ヌーソの皿の上

福祉とpc関係の記事です

居酒屋けんざん(11) エンディングノート

「おや、元気ないね?」

 

「いやー、親戚が亡くなりましてね。まだ若かったんですよ。まさか死ぬとは思っていなくて、ショックですよ・・・ははは。」

 

 

「近しい人が鬼籍に入ると、人はいつか死ぬっていうことを実感するもんだよね。」

 

「つい、普段の生活をしていると『死』というものが遠く感じてしまっているんですね。エンディングノートくらい書いておいた方がいいのかなーなどと思いました。」

 

「あー、聞いたことあるよ。エンディングノート。」

 

「はりえさんは、エンディングノートと遺言書の違いはおわかりになりますか?」

 

「あ、違うのかい?全然違いなんてわからないよ?」

 

「簡単に言うと、法的効力があるのが『遺言書』。法的効力がないものが『エンディングノート』なんですよ。」

 

「遺言書は、遺産や相続分割方法などの指定ができるんです。だから“自筆証書遺言”と“公正証書遺言”の2種類があり、公正証書遺言の作成は数万円と高額なものもあるんですよ。」

 

「なんだいそれ?遺言書は自分が決めることなんじゃないのかい?」

 

「簡単に言えば、遺言書は法的効力があるので、自分で書いた“自筆証書遺言”の場合、遺言書開封の際は家庭裁判所で検認が必要になるってことです。“公正証書遺言”の場合、家庭裁判所で検認がいらない代わりに公証人に手数料が発生するから高額になる場合もあるんですね。」

 

「ああ、私にはそんな財産ないから心配ないね。」

 

「あ、それは違いますよ。相続トラブルって相続財産が5,000万円以下の家庭で頻発しているそうです。

だから、財産の額に関わらずお子さんの代でトラブルにならないように、遺言書はあったほうがいいんでしょうね。」

 

「うちの娘たちは仲がいいから、こんなおんぼろ居酒屋店舗なんて、二人で相談して相続してもらいたいんだけどね。そうならないものかね?」

 

「誰しもどの家庭でもそう考えがちなことですよ。でも火種になりかねないことですからね。」

「それとは別にエンディングノートは、葬儀や延命治療について書くんですよ。それに伴いご自身の財産状況も書いておき、どんな葬儀を開いてほしい、延命治療はどのように対応してほしいか書くんですよ。」

 

「延命治療?嫌だね、とっとと楽に死なせてもらえないものかね?」

 

「本人はそう思っても、その時家族はどのように対応していいか、ちゃんと話しておかないとわからないですよ。」

 

「すぐ死なせてください。」

 

「いやだから、それじゃわからないですって(汗)」

ちょっと延命治療について整理しますね。

 

1.重い病気になったときは、自分に病名・治療方針を教えてほしいか?

2.重い病気になったときに、家族に病名・治療方針を伝えたいか?

3.治療が望めない、余命宣告を受けるような医者からの告知は受けたいか?

4.死ぬ場所はどこがいいか。例:家、病院 他

5.介護が必要になり、自分で判断が出来なくなったらどこで生活がしたいか?

 例:家、病院、施設

6.延命治療を受ける上で第一に考えることは?

 例:口から食べる、話ができる、家で過ごせる、仕事が続けられるなど

7.6.に対して、痛みはどれくらい我慢ができるか。

 例:激しい痛み次第では、延命治療を受けたくないなど

8.ガン末期でも家で死にたい、救急車は呼ばないでほしい

 

など

 

「これらを整理しておく必要があるんですよ。厳密に言えばまだありますけどね?」

 

「あー考えたくないね。」

 

「でもこれらの指示がないと、家族もそれを対応する医療側も困るわけですよ。」

「じゃ、葬式のことはどう考えていますか?」

 

「おらは田舎者だからね、盛大にやる、人は呼べるだけ呼ぶ、みんなで悲しむっていうのが葬式だと思ってたね。女たちは座って落ち着くことが許されないくらいに忙しいのが葬式のイメージさ。」

 

「さすがに時代錯誤では?」

 

「そりゃ父ちゃんの時には知ったさ。ただ座ってていいなんてありがたいもんだったね。でも田舎での葬式は、今もあまり変わりがない印象だったけどね。」

 

「では自分の時はどのようなお葬式にしたいんです?」

 

「イメージでは家族葬だね。ひっそりしたいよ。」

 

「おや?盛大じゃなくていいんですか?みんなに悲しんでほしくはないので?」

 

「友達も呼んでほしくない。お金もかけないでほしいよ。お金もかかるもんね。人をたくさん呼び、みんなで悲しんでほしいっていうのがあわないんだよ。」

 

「そういや、ヌーソさんはどんな葬式にしてほしいんだい?」

 

「私もそうですよ。そんなたくさん人呼ばなくていいと思っています。でも人は生まれるときも自分で決められないように、死んだ後のことも自分でそんなに決められないと思っているんです。だから、誰かがやらなきゃならないというなら適当にやってくれればいいですね。」

「自分としては、墓も葬式もいらないですよ。」

 

「へー、お墓がいらないってどうするの?海にまいたり宇宙に飛ばすのかい?」

 

「ああ、全然そんなこといらないです。私は畑をやっているので、できれば粉々にして畑にまいてもらいたいですよ。肥料になりたいですね。どうせ何十年も経てば、私など誰だか忘れられるんですし。」

 

「ヌーソさんの骨でできた野菜はなんだか食べたくないね。それに土にまくっていうのは主流じゃないし叶わないんじゃないかい?」

 

「それまで長生きしますよ()