「はりえさん。はりえさんはいくつまで働きたいんですか?生涯現役とか?」
「えー?働きたくないよ全然。強いていえば自由に体が動くまでだね。」
「最近のご高齢の方は70歳代も珍しくなくなってきましたよね。」
「本当さ、年金も65歳で満額で出なくなるんだろ?80歳くらいまで頑張るしかないかね?」
「自分という『人とはなかなか比較できない』ものでも、いくつくらいまで働ける、働けないかの指標ってあるんですよ。」
「へー、それはなんだい?」
「自分の親ですよ。親がいくつくらいまで体が動かせたかは、唯一の自分の将来を予測できるものですよ。それに合わせて年金や貯蓄を考えていくしかないんです。」
「貯蓄?お金かい?お金はそりゃあるに越したことないよね。」
「でも問題は体だけの話じゃないね。仕事があり続けるかどうかだって問題さ。」
「『仕事付き高齢者施設』というのが試験的に運用されていたのをご存じでしょうか?」
2017年ごろ、介護施設などで高齢者に仕事をしてもらい、社会参加を促すことで生涯現役社会を実現する。そんなコンセプトで経済産業省が提唱
https://xtech.nikkei.com/dm/atcl/feature/15/050200094/042300017/
第1は、自宅やサービス付き高齢者住宅で暮らし、デイサービスを利用している要支援2までの高齢者を対象にした場合である。比較的自立していることから、生涯学習などの講師や保育園での引率・見守り、施設での調理補助などの仕事を想定する。
第2は、サービス付き高齢者住宅やデイサービスを利用している要支援2~要介護2に認定された高齢者を対象にする。農作物の栽培や保育園行事の手伝い、施設での掃除などの仕事を行ってもらう。
第3は、デイサービスやサービス付き高齢者住宅、グループホーム、特別養護老人ホームなどを利用する要介護1~3に認定された人や認知症の高齢者を対象にする。洗濯物の整理や商品の箱詰め、ラベル貼りなどの仕事を想定する。
https://xtech.nikkei.com/dm/atcl/word/15/327920/021300041/?ST=health
「厚生労働省ではなく、経済産業省が打ち出したというのも注目する点ですね。高齢者の労働力は、定年などなく必要だと考えられているということですよね。」
「実際どんなことしたの?」
「記事を見る限りには、農業などの一次産業を行っている写真が掲載されていましたよ。」
「仕事は決められてしまうのかい?」
「試験運用ですし正確にはわかりません。ただ、身体能力・認知機能の状態に合わせて、仕事内容は段階的に決められていたようです。」
「よくわからないんだけど、お金をもらう為の場所なの?それとも施設に居続ける為に働くの?」
「とてもいい点に気づかれていますね。お金がないから入る施設なのか、仕事があるから入る施設なのかというところに迷う施設でもありますね。」
「一つの視点としては、記事の中にこんな文章があります。」
・農作業に関しては、野菜を販売することで売り上げが発生したため、1回参加するごとに500円の謝礼金を渡すことができた~
・「施設に入居することで費用がかさみ、経済的に困ってしまう高齢者もいる。年金に加えてあと5万円もらえると、ちょっと豊かな生活ができるのに」
・ゆくゆくは「5万円の謝礼金をお支払いできるようにすることを目指したい」
と出ているんです。
「読み込んだ上では、年金受給者に+月5万円の収入を目指す施設ということになるようです。つまり年金収入のない人は今回想定されていないようですね。」
「年金収入がない人といっても、直生活保護とも言えません。逆に多くの貯蓄をお持ちな方もいらっしゃるでしょうから、就労に対しての考え方に明確な線引きは難しいですよね。よって、お金がないから入る施設ではないということですよ。」
「となってくると、試験的とはいえ要介護度で仕事内容が区分けられていますが、それでもそこには仕事に対しての経験値(キャリア)の差も出てきますよね。」
「誰でもできることとはいいながらも、農業にだって相当な勉強もいるんでしょ?詳しくないけどさ。それこそ経験がモノをいうところもあるんじゃないの?経験値は大事だと思う。」
「そうなんですよね。でも経験値そのものがお金になるわけじゃないんですよ。経験値に基づいた行動が収入につながるんです。知識があるから土を耕さないで、ただ種をまけば作物ができるわけじゃないといったほうがわかりやすいですかね?」
「その経験値やキャリアを見える化し、一定のシステムにするのは相当難しいものであり、またそれを関係者が理解することも難しいものだと感じてしまいます。」
「仕事って生きがいの部分もあるよ。だからお金に関係なくその仕事に携わりたいと思う部分もあるよ。労働=賃金という対価 だけでは見えてこない仕事ってあるよね。その部分が掘り下げられるとみんなイキイキした老後になるんじゃないかい?」
「そういえば、はりえさんは老人ホームにはいるのはやめたといいましたけど、こういう仕事付き高齢者施設はどうです?」
「うーん、体を動かすのは嫌じゃないけど、知らない人とやるのはね・・。」
「ほら、人見知りだから。」
「また(笑)」
「まあ、私もここ(けんざん)がなくなるのは寂しいですし・・。」
「じゃあ、ヌーソさんのためにはこの店たためないね、カッカッカッ。」
「はりえさんは、生涯現役ですね。」