幼稚園・保育園には共済があります
新年度が始まります。
やっと幼稚園・保育園に入園が決まり、子育てが次のステップに進んだと実感されている方も多いのではないでしょうか。
表題にありますように、幼稚園・保育園にお子さんを預けている間、万が一のケガにあったときってどのようになるかご存じでしょうか?
先生たちが病院に連れて行ってくれ、あんに幼稚園・保育園がその金銭面の保証もしてくれるだろうと思われるのではないでしょうか?
幼稚園・保育園では通院に関しての費用については、災害共済という共済に加入します。この共済加入は幼稚園・保育園のみならず、保護者からも掛金の徴収をしているんです。
この災害共済を運営しているところを「独立行政法人日本スポーツ振興センター」といいます。
独立行政法人日本スポーツ振興センターとは
独立行政法人通則法及び独立行政法人日本スポーツ振興センター法上で定められ設立されている機関なんです。
目的として
「~学校の管理下における児童生徒等の災害に関する必要な給付その他スポーツ及び児童生徒等の健康の保持増進に関する調査研究並びに資料の収集及び提供等を行い、もって国民の心身の健全な発達に寄与すること」(原文まま)とあり、調査研究目的のために資料を収集するという側面があるということです。なので、一般的な保険会社さんのような機関ではなく、限りなく公的機関なのだと思ってください。
https://www.jpnsport.go.jp/corp/gaiyou/tabid/61/Default.aspx
そのためお子さんが小中高生になっても、スポーツ振興センターにはお世話になるという事なんですよ。
加入者数
加入状況というのが発表されており、近々のもの(令和2年)だと、小中高校の加入率は98%以上あるんですが、それに対して幼稚園・保育園などは下記のようになっています。
幼稚園 860,129人 (79.7%)
保育園 1,777,340人(80.7%)
認定こども園 638,248人 (84.1%)
と約8割くらいの方が加入されている共済なんですね。
https://www.jpnsport.go.jp/anzen/Portals/0/anzen/kyosai/pdf/R2kyuhu.pdf
厚労省から出されている「保育所等関連状況取りまとめ(令和3年4月1日)」からすると、
保育所等を利用する児童の数は274万人
保育所等利用定員は302万人
https://www.mhlw.go.jp/content/11922000/000821949.pdf
とされています。
これをスポーツ振興センターが対象とする、保育園+認定こども園の人数は合計240万人、これに1年での保育園数の増加が5万人分あったとしても、30万人くらいの差が発生していますよね?
これはなぜかというと、共済なので、実は強制的に加入する必要がないんです。例えば保育園と名乗らず、委託費収入を受けずに保護者の実費負担のみで運営している保育園・幼稚園も存在しており、あえて加入しない設置者もいるんです。
さて、それはなぜでしょうか?
共済掛金の額
共済掛金額は年払いで、いつも5月ごろまでに保護者の方から幼稚園・保育園では徴収をしています。
一人のお子さんに対して掛金の総額(年額)は350円(保育園)くらい。保護者の方にはおおよそ270円くらい請求されており、負担額は6割から9割と設置者が決めていいことになっています。
実際にけがなどにあったときはどのように支給(給付金額)されるの?
スポーツ振興センターに書かれている部分を抜粋すると
例:疾病の場合
(給付金の計算方法)
医療保険並の療養に要する費用の額の4/10(そのうち1/10の分は、療養に伴って要する費用として加算される分)
ただし、高額療養費の対象となる場合は、自己負担額(所得区分により限度額が異なる。)に、療養に要する費用の額の1/10を加算した額
となっています。ちょっと難しい表現なので、例えてみると、
例:保育園で、跳び箱の練習中に子どもが顔から転んでしまった。歯ぐきから血が出ているため歯医者に行った場合。
診断・治療費総額1,500円かかった
保険料3割負担だったので、保護者は450円支払ったとします
これに対してのスポーツ振興センターの支払額は、総額の4/10なので600円。
保護者には3割負担分の450円を戻し、保育園はケガに対する療養・事務手続きをしたので150円をもらう。
という仕組みなんです。
疑問点が多いですよね。そもそもけがをした時の保険は、保護者(扶養者)の保険を使うんです。
さらに、療養・事務手続き費用として保育園側が150円受ける事が出来たとしても、歯医者までのタクシー運賃にもならないというわけです。
それとは別に、市町村によっては子どもの医療費助成があり、医療費の自己負担がそもそもない場合もありえるんです。
そのため
これらの給付金額の問題から、幼稚園・保育園はスポーツ振興センターとは別に、総合賠償責任保険に入っていることがあります。
https://www.ms-ins.com/pdf/business/indemnity/fukushi.pdf
また、子どもが自らけがをした場合であれば、スポーツ振興センターからの支給でも保護者は理解してもらえるかもしれません。ですが、保育士側の見守り不足や園の責任を問われるような問題の時には、事態が拡大する恐れがあります。
できるだけ問題回避の観点から、スポーツ振興センターを使わず保険を請求する場合が多くなってきているのが、幼稚園・保育園の加入率が90%もない理由の一つなんです。
もちろん、保険とスポーツ振興センターの2重請求はできません。