかかっているのに、当日キャンセルなどが常時起きてしまえば、おのずと利用実績は低くなってしまいます。
2018年度でいえば、
”施設型においてはどの事業類型でも毎月定員を上回る申込者数があるものの、申込者数に対するキャンセル数の割合は 30%を超えていた。”
とあります。これでは需要数だけでなく供給数も正確には出せませんよね?
そしてコロナ
このような実態の中でも、コロナ後という時代において、この病児保育事業の需要は増えていくと思わないでしょうか?サル痘なども出てきた通り、これからは保育事業において、感染症とどのように向き合っていくべきかも重要になります。感染を封じるために利用ができない保育事業ばかりでは、地域経済にも影響するとなれば、如何に感染症に罹患している園児でも預ける・預けられる体制づくりが必要になります。
さらにひとり親世帯が増えてきた中、常時子どもを預けられる事業を目指すためには、まずこの病児保育事業のさらなる見直しをするべきではないでしょうか?